株式分割後、株価はどうなる?NTT、任天堂、トヨタの事例を解説

2024年以降、株式分割をする企業は増加傾向にあり2025年8月にはイオンやツルハホールディングスが株式分割を行う予定です。


株式分割の発表後や分割前に、株価が上昇するケースは少なくありません。

ただし、過去に株式分割を行った企業の株価の推移を見ると、長期的には業績や将来性、配当や優待といった株主還元により株価が上下します。


今回は、株式分割と株価、株式分割を行った3銘柄の株価の推移を見ていきましょう。


株式分割で、1株の価値が変わるわけではない

株式分割とは、1つの株式を企業が定めた数に分けることです。

株式分割を行い、例えば1株を3株に分割しても株価は3分の1になりますので株式の価値は変わりません。

ただし、株式分割を発表した後や分割前は株価が上昇するケースが多いです。

2025年6月12日に、21年ぶりに1株を3株に分割することを発表したイオンの株価の推移を見ていきましょう。


 

出典:TradingView(以下のチャートも同様)


株式分割の発表後の株価は上昇しています。


株式分割をすることで、最低投資金額が下がり流動性が高まるというメリットがあります。また、株価が下がることで売買がしやすくなり取引量も増えることが予測されます。

しかし、上で述べた通り株式の価値が変わるわけでは無いため、業績や将来性、配当や優待といった株主還元などさまざまな要素によって上下すると言えるでしょう。


 NTT、任天堂、トヨタの株式分割後の株価は?

株式分割後の株価はどう推移するのか、NTT、任天堂、トヨタの事例を見ていきましょう。



日本電信電話株式会社(NTT)

任天堂株式会社

トヨタ自動車株式会社



1.日本電信電話株式会社(NTT)

日本電信電話株式会社(NTT)は、投資対象の拡大を目的に2023年7月1日から1:25の株式分割を実施しました。

株式分割前後の株価の推移を見てみましょう。


 

※赤矢印は効力発生日(2023年7月1日)後初めての株式市場(2023年7月3日)


分割直後は株価が順調に上昇しましたが、2024年4月あたりから株価が下落しています。

原因は、2024年度の決算速報で営業利益が前年比-14.2%といった減益を発表したことと推測されます。

NTTに関しては、NTT法廃止も株価に影響を及ぼしている可能性があります。

2024年3月頃にはNTT法廃止の話題が浮上し、NTTの代表取締役社長島田明氏は法律の廃止に前向きな発言をしていましたがKDDIなど携帯電話大手は反発し廃止は見送りになりました。


改正NTT法と関連法が2025年5月21日の参院本会議で、与党などの賛成多数で可決・成立し2026年春の施行を予定しています。改正後の法律では、NTTの固定電話全国一律での提供義務を緩和する一方で、NTTが保有する通信設備の譲渡に国の認可を必要とする規定を盛り込みました。



2.任天堂株式会社

家庭用テレビゲーム機「Nintendo Switch」などを手がける任天堂株式会社は、2022年10月1日付で株式1:10株の割合で株式分割を実施しました。

2022年9~12月頃のチャートは以下の通りです。


 

※赤矢印は効力発生日(2022年10月1日)後初めての株式市場(2023年10月3日)


株式分割前後は株価が上昇したものの、その後下落しています。

2020年7月~2025年6月までの株価推移も見ていきましょう。

 

※赤矢印は効力発生日(2022年10月1日)後初めての株式市場(2023年10月3日)


任天堂が携わる初のアニメ映画「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」の世界的ヒットによる業績拡大や家庭用テレビゲーム機「Nintendo Switch」の後継機「Nintendo Switch2」の発売などにより2023年7月辺りから株価は上昇しています。


任天堂株式会社だけではありませんが、2024年の新NISA制度導入の影響も大きいと推測されます。



3.トヨタ自動車株式会社

トヨタ自動車は、2021年9月30日を基準日に1:5の株式分割を行いました。

2021年6月~12月の株価は以下の通りです。


 

※赤矢印は効力発生日(2021年10月1日)


株式分割後、株価は上昇しています。

以下は2020年7月~2025年6月のチャートです。

 

※赤矢印は効力発生日(2021年10月1日)


株式分割後は上昇したものの、その後軟調に推移します。2023年7月頃から、円安による収益の増加や販売台数の増加、そして2024年の新NISAなどをきっかけに株価は上昇します。

しかしトヨタ自動車を含む5社で自動車メーカーが試験で虚偽の記載をするなどの不祥事が起こり、業界全体で株価が下降しました。


3銘柄に共通することは、分割前後は株価が上がるもののその後は業界の動向や業績、制度改正により株価が上下しています。


※上記は「株式分割をした銘柄」の紹介であり、購入を推奨するものではありません。企業や財務の分析は筆者個人の見解に基づくものであり、筆者が所属する組織・団体の公式見解ではありません。


長期的な視点が重要

企業が株式分割を行うと、最低購入金額が少なくなりますので投資家にはチャンスと言えるでしょう。

しかし、長期で保有する場合はその後の業績が重要になります。IR情報をチェックし、企業の将来性や財務状況などを確認し投資を検討しることをおすすめします。


ファイナンシャル・プランナー/ライター

田中 あさみ

大学在学中に2級FP技能士の資格を取得。会社員を経て独立し、金融・投資・相続・法律などの記事を執筆している。 自身でも米国株やETF・投資信託等を運用中。

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