その投資判断、誰が決めた? ビギナーから育てる「投資哲学」

最近、「投資をしないと、世の中に取り残されるのではないか?」という声を耳にするようになりました。周囲の人が投資で利益を得たという話を聞き、焦りを感じる人もいるでしょう。そんなとき、SNSや身近な人から得た情報を、十分に確かめないまま投資判断に結びつけてしまうことはないでしょうか。


投資哲学とは、自分なりの判断の軸


投資の世界には、「これさえやれば絶対に正解」というものはありません。将来起こる出来事は完全に予測できないからです。不確実な未来に対して判断を下すのですから、自分なりの基準がないと、さまざまな情報に振り回されてしまいます。


例えば、SNSの「この株が上がる」という話に飛びついたり、よく理解しないまま他人の真似をしたり。保有株が急落したときには、どう判断すればよいか分からなくなるかもしれません。


一方、自分なりの判断基準があれば、株価が大きく動いたときにも、何を確認し、どう対応すれば良いかを考える手掛かりになります【表】。



こうした判断の土台になるのが「投資哲学」です。著名投資家の考え方などをイメージするかもしれませんが、投資のプロだけの考え方ではありません。一言でいえば「何を大切にして投資するか」という考え方です。例えば、「短期的な値動きに振り回されない」といった投資に対する姿勢です。


投資をするにあたっては、銘柄の選び方や売買のタイミングだけでなく、その判断の土台となる考え方も大切です。


投資哲学は人それぞれ。正解は一つではない


投資経験が長くないと、投資に対する考え方や判断力などは持てないのではないか、と思うかもしれません。しかし、投資を始める前から投資哲学につながる考え方を持っている人もいるでしょう。


例えば、

●損をすることが何より嫌だ

●少しリスクを取っても資産を増やしたい

●自分が応援したい企業に投資したい

●日々の株価を気にせず、安心して暮らしたい

●投資を通じて経済や企業について学びたい


これらは、まだ投資哲学と呼べるほど整理されていなくても、その土台になる考え方です。投資哲学は、特別な人だけのものではないのです。


何を重視するかは人によって異なり、投資目的、資産状況、年齢、経験などによっても変わります。 著名投資家の哲学も、あくまで一つの考え方です。


まずは、自分の投資哲学を言葉にしてみましょう。


「なぜ投資するのか」「どのようなリスクを受け入れられるか」「どのようなときに売るのか」「投資の結果として、目標額はいくらを目指すのか」「投資資金は、将来どうしたいのか」「投資を通じて、何を得たいのか」「いつまで投資をしたいのか」など、考える基準は人それぞれです。


最初は人の意見を参考にしても良いと思います。著名投資家の考え方を学んでも良いですし、専門家の助言を受けることも有益です。


ただし、「人の意見を参考にすること」と「人に判断を委ねること」は違います。


例えば、専門家から「この銘柄は今後成長が期待できます」と聞いたとき、「専門家が言うのだから買おう」と飛びつくのか、「なぜ成長が期待できるのだろう。自分はその見通しに納得できるだろうか」と考えるのか。


この違いは、経験を積み重ねるうえで大きいといえるでしょう。


投資哲学が役立つのは、迷ったとき


自分なりの投資哲学があると、迷ったときに役立ちます。


例えば、保有株が大幅に下落したとき。あるいは、周囲の人が大きく儲けていると聞いたとき。その場の感情や他人の行動に流されず、自分の判断基準に立ち返ることができます。


また、投資哲学がないと、個々の売買判断に一貫性を持たせにくくなります。「なぜ買ったのか」が説明できなければ、「なぜ持ち続けるのか」も判断しにくいものです。自分が何を根拠に投資しているのかを整理しておくことが大切です。


そもそも、投資哲学があるからといって、必ず利益が得られるわけではありません。


例えば、話題の株を気にしていながらも買わずにいて、その後、株価が2倍になったとします。「あのとき買っておけばよかった」と後悔するかもしれません。しかし、「自分が理解できない企業には投資しない」という哲学を持っていたなら、買わなかった判断にも理由があります。


反対に、十分に調べて納得して買った株が値下がりすることもあります。大切なのは、結果の良し悪しだけでなく、なぜその判断をしたかを振り返ることです。投資哲学は、そのためのモノサシにもなるのです。


ただし、注意点もあります。


投資哲学は一度決めたら変えてはいけないものではなく、経験とともに育っていくものです。自分の判断の軸を持つことと、自分の考えに固執することは違います。「自分の軸は持つ。しかし、新しい知識や経験を得たら、考え方を見直す」といった、しなやかな姿勢で投資を行うと良いでしょう。


投資哲学は「持つもの」であると同時に「育てるもの」です。焦って投資を始める必要はありません。考えたり、学んだりする時間も、資産形成の準備の一部です。自分なりの判断の軸を持ち、経験を通じて少しずつ磨いていきましょう。


ファイナンシャル・プランナー

石原 敬子

ライフプラン→マネープラン研究所 代表 ファイナンシャル・プランナー/CFP®認定者。1級ファイナンシャル・プランニング技能士。終活アドバイザー® 大学卒業後、証券会社に約13年勤務後、2003年にファイナンシャル・プランナーの個人事務所を開業。大学で専攻した心理学と開業後に学んだコーチングを駆使した対話が強み。個人相談、マネー座談会のコーディネイター、行動を起こさせるセミナーの講師、金融関連の執筆を行う。近著は「世界一わかりやすい 図解 金融用語」(秀和システム)。

石原 敬子の別の記事を読む

人気ランキング

人気ランキングを見る

連載

連載を見る

話題のタグ

公式SNSでも最新情報をお届けしております