環境影響評価の手続きを短縮する方向
西村環境相は1日、洋上風力発電に関して、発電設備を整える企業の環境影響評価の手続きを短縮する方向性を示しました。
国内では青森や秋田をはじめ洋上風力の発電を設置する計画が進んでいますが、専門家から欧米諸国に比べて導入が遅れているとの指摘があります。
一般的に環境影響評価の手続きが数年単位の期間を要しており、その期間の長さが導入の遅れている一因となっている可能性があります。今後順調に手続きが短縮されれば、大きく4段階のうち2段階の手続きが不要となります。
政府としては企業の負担を軽減し、洋上風力発電の拡大につなげたいとの意向があるようです。
洋上風力発電は経済への波及効果が大きい
洋上風力発電は海面に設置するため場所が確保しやすいほか、1日中発電できます。
また1基当たりの関連部品が1万点以上となり、経済への波及効果が大きいことから、西村環境相は、「洋上風力発電は非常に大きな可能性を秘めている」と評価しています。
政府はエネルギー基本計画で、洋上風力発電を2030年までに1000万キロワット、2040年までに3000万キロワットから4500万キロワットの発電を目指す方針を示しています。
浮体式のコストダウンや技術の進歩が必要
洋上風力発電には、「着床式」と「浮体式」の2種類があります。
「着床式」は海底に土台を固定して発電を行う一方、「浮体式」は水深50メートル以上の土台を設置できない海域で発電を行います。
日本の沖合は水深が深いため、専門家によると「着床式」を設置できる場所は限られているとのことです。
浮体式は浮体に非常にコストがかかるため、発電量を増やすにはコストダウンや技術の進歩が必要との見方を示しています。
浮体式洋上発電に関しては、戸田建設<1860.T>が2016年3月、長崎県の沖合で国内初の浮体式洋上風力発電機を実用化したほか、富士ピー・エス<1848.T>が次世代浮体式洋上発電システムの実証研究を行っています。
SEP船やケーブルも重要な役割果たす
洋上風力発電を建設するには、建設に必要な資材などを運ぶSEP船が重要な役割を果たしています。
五洋建設(1893)や鹿島(1812)などの建設会社がSEP船の開発・製造を行っています。
特に五洋建設は海上土木に強みを有しており、港湾整備や基礎工事を手掛けていることから、洋上風力発電銘柄の代表格の1つとなります。
また海上で発電した電気を変電所まで送電するためのケーブルが必要となり、古河電工(5801)や住友電工(5802)が海底ケーブルを製造しています。
その他には、発電するために回転速度を上げる「増速機」が風力発電機には搭載されていますが、ベアリングが使用されています。
NTN(6472)やミネベアアツミ(6479)がベアリングに強みを有しており、「増速機」に関しては、ユニバンス(7254)が代表銘柄となります。
2021年度の電源構成は火力発電が7割超
政府は2030年度の電源構成の目標として、洋上風力など再生可能エネルギーの比率を36~38%と定めています。
しかし2021年度の電源構成は、火力発電が7割を超えたのに対し、再生エネルギーはわずか2割程度でした。
脱炭素社会を実現するためには、洋上風力発電の拡大は不可欠であり、環境影響評価の手続き短縮など政府による環境整備や支援、企業の取り組みに期待したいと思います。