SUMCOの株価が上がらない理由とは?業績や今後の見通しについても解説

SUMCOは、日本を代表する半導体の基板となるシリコンウェーハの製造・販売を手掛ける企業です。高品質でトップクラスの技術力を持ち、シリコンウェーハにおける世界シェアの30%を占めています。


しかし、株価に注目してみると直近5年間は伸び悩んでいる印象です。コロナ禍による業績不振から立ち直ったかに思えた2021年以降は、株価は1,500~2,500円付近を推移しており、なかなか上がる気配は見えません。


そこで本記事では、SUMCOの業績や株価が上がらない要因について解説していきます。


SUMCOの基本情報と株価推移

SUMCOは1999年、住友金属工業と三菱マテリアルの共同出資により設立された半導体シリコンウェーハの専業メーカーです。世界シェア約30%を持つ業界第2位の企業であり、最先端ロジック用エピタキシャルウェーハではトップクラスの技術力を持ちます。


主力製品は300mmと200mm以下のシリコンウェーハです。300mmシリコンウェーハは主に先端のデジタル製品や、パワー半導体などに使われており、200mmは、アナログ製品の半導体集積回路の材料として使用されています。


なお、2021年には佐賀県伊万里市での大規模工場増設(2015億円投資)しました。さらに2023年には三菱マテリアルから半導体用多結晶シリコン事業を承継するなど、積極的な事業拡大を進めています。特にパワー半導体向けの新型300mm基板の量産に注力しているのが特徴的です。


SUMCOの株価推移は、以下の画像を参考にしてみてください。


 

参照:Traging View


2024年8月に株価は急落し30%以上も下落しています。この原因として考えられるのが、2024年8月に発表された第2四半期決算で、純利益が74%も減少したことが影響しています。


SUMCOの株価が上がらない理由

SUMCOの株価が上がらない理由について、以下のとおりまとめました。

業績の低迷

直近5年間におけるSUMCOの業績は、以下のとおりです。


直近5年間において、コロナ禍の2020年には営業利益を大きく減らしていましたが、2021~2022年にかけて業績を回復。それにともない、2021年に最高値2954円を記録しましたが、その後は1,500~2,500円付近を推移していました。


大きくは営業利益の低下が主な要因であり、次の章以降で詳しく解説します。


シリコンウェーハ市況の低迷

2023年以降に世界的なインフレや金利上昇の影響により、個人消費が冷え込んだ結果、PC・スマートフォンの需要が大幅に減少しました。大手クラウド企業によるデータセンター投資の減少も重なり、高機能ウェーハの需要も伸び悩んでいます。


この状況下において半導体ウェーハ企業の各社は在庫調整を進めており、その期間が長期化しています。とくに300mmウェーハについては需要拡大を見込んで増産体制を整えていたため、消費減少局面で供給過剰に陥りました。


この結果、販売価格が低下し収益性は悪化したため、売上高に比べて営業利益が伸びない要因となっています。


競合他社との価格競争

業界は韓国のSK Siltronや台湾のGlobalWafersなど、技術力の高いアジアメーカーとの熾烈な競争状態です。


近年では各社の製品品質が向上してきたため、SUMCOの業界優位性が以前より低下し価格競争に巻き込まれています。


設備・研究投資の負担

SUMCOは高品質ウェーハの増産体制を整えるため、数百億円規模の最新鋭装置への投資をしてきております。


しかし、大規模投資は利益を圧迫し続ける側面もあり、需要低迷により設備稼働率が低下している状況だと固定費負担が重くのしかかります。近年では半導体ウェーハの供給に時間がかかっているため、投資回収期間は長期化しています。


同時に次世代製品開発のための研究費を捻出する必要もあり、投資負担が財務体質を圧迫しています。


市場シェア低下懸念

最大の懸念は中国市場での競争環境の変化です。中国政府は「中国製造2025」による政策を通じて、半導体産業への大規模な補助金投入と技術支援をしています。


中国の現地メーカーが急速に技術力を向上させ、2030年までに半導体の自給率を70%に高める目標を掲げています。


SUMCOは依然として高い技術力を持っているものの、中国との価格競争に巻き込まれると収益性は低下する恐れがあります。



SUMCOの株価が上がる可能性は?今後の戦略について予想してみる

SUMCOがここから数ヶ月で株価が上昇するのは難しいかもしれません。AI産業を中心としたデータセンター向けの高性能ウェーハの供給量は期待できますが、車載・産業への需要は弱く、今後も厳しい販売戦略を強いられる可能性があります。


しかしながら、長期的には半導体市場の成長にともない、シリコンウェーハの需要増加が期待できますので、業績さえ改善されれば株価の上昇は見込めます。


今後もSUMCOの業績を確認しながら、株価の推移を注視してみてはいかがでしょうか。


独立系ファイナンシャルプランナー

藤崎 竜也

「独立系ファイナンシャルプランナーとして執筆業を中心に活動中。2019年から教育資金や老後資金を蓄えるために投資を始める。実体験をもとに、専門用語をわかりやすく解説するのが得意。2級ファイナンシャル・プランニング技能士資格を取得し、現在は金融ジャンル(資産運用・投資・不動産・保険)をメインに執筆している。

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