生成AIは投資の世界でも活用が広がっており、海外のヘッジファンドでは数百のAIボットを活用して調査業務を行う新たな運用手法も登場しています。
個人投資家にとっても、生成AIは銘柄探しや決算資料などの読解、情報収集の効率化に役立つ存在です。一方で、誤った情報を生成する「ハルシネーション」の問題など、AIならではの注意点もあります。
今回は、ChatGPTやNotebookLMを実際に使い、銘柄選びや決算資料の分析を行ってみました。生成AIの得意なこと、苦手なこと、そして個人投資家が活用する際の注意点について、実体験を交えながらお伝えしていきます。
米ヘッジファンドがAIボットで調査業務を行うAI主導型運用商品を準備
米ヘッジファンド運用会社マグネター・キャピタルでは、人間のアナリストの代わりに数百のAIボットを活用して投資アイデアの探索、株式の分析と推奨、トレンド予測などを行う新たなAI主導型運用商品を準備しています。
今まで新しいファンドは、人間のアナリストがチームを組みボトムアップ方式で調査を掘り下げる方法が一般的でしたが、最近はヘッジファンド業界を中心にAI技術を活用した取り組みが積極的に展開されています。
最終的な売買判断は人間が行うものの、調査業務の大部分をAIが担う仕組みです。
情報収集・整理の相棒として優秀な生成AIだが・・・
AIは企業の決算資料やニュース、業界動向などを横断的に分析し、企業の優位性や成長性を整理することが得意です。
しかし、将来の株価を正確に予測できるわけではありません。投資に限ったことではありませんが、自分で考えずに生成AIに依存する行為は高いリスクが伴います。
近年の研究でも、AIによるポートフォリオは特定業種に偏りやすく、リスクが高まる可能性が指摘されています。
個人投資家にとっても、現段階でAIは「投資判断を代わりにしてくれる存在」ではなく、「膨大な情報を整理してくれるアシスタント」という位置づけと言えます。
AIは決算書の要点整理や候補銘柄の抽出に活用し、最終的な投資判断は投資家自身が行いましょう。

投資家の生成AI活用方法、実際にやってみた
実際に生成AI(ChatGPT、NotebookLM)を使って銘柄選びや決算資料の分析を行い、どのような結果が得られるのかを検証してみました。
銘柄選び
銘柄選びにあたっては、主な分析手法として「定量分析・定性分析」、「トップダウン・ボトムアップ分析」があります。

例えば「長期でコツコツ運用したい」という場合、生成AIにトップダウン方式(もしくはボトムアップ方式)で銘柄を選びたい旨と配当利回りなどの指標、自身の希望を書き、リストアップした企業に直近の決算資料などを読み込ませ定量分析を行い、銘柄を絞っていきます。
実際にChatGPTに「トップダウン方式で銘柄を選びたいから半導体で好調な企業の銘柄をピックアップして」と指示したところ、国内の主要な半導体企業が候補として挙げられました。
具体的な内容は掲載できませんが、相場を定期的にチェックしている人であれば「既に知っている」という企業が多いでしょう。
指標や決算などでさらに絞り込めそうですが、筆者は正直なところ「想像の域を出ない」と感じてしまいました。プロンプト(指示文・質問文)に問題があるかもしれません。
そして、最終的には財務指標や決算内容を確認しながら絞り込んでいく作業が欠かせないと感じます。
銘柄選びに関しては、投資サイトや証券会社のツールでもAIを活用したスクリーニングが可能です。気になる方は試してみましょう。
定量分析:決算資料などを分析させる
PDFやURLなど指定した情報ソースの分析には「NotebookLM」が有効なツールです。
著作権上の問題で詳細に触れられない部分もありますが、ここからは「NotebookLM」を決算資料の分析に使った体験談を書いていきます。
個人投資家に人気のある某企業の直近の決算会見資料、決算短信のURLを指定してみました。
URLを指定すると、最初に指定した決算会見資料の概要が出力されます。自動で下に質問が出てきますので、質問のうち1つをクリックしてみました。
質問の回答が出力されます。
出力された文字の横に数字が表示されますが、この数字にカーソルを合わせると根拠となる情報源(ソース)が表示されます。「ソースを表示」をクリックすると、指定したURLの中の該当箇所をチェックできます。
生成AIは、ハルシネーション(事実ではない情報)が問題視されていますが情報源を1クリックで真実かどうか確認(ファクトチェック)できるのは、大きな利点と言えるでしょう。
ただし、NotebookLMの回答だけを見ると、レギュラーメニューの価格改定を行ったようにも受け取れる表現がありました。実際にソースを確認すると、原材料費高騰などの対応として、期間限定の販促施策を実施しています。
AIの回答と原資料を比較した結果、解釈にズレが生じてしまいました。
決算資料などの読解にかかわらず、生成AIの活用では「ソースの確認」が重要なポイントとなります。

投資家の生成AI活用における注意点とは
生成AIは、決算書やニュースの要約、銘柄のスクリーニングなどに役立つ便利なツールです。しかし、誤った情報を事実のように提示する「ハルシネーション」を起こすこともありますので、回答をそのまま信じるのではなく、企業の決算資料や有価証券報告書などで自分の目で確認することが重要です。
2026年6月現在、AI技術は発展しているものの、投資判断を代行してくれる段階とは言えません。
最終的な判断は投資家自身が行う必要があります。生成AIは「儲かる銘柄を教えてくれる存在」ではなく、情報収集やアイデア出しを補助する存在と言えるでしょう。
また、生成AIは使い続けることで質問の精度が向上し、より有益な情報を引き出せるようになるという特徴があります。よって、生成AIを使いこなせる投資家とそうではない投資家との間で、情報収集力や分析力の差が拡大していく可能性があります。
今後、生成AIがどこまで進化するかは未知数ですが、AIを使いこなし、膨大な情報の中から価値ある情報を見極める力を身につけることが、個人投資家としても重要になるかもしれません。





