「ヤクルトの株主優待、内容が変わって改悪されたって聞いたけど本当?」
「野球観戦の優待もあるみたいだけど、今はどうなってるの?」
乳酸菌飲料として、長年にわたり親しまれているヤクルト。そのヤクルト本社(証券コード:2267)は、個人投資家にとって魅力的な株主優待を実施している企業として知られています。
しかし、近年ではヤクルトの株主優待制度にはいくつかの変更があり「内容が改悪されたのではないか?」という声も聞かれます。
この記事ではヤクルトの現在の株主優待の内容や過去の変更点、そして改悪と捉えられている理由について詳しく解説します。
さらにヤクルト本社の業績・株価の動向も踏まえ、投資判断のポイントをお伝えするので、ぜひ参考にしてみてください。
ヤクルトの株主優待の内容
ヤクルトの株主優待は、3月末基準日の商品優待と9月末基準日の野球優待の2本立てになっているのが特徴です。
【3月末基準日:商品優待】
100株以上を保有する株主を対象に保有株式数と保有期間に応じて、以下の優待品が贈呈されます。「①乳製品」「②清涼飲料・乾麺など」は、どちらか1つを選択できます。
①乳製品など
②清涼飲料・乾麺など
【9月末基準日:野球優待】
100株以上を保有する株主を対象に、プロ野球チーム「東京ヤクルトスワローズ」のオフィシャルファンクラブへの無料入会券が提供されます。
・100~999株:ライト会員の入会権
・1,000株以上:レギュラー会員の入会権
ファンクラブに入会すると神宮球場での公式戦チケットの割引購入や先行購入、記念グッズのプレゼントなど、様々な特典が受けられます。
ヤクルトの株主優待は改悪された?
個人投資家のなかでヤクルトの株主優待について改悪という声が聞かれるのはなぜでしょうか。
それは、2020年9月に行われた「野球優待」の変更が関わっています。変更前は 神宮球場で開催される東京ヤクルトスワローズ公式戦を観戦できるポイントがもらえました。このポイントを使えば、無料で試合を観戦できます。
しかし、変更後はオフィシャルファンクラブの無料入会権に変更されました。この変更により無料で観戦できたものが、ファンクラブに入会してチケットを割引購入する形になりました。頻繁に球場に足を運んでいた株主にとっては実質的な負担が増えるため、この変更は改悪と受け止められましたのです。
一方で、2025年3月末から適用される「商品優待」の変更については、株主にとってメリットの大きい拡充と言える内容になっています。
従来は清涼飲料・乾めん等の詰め合わせ一択でしたが、乳製品等も選択できるようになり、個人の好みに合わせやすくなりました。
さらに5年以上継続保有の区分が設けられ、長期保有を続ける株主にはQUOカードが受け取れます。
もしあなたが今からヤクルト株の購入を検討するなら、この拡充された最新の優待内容を判断基準として投資するか判断しましょう。
ヤクルトの基本情報
ヤクルト本社は、1955年に設立された、乳酸菌飲料「ヤクルト」を主力とする食品・飲料メーカーです。
「予防医学」「健腸長寿」という創始者の理念に基づき、乳酸菌「シロタ株」の研究を基盤とした事業を展開しています。
事業セグメントは主に以下の通りです。
・飲料および食品製造販売事業:ヤクルト・ジョア・ミルミルといった乳製品が中心です。特に、ヤクルトレディによる独自の宅配システムは、国内外で強力な販売網を築いています。
・その他事業:乳酸菌研究で培った技術を活かした化粧品事業や医薬品事業、さらにはプロ野球チーム「東京ヤクルトスワローズ」の運営なども行っています。
海外展開に積極的なのが大きな特徴で、売上高の約半分を海外が占めるグローバル企業です。メキシコやブラジル、インドネシアといった国々で長年にわたり事業を展開し、近年ではアメリカ市場も大きく成長しています。
株価と業績推移
ヤクルトの直近5年間における株価と業績の推移は、以下のとおりです。
参照:Traging View
睡眠の質改善というテーマで社会現象にもなったヤクルト1000の大ヒットを追い風に、2022年から株価は大きく上昇。2023年には株式分割前の換算で5,000円台をつけました。
しかし、その熱狂的なブームが一巡すると株価は調整局面に入り、2024年にかけては下落基調が続きました。
この背景には、以下に挙げる複数の要素が関係していると考えられます。
①ヤクルト1000ブームのピークアウト感
②成長を牽引してきた中国事業の不振
③国内市場の停滞と競合商品の出現
特に、巨大市場である中国での景気減速や価格競争の激化による売上減少は、会社全体の利益を圧迫しました。
また、国内でもヤクルト1000以外の既存商品の販売が伸び悩む中、他社からも類似の機能性をうたった商品が次々と発売され、競争環境は厳しさを増しています。こうした業績の停滞感が株価の停滞となっている状況です
配当金
直近5年間における一株あたりの配当金推移は、以下のとおりです。
2021年3月期:26円(配当利回り0.93%)
2022年3月期:36円(配当利回り1.1%)
2023年3月期:45円(配当利回り0.93%)
2024年3月期:55円(配当利回り1.78%)
2025年3月期:64円(配当利回り2.24%)
配当金は、5期連続の増配となっており、株主への利益還元に非常に積極的な姿勢がうかがえます。
まとめ
ヤクルト本社の株主優待は、2020年の野球優待の変更が一部で改悪と受け止められたのは事実です。しかし、2025年から始まる商品優待の変更は、選択肢の増加や長期保有特典の追加など、株主にとってメリットの大きい拡充と言えるでしょう。
企業としては、国内の安定した事業基盤に加え、海外での成長ポテンシャルも高く、長期的に安定した業績が期待されます。
株価はヤクルト1000ブームの反動や中国事業の不振で調整局面にありますが、現在の株価水準は長期的な視点での投資を検討するタイミングかもしれません。
健康を応援する企業の株主になり、優待と配当の両方を楽しみながら、企業の成長を見守るという投資スタイルも、一つの選択肢として考えてみてはいかがでしょうか。