2023年度の中途採用計画人数は大幅増
日本経済新聞社がまとめた採用計画調査(最終集計)によると、2023年度中途採用計画人数は22年度実績と比べ24.2%増となり、増加率は過去最高となりました。
ホテル・旅行や鉄道・バスなどの伸びが大きく、新型コロナウイルスの感染状況の落ち着きに伴い、訪日客需要の回復など客数増に備え人材の確保を図ろうとしています。
その他には、IT技術系の中途採用計画数の伸び率は前年度に比べ3割超となりました。
デジタルトランスフォーメーション(DX)を加速させるため、幅広い業種で専門人材を確保する動きが計画数の増加の要因に挙げられています。
また、KDDI(9433)やNTTドコモなど高速通信規格「5G」関連に積極的に投資する企業もIT人材の採用を増やしています。
求人倍率は2倍以上で推移
人材サービス大手パーソルキャリアの転職支援サービス「doda(デューダ)」によると、求人倍率(全業種平均)が2022年8月以降、2倍以上で推移しています。
業種別では、特にコンサルティングや人材サービス、情報・通信が6~7倍台と高くなっています。
米国や北欧ではIT(情報技術)や先端医療など成長産業へ転職する人が増加しており、今後日本でも同様の動きが広がるとみられます。
さらに求人倍率の高い業種は賃金水準も高い傾向にあるとのことです。
5月14日付の日本経済新聞朝刊によると、中途採用の平均年収は2023年に約3%上昇したと報じています。2022年は1割以上年収が増えた人が過去最高の33%となり、10年で10ポイント高まりました。
特に伸び率が高いのが金融や情報。21年と比べ23年の伸び率は金融・保険が14%、情報・通信が10%となりました。
IT業界向けの人材紹介関連銘柄に注目
人材紹介関連銘柄の代表格として、リクルートHD(6098)やパソナグループ(2168)などがありますが、IT人材の需要増を受け、IT業界向けの人材紹介事業を手掛ける企業に注目しています。
いくつか企業を取り上げますと、キャリアデザインセンター(2410)では、ITエンジニアの人材紹介・派遣に加え、求人情報誌やサイトで転職情報の配信を行っています。
また、テクノプロ・ホールディングス(6028)は国内最大級の技術系人材サービスグループの持株会社となり、技術者の派遣・請負を手掛けています。
そしてギークス(7060)では、ITフリーランスを中心に企業と人材をマッチングするサービスを展開するほか、IT人材育成にも注力しています。
経済産業省が2030年にIT人材が最大で約79万人不足する見通しを示しており、人材紹介のみならず人材育成の重要度が増すことが予想されます。
そのため、人材派遣・紹介のみならず、人材育成に重点を置く企業への注目度が高まるとみています。
失業保険の給付緩和要件の見直し
経済活動の正常化を受け、転職者が増加基調となるなか、政府による失業給付の要件緩和に向けた動きが、人材派遣業界にとって追い風となりそうです。
政府は5月16日に改革指針を「新しい資本主義実現会議」に示しました。
今は自己都合で退職した場合、失業給付の開始まで原則2カ月以上かかります。
しかし今後、失業給付の申請時から遡って1年以内にリスキリングに取り組んでいたことを条件に、会社都合と同様の7日間に短縮することを検討しています。
政府が失業給付を見直す狙いとして、潜在的な働き手に新たなスキルを身につけてもらい、柔軟に会社を移ることで硬直的な労働市場を変えることを挙げています。成長産業への積極的な労働移動を促すことで、経済成長や社会の生産性向上を目指しています。
こうした動きから、人材業界は良好な事業環境が継続すると考えています。