ツイッター潰しの“スレッズ”、鳴り物入りで登場もその成果は?

スレッズ、5日間で1億人突破しチャットGPTを超え最速


「新SNSアプリ“スレッズ”、5日間でユーザー1億人を超える!」―ソーシャルネットワーク大手で、インスタグラムとフェイスブックを運営するメタ・プラットフォームズは7月5日、アップルとアンドロイドのアプリストアで“スレッズ”の提供を開始しました。それからわずか5日後、前述したヘッドラインがニュースサイトを賑わせたものです。英BBCによれば、オープンAIが運営する人工知能(AI)アプリ“チャットGPT”が保持していた、利用者1億人到達の最短記録を更新したといいます。


華々しいデビューを飾ったスレッズは、当初からツイッター潰しの本丸として大いに注目されていました。そもそも、ツイッターの月間アクティブユーザー数が4.5億人に対し、インスタグラムは13.5億人と桁違いです。既にインスタグラムに登録している政治家やセレブリティも多く、潜在的にスレッズがツイッターを追い越す能力は高いように見えます。しかも、問題発言が多いイーロン・マスク氏がツイッターの最高経営責任者(CEO)を退いたとはいえ、実権を握っているのは周知の通り。筆者の周囲の米国人やオーストラリア人など、反マスク派はツイッターからスレッズへの移行を検討していると語っていました。


画像:ザッカーバーグvs マスクと言えば、SNSでの対決のほか、金網ファイトも噂されていますね

 

(出所:Olymp Trade/Twitter)


スレッズ vs ツイッター、SNSの天下分け目の戦いの明暗を分ける7つの違い


さて、気になるSNSの天下分け目の戦いの火蓋を切ったスレッズとツイッターの主な違いは、以下の7つです。


1.登録に必要な条件、匿名性


ツイッターはeメールアドレスさえあれば利用可能で、登録に使用するeメールアドレスさえ実名を使用しなければ、匿名性を担保できる。


スレッズはインスタグラムのアカウント保有者でなければ利用不可で、匿名性が担保されず


2.投稿内容の編集機能


ツイッターは、認証済みユーザー(以下、課金ユーザー)なら投稿内容の編集が可能であるほか、①広告数が半減、②規定の140文字以上、500文字以下のツイート、③テキストの書式を太字や斜体に変更OK、④ブックマークに追加したツイートの整理―などができる。しかし、非認証済みユーザー(以下、無料ユーザー)の場合は編集不可。


スレッズは投稿した内容への編集は、現時点で不可。


3.広告の表示


ツイッターには、課金ユーザーでも広告が含まれる。


スレッズは広告の表示なし、快適なニュース検索や交流が可能。


4.利用制限


ツイッターでは1日に閲覧可能な投稿数が制限され、7月2日時点で無料ユーザーは1日当たり1,000件、課金ユーザーでも6,000件。


スレッズはユーザー全員に対し、制限などを設けていない。


5.ダイレクトメッセージ(DM)機能


ツイッターはDM機能があるものの、1日に送信できるメッセージは500件に制限されている。


スレッズにDM機能はなし。


6.ハッシュタグ(#)機能


ツイッターはハッシュタグ機能があり、SNS投稿内に言葉やフレーズにハッシュタグ(#)をつけると、リンク=“タグ”付けされ、キーワード化される。ハッシュタグが付いた言葉やフレーズをクリックすると、同じ言葉が使用された投稿を検索することが可能になると共に、第3者から発見される可能性が高まる。


スレッズはハッシュタグ機能なし。ただ、メタ傘下のSNSであるインスタグラムやフェイスブックなどでは長年ハッシュタグを活用してきたため、近いうちにハッシュタグをサポートする可能性がありそうだ。


7.Webサイトでの閲覧・投稿


ツイッターはWebサイトでも閲覧・投稿が可能。ただし6月末頃より、ログインをしないと閲覧などの利用が不可となった。


スレッズは専用アプリのみで対応。Webサイトとしてthreads.netは存在するものの、利用者をアプリに誘導する目的で、ここで実際に利用できるわけではない。


匿名性でツイッターに軍配?グーグル・トレンドではスレッズが完敗


鳴り物入りで登場したスレッズ、SNSユーザーの間で最も疑問視されているのが1の匿名性です。香港の英字紙サウス・チャイナ・モーニング・ポスト紙は、香港の10代の間でスレッズは匿名性に欠け、インスタグラムの延長線上にあり無意味と感じられていると報じていました。何より、スレッズでの投稿は他のSNSにも配信されており、無駄だとの批判も聞かれます。特に香港では、人権問題の状況悪化が指摘されていることも意識されているのではないでしょうか。

その他、米国IT情報サイトのテッククランチも、ピューリタン(清教徒)を連想させる厳格なルールがツイッターに取って代わるSNSとしての価値を失わせると伝えていました。端的に言えば、スレッズは本音や下世話な投稿が不可能なだけに、ツイッターからユーザーを奪えないと一蹴したわけですよ。

世界で大きな話題になっているかというと、グーグル・トレンドをみると熱気は感じられません。スレッズがとデビューした7月5日から14日まで、0~100でみたトピックの検索数を通じた人気度をみると、スレッズがツイッターを上回ったのは7月6日のみで、後は全てツイッターに敗北しています。期間中の平均では、100が最高のうち、スレッズ38に対し、ツイッターは81でした。


画像:グーグル・トレンドでのスレッズ vs ツイッターのトピック人気度

 

(出所:グーグル・トレンド)


スレッズには、もう一つ重要な問題点が潜んでいます。日米など100カ国で利用できるものの、規制上の理由で欧州連合(EU)では使用不可なのですよ。スレッズがツイッター潰しとなるかは、現時点では不透明と言わざるを得ません。


ストリート・インサイツ

金融記者やシンクタンクのアナリストとしての経験を生かし、政治経済を軸に米国動向をウォッチ。NHKや日経CNBCなどの TV 番組に出演歴があるほか、複数のメディアでコラムを執筆中。

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