他国へ高関税をふっかけては踵を返すようなトランプ米大統領の姿勢を「TACO」とやゆする言葉が広まっています。トランプ氏の前言撤回を前提としてマーケット関係者がトレードに臨むような様相となりつつありますが、少なからず上がる関税の悪影響が徐々に各国経済の圧力となってくるリスクには注意が必要でしょう。
「TACO」朝令暮改・朝令朝改やゆ
本コラムの第146回「EU 50%関税発動・延期」について述べた際にも触れたトランプ米大統領の高率な関税をふっかけては発動を延期する朝令暮改のような姿勢を指して、「TACO(タコ)」(Trump Always Chickens Outトランプはいつもおじけづく)とやゆする言葉が広まっています。
「EU 50%関税発動・延期」にとどまらず、それ以前のカナダ・メキシコや中国との関税交渉の際から「朝令暮改」あるいは「朝令朝改」のような対応を繰り返しているトランプ氏に対して、英フィナンシャル・タイムズ(FT)紙の米金融担当コメンテーターであるロバート・アームストロング氏が充てた造語です。
米現地5月23日(金曜日)早朝(日本時間20時30分過ぎ)、トランプ米大統領が「6月1日から欧州連合(EU)に50%の関税を課すことを提案する」とSNSに投稿。週明けには「EUへの50%関税発動、7月9日まで延期」と、早々に踵を返しています。
中国に対しても145%まで関税を積み上げましたが、30%まで引き下げています。これに対してトランプ大統領は超高率な関税で中国が経済危機に瀕しており、救済のために大幅に関税を引き下げた主張しています。
「TACO」トレード一手も、徐々に効いてくる関税の影響に注意
しかし実際のところは、高関税賦課でショックを受けた米株式市場の動向を考慮した措置といっていいでしょう。トランプ氏の支持率は関税ショックによる米株価の落ち込み(図表参照)にともない4月に40%台前半まで低下が進むさなか、投資家・ヘッジファンドマネージャーの経歴を持つマーケット通のベッセント財務長官がトランプ大統領に苦言を述べたとの話も伝わっています。
その後、株価の回復にともない5月から6月にかけて支持率はおおむね47-48%で推移しました。ただ、足もとでは株価は不安定なものの顕著に落ち込んでいませんが、トランプ大統領の支持率は38%に落ち込んでいます。
調査で経済対応に関する支持率は40%で、4月に支持率が落ち込んでいたときと同レベルですが、「TACO」とやゆされる「朝令暮改」「朝令朝改」は信頼を損う大きな要因となっているようです。
特にマーケット関係者は、はったりをかますようなトランプ氏の発言を鵜呑みせず「TACO」と小ばかにするように、他国へ突きつけた高関税などの政策を引っ込めることを想定してトレードに挑む様相となりつつあります。
ただ、関税政策に関しては大きな引き下げがあっても、過度に楽観してトレードに臨むべきではないでしょう。当初ふっかけたほどの高税率ではなくとも従来と比べれば「まったく上がらないということはないので、影響としてはネガティブな部分の方が上回りそう」(シンクタンク系エコノミスト)との見方があります。
「TACO」とやゆするなど、トランプ発言を軽くあしらうようなトレードを短期投機で仕掛けるのは一手かもしれません。しかし少なからず上がる関税がじわじわ各国の経済に悪影響を及ぼすリスクは念頭に置いて臨むべきでしょう。