GPIFは2025年度も好調 注目すべきは「16%」より「4.67%」

年金積立金を管理・運用している「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)」が、2025年度の運用状況を公表しました。2025年度の収益率は16.47%、収益額は41兆円を超えました。


この数字を見ると、「投資ってこんなにもうかるものなの?」と思う人もいるかもしれません。一方で、長く投資を続けてきた人の中には、「好調な時期が続くと、その反動が少し心配」と感じる人もいるでしょう。


どちらの感じ方も間違いではありません。だからこそ注目したいのが、「16.47%」ではなく、「市場運用開始以来の年率4.67%」です。


2025年度運用状況は相変わらず好調


ではまず、年金積立金の2025年度の運用状況から見ていきましょう。


2025年度は、好調な金融市場の追い風を受け、年間の収益額が41兆3,995億円となりました。収益額のうち、利息や配当金などのインカムゲインは5兆5,203億円となっています。


収益率は年率16.47%で、年金積立金が市場運用を開始した2001年度以降、3番目に高い収益率となりました。


ですが、年率16%もの運用は、毎年続いているわけではありません。


【グラフ1】は、2001年度以降の年間収益率の推移です。2020年度以降だけでも、25.15%、5.42%、1.50%、22.67%、0.71%、16.47%と、マイナスにこそなっていないものの、わずか数年でもこれほど運用成績は変わります。これらをならすと4.67%となり、市場運用開始以来の年率平均は、この数年4%台を維持しています。



また、2025年度全体の収益率は16.47%でしたが、年度を通して右肩上がりだったわけではありません。2025年度について四半期ごとに見てみると、第1四半期から第3四半期までの収益率は5%台でしたが、第4四半期には0.19%まで低下しました。1年の中でも運用成績には波があります。


投資は、毎年大きく増えるものでも、毎年下がるものでもありません。上がる年もあれば下がる年もあり、その結果を20年以上積み重ねると、年率4%台の運用成果が得られています。


2025年度末の運用資産額は293兆6,437億円でした。毎年の好不調を繰り返しながら、2001年度からの累積収益は196兆9,306億円です。2025年度の収益額41兆円は、20年以上積み重ねてきた収益の5分の1を単年度で上げたという大きさになっています。


16.47%より長期の年率4.67%の方が重要


しかし実は、歴代3番目となった収益率16.47%よりも、「市場運用開始以来の収益率が年4.67%」の方が重要です。


毎年の収益率だけを見ると、好調・不調に目が向きがちです。しかし長期投資では、単年度よりも長期平均の方が重要です。経済に波があるならば、それに応じて投資の成果にも波があって当然です。そのために、リスクを抑える方法として「長期・積立・分散」が提唱されているのです。


現在、年金積立金の資産配分は各資産を4分の1ずつ均等に保有する方針です。カッコ内は、運用によって資産額が上下した場合の許容範囲です。


●国内債券 25%(±7%)

●外国債券 25%(±6%)

●国内株式 25%(±8%)

●外国株式 25%(±7%)


この方針に基づき、2025年3月末時点において4つの資産カテゴリがどのような残高になっていたかの配分と、各資産の運用状況が【グラフ2】です。



【グラフ2】で気になるのが「国内債券」の期間収益率がマイナス5.11%だったことです。大きな理由は、2025年度は国内金利が上昇し、債券価格が下落したためです。低金利時代に発行された低利率の債券は魅力が薄れ、債券市場で価格が下落します。


しかし、国内債券のマイナスをカバーしても余りあるほど、他の3資産が高い収益率となったことから、全体の収益率が16.47%になりました。国内債券は、比較的「安定資産」と呼ばれるものですが、積極運用の他の資産との分散効果が得られた結果となっています。


年金資産は、賃金の伸びに負けない運用が目標


最後にひとつ気にとめて頂きたいのが、GPIFが公表している「超過収益率 ▲0.18%」という数字です。


「この数字は何?」と思った方も多いのではないでしょうか。GPIFは利益額だけではなく、「市場平均(ベンチマーク)と比べてどうだったか」という視点でも自らを評価しています。


年金資産には、運用目標が与えられています。2025年度から2029年度までの目標は、「長期的に年金積立金の実質的な運用利回り(年金積立金の運用利回りから名目賃金上昇率を差し引いたもの)1.9%を最低限のリスクで確保すること」です。


少し難しい表現ですね。簡単にいえば、現役世代の賃金の伸びに負けない程度の運用成果を、できるだけリスクを抑えながら長く積み重ねることを目指しているという意味です。


では、この目標に向けた運用は順調だったのでしょうか。その参考になる指標の一つが、「ベンチマーク収益率に対する超過収益率」です。これは、市場平均(ベンチマーク)と比べて、運用成績がどの程度上回ったか、あるいは下回ったかを示しています。


2025年度の超過収益率は▲0.18%でした。市場平均をわずかに下回る結果でしたが、GPIFは市場平均を大きく上回る運用を目指しているわけではありません。長期的な目標の達成を目指しながら、市場平均に沿った安定的な運用を続けることを重視しています。


年金資産の運用は、短期的な利益を追いかけません。市場環境が良い年も悪い年も経て、長期間にわたって安定した収益を積み上げることを目指しています。ですから、16.47%という今年の数字よりも、市場運用開始以来の年率4.67%の方が、GPIFの運用を理解する上では重要なのです。 


資産形成を始めたばかりの方も、短期の運用成績だけに一喜一憂するのではなく、「長く続ける」というGPIFの姿勢から学べることは多いのではないでしょうか。



【出典】

年金積立金管理運用独立行政法人「2025年度の運用状況」

GPIFトップページ>管理・運用状況>2025年度の運用状況

ファイナンシャル・プランナー

石原 敬子

ライフプラン→マネープラン研究所 代表 ファイナンシャル・プランナー/CFP®認定者。1級ファイナンシャル・プランニング技能士。終活アドバイザー® 大学卒業後、証券会社に約13年勤務後、2003年にファイナンシャル・プランナーの個人事務所を開業。大学で専攻した心理学と開業後に学んだコーチングを駆使した対話が強み。個人相談、マネー座談会のコーディネイター、行動を起こさせるセミナーの講師、金融関連の執筆を行う。近著は「世界一わかりやすい 図解 金融用語」(秀和システム)。

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