グロース市場、3度目の「宴」は続くか

東証グロース市場の売買代金が9月7日、5519億円に達し、2022年4月の市場再編後で過去最高を更新しました。旧マザーズ市場までさかのぼると、これまでの最高記録は2005年12月8日の4899億円でした。市場の構成が異なるため単純比較はできませんが、今回の商いの大きさが際立っていることは確かです。


当時はライブドアを象徴に、DeNAやさくらインターネットなど、インターネット関連企業や新規株式公開(IPO)銘柄に個人マネーが集中しました。実績よりも将来の成長物語が重視され、上場直後の銘柄が何倍にも買われることも珍しくありませんでした。一方、2006年のライブドア・ショックを境に投資家心理が急速に冷え込みました。


次の大きな盛り上がりが、2020年のコロナショック後です。マザーズ指数は3月の安値から5月下旬までに66%上昇しました。初期の主役は、新型コロナワクチンへの期待を集めたアンジェスなどのバイオ株でした。その後はBASEやメルカリ、freeeなど、電子商取引やデジタル化、クラウドサービスに関連する銘柄へ物色が広がります。


2020年5月には、売買代金の減少や個人投資家の売り越しから相場のピークを警戒する声も出ていました。しかし、その後も主役を交代させながら上昇は続き、マザーズの売買代金は同年9月に3735億円まで拡大しました。バイオ株が一服しても、コロナ禍による生活や働き方の変化という共通テーマの下で、次の銘柄に資金が移ったことが相場を長続きさせました。


今回の活況は、前述した2度の局面よりも銘柄への集中が強いのが特徴です。9月7日の売買代金5519億円のうち、テラドローンが1839億円、ティアフォーが1749億円を占めました。2銘柄だけで全体の65%です。両社を除けば約1930億円で、1~8月の1日平均である約1800億円と大きく変わりません。


テラドローンには防衛やドローン、ティアフォーには自動運転という分かりやすい成長物語があります。しかし、2020年のようにバイオ、電子商取引、クラウドなどへ資金が連鎖した相場と比べると、現時点では市場全体の底上げというより、人気2銘柄が売買代金を膨らませた色彩が濃いといえます。


さらに両銘柄は9月9日から信用取引の増し担保規制の対象となり、株価も軟調に推移しました。規制によって投資家が用意すべき資金が増えるため、短期売買の勢いは鈍りやすくなります。ただし、増し担保規制だけで相場の終了が決まるわけではありません。人気銘柄が一服した後、その資金が別のグロース銘柄へ移るかが重要です。


今後は市場全体の売買代金だけでなく、上位2銘柄を除いた売買代金、値上がり銘柄数、IPOやバイオ株などへの物色の広がりに注目です。信用買い残が増え続ける一方で株価が上がらなくなれば、需給悪化のサインになります。反対に、新たな主役が次々に登場すれば、2020年型の息の長い相場へ発展する余地があります。


新興市場の宴が終わるのは、最初の主役が下落したときとは限りません。次の主役が現れなくなったときこそ、本当のピークアウトを警戒すべきでしょう。

日本株情報部 アナリスト

斎藤 裕昭

経済誌、株式情報誌の記者を経て2019年に入社。 幅広い企業への取材経験をもとに、個別株を中心としたニュース配信を担当。

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