「商船三井の株、3月にすごく上がったのに一気に落ちたのはなぜ?」
「配当利回りは高いけど、今から買っても大丈夫なの?」
商船三井(証券コード:9104)は、日本を代表する海運大手です。高い配当利回りで個人投資家に人気があり、2026年3月には7,200円台まで買われる場面もありました。
ところがそこから株価は下げ続け、7月には一時5,000円台前半まで沈んでいます。高値からおよそ3割の下落でした。
なぜここまで急落したのか、そして今後の見通しはどうなのか。最新の決算データをもとに、下落の理由と投資判断のポイントをわかりやすく解説します。
商船三井ってどんな会社?
商船三井は、船で世界中にモノを輸送する海運会社です。
鉄鉱石や石炭を運ぶドライバルク事業、LNGや原油を運ぶエネルギー事業、コンテナ船や自動車輸送を含む製品輸送事業、そして不動産やフェリーを手がけるウェルビーイングライフ事業という4つの柱で構成されており、海運会社としては国内最大級の規模です。
ここで押さえておきたいのが、コンテナ船事業の位置づけです。商船三井は日本郵船・川崎汽船とコンテナ船事業を統合してONEという会社を設立しています。
この会社は売上や費用を合算せず、純利益のうち自社の取り分だけを取り込む形をとっています。
つまりONEがどれだけ稼いでも減らしても、商船三井の売上高と営業利益は動かず、経常利益になって初めて表れます。この構造が、今回の株価急落を読み解く鍵になります。
三井商船の株価の動きを振り返る

参照:Trading View
直近1年の動きを追うと、2025年10月に4,400円前後の安値をつけたあと、2026年に入って急ピッチで上昇しました。
2月から3月にかけて上げ足を速め、3月末には一時7,270円前後の高値をつけています。
しかし、4月以降は下落に転じました。5月から6月にかけてじりじりと値を下げ、7月上旬には5,050円前後まで沈み、高値からの下落率はおよそ3割です。
その後は反発に転じ、7月31日の終値は5,894円まで戻しましたが、安値からは2割近い上昇でも3月の高値にはまだ大きな距離があります。
なぜ3月をピークに急落したのでしょうか。2026年4月30日に発表された決算を開くと、理由がはっきり見えてきます。
商船三井の株価が急落した3つの理由
【理由①】コンテナ船の利益が9割近く消えた
最大の理由は、コンテナ船事業の急激な落ち込みです。
2026年3月期の決算を見ると、売上高は1兆8,250億円と2.8%増えており、営業利益も1,270億円で15.8%の減少にとどまっています。ところが経常利益は1,758億円で、前年から58.1%も減りました。

画像引用元:株式会社商船三井 2026年3月期 決算短信・1P
営業利益の減少が15.8%なのに、経常利益だけが58.1%も減る要因は、営業外に入る持分法投資損益です。
持分法投資損益が2,624億円から417億円へと、2,207億円も減っていました。
中身をセグメント別に見ると原因はさらにはっきりし、コンテナ船事業の利益は前の年の2,176億円から267億円へと実に88%も減っていました。セグメント全体の減益額2,679億円のうち7割をコンテナ船だけで説明できる計算です。
コロナ禍の物流混乱で異常な高値をつけていたコンテナ運賃が正常化し、新造船の供給が重なって運賃が下落しました。
営業利益だけを見ていると15.8%減で済んだように映りますが、実際は経常利益に表れていたわけです。
【理由②】今期も2期連続の減益予想
2つ目は、今期の業績予想です。2027年3月期の見通しは、売上高こそ2兆400億円へ11.8%増える計画でした。
しかし、営業利益は1,050億円で17.3%の減益、経常利益は1,450億円で17.5%の減益、純利益は1,700億円で20.3%の減益とされています。
2期続けての大幅減益ですから、市場が慎重になるのは自然な流れです。コスト面の前提も厳しく、低硫黄の船舶燃料油は1トンあたり531ドルから655ドルへ124ドルの上昇を見込んでいます。
燃料費は海運会社にとって最大級のコストですから、コスト上昇がそのまま利益を圧迫します。
前提条件も特殊です。会社は2026年7月頃までペルシャ湾の航行が正常化せず、2027年3月末まで紅海を通れない状態が続くという想定で計画を立てています。
ホルムズ海峡が事実上封鎖された影響で、自動車輸送ではペルシャ湾向けの配船に支障が出ており、収益環境の悪化が見込まれています。
【理由③】配当が360円から200円へ大きく減った
3つ目は、配当の急減です。
商船三井の年間配当は2025年3月期が1株あたり360円でしたが、2026年3月期は200円と160円も減っています。
高い配当利回りを目当てに買っていた投資家にとって、大幅な減配は重い材料でした。
海運株は利益の振れ幅が大きく、利益連動させる配当方針だと大きく上下します。株価が高値から売られた背景には、この不安定さもありました。
三井商船の好材料:PBR0.7倍という水準と累進的な増配
ここまで厳しい材料が続きましたが、評価できる点もあります。
まず株価の水準です。執筆時点の5,894円で計算すると、PER(株価収益率=株価が1株あたり利益の何倍かを示す指標)は約11.9倍、1株あたり純資産8,365円に対するPBR(株価純資産倍率=会社の解散価値に対して株価が割安かどうかを示す指標)は約0.70倍になります。
PBRが1倍を下回るのは、会社を解散して資産を分けたときの価値より株価が安いという意味です。減益が続く前提を織り込んだ水準とはいえ、割安な部類に入ります。
次に配当です。2027年3月期の年間配当は205円の予想で、前の期から5円の増配となり、配当性向は32.3%から41.4%へ上がる計画です。
利益が減る年でも配当を増やす姿勢は、投資家にとっても好印象であり、現在の株価での配当利回りは約3.48%です。

商船三井の株価の今後の見通し
まず押さえておきたいのが、上期と下期の想定差です。
2027年3月期の第2四半期累計について、経常利益510億円という前年同期比55.5%減の厳しい数字を見込んでいます。
一方で通期では17.5%減にとどまる計画ですから、下期にかけての回復を予想しています。言い換えれば上期の決算は数字だけ見ると悪く映る可能性が高く、そこで下期回復のシナリオが維持されるかどうかが課題です。
そしてもう1つ、三井商船の今後を左右する大きな要素が中東情勢です。ホルムズ海峡の封鎖は、商船三井にとってプラスとマイナスの両面を持っています。
プラス面では、原油船がトレードパターンの混乱によって船腹の需給が見込まれ、市況は底堅く推移する見込みとされています。
一方でマイナス面では、自動車輸送がペルシャ湾向けの配船に影響を受けて収益環境が悪化し、ケミカル船も航路の制約と燃料費高騰によって上期を中心に下げられる可能性がある点です。
つまり封鎖が続けばタンカーの運賃は高止まりし、逆に正常化すれば船が余って運賃が下がる。どちらに転んでも一長一短という構造です。会社は2026年7月頃の正常化を前提に置いているため、実際とずれれば計画の修正もあり得ます。
投資判断の分かれ目は、この銘柄に何を求めるかです。
PBR0.7倍という水準と3%台の配当利回りを評価して長く持つなら選択肢になり得ます。しかし、海運業は市況で利益が大きく振れる業種であるため、安定した値動きを求める人には手が出しにくい面があります。
まとめ
商船三井の株価が高値から3割下げた背景には、コンテナ船事業の利益が2,176億円から267億円へ88%も減ったこと、今期も2期連続の減益予想であること、そして配当が360円から200円へ大きく減ったことの3つがありました。
一方で株価はPBR0.7倍まで下がり、減益を見込む年でも205円への増配が予定されています。
株価は7月の安値から2割近く戻したところです。上期は数字が悪く出る前提が置かれていること、そして会社が想定したホルムズ海峡の正常化時期がずれた場合の影響を、決算ごとに確認していきたい銘柄といえるでしょう。



