マイクロソフト 時価総額2兆ドルを回復

先週は主要3指数がそろって下落 ナスダック総合は6週ぶりの大幅反落


先週の米国市場では、ダウ平均が0.2%安と2週続落し、S&P500が1.1%安と3週ぶりに反落。

ハイテク株主体のナスダック総合指数は2.4%安と昨年12月16日終了週以来の大幅安となり、6週ぶりの反落となりました。



パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長がインフレの鈍化が始まっているとの認識を再び表明し、早期の利上げの打ち止め期待が強まったことで上昇する場面もありましたが、ウォラーFRB理事など複数のFRB高官が利上げ継続の必要性を強調し、米10年債利回りが上昇したことがグロース株の重しとなりました。


時価総額上位のアルファベット(グーグルの持ち株会社)が、検索分野での競争激化が懸念されたことで大きく下落したこともナスダック総合指数の押し下げ要因となりました。



検索分野での競争激化懸念でアルファベットが大幅安


先週の米株市場では時価総額上位のアルファベットが週間で9.7%安と急落し、S&P500のコミュニケーション株が6.6%安となりました。


アルファベットは長期金利の上昇や景気後退(リセッション)による広告収入の減少懸念などで株価は昨年1年間で39.1%安と大幅に下落しましたが、2023年に入るとFRBによる利上げの早期打ち止めや年内の利下げ転換への期待などを背景に昨年に大きく下落したハイテク・グロース株に買い戻しが強まり、アルファベットの株価も年初から4週続伸し、2月2日には年初来で22%高まで急伸しました。


しかし、先週はインターネット検索分野で圧倒的なシェアを持つグーグル事業の競争激化懸念が強まったことで株価が急落し、年初来上昇率は7.2%に大きく縮小しました。

 


インターネット検索分野では、「グーグル」が長らく市場独占を続け、そのシェアは93%とみられています。一方、マイクロソフトの「Bing」のシェアはわずか3%とみられています。


しかし、マイクロソフトが人工知能(AI)を活用した検索サービスを発表したことで、検索分野での勢力図が大きく変化する可能性が出てきました。マイクロソフトは先週火曜日に、米新興OpenAIが公開した自然な文章を生成する人工知能(AI)「ChatGPT」を搭載したBINGを発表し、デモでもその優れた検索結果が示されました。


一方、アルファベットもマイクロソフトの発表の翌日に、AIを活用した検索サービスのオンライン・イベントを開催しましたが、質問に対して正しい回答が得られなかったことなどで同分野でのマイクロソフトの脅威が増したと受け止められました。


マイクロソフトの最高財務責任者(CFO)は、5000億ドルのオンライン広告市場のうち、検索サービス分野が約40%を占めており、そのシェアが1%増加するだけで、20億ドルの増収効果があると、将来の広告収入の増加に強い期待を示しました。


マイクロソフトは時価総額2兆ドルを回復


アルファベットを筆頭にハイテク株の株価が大きく下落する中、マイクロソフトの株価はアナリストが目標株価を引き上げたことなどで先週も1.8%高と5週続伸し、年初来では9.7%高となりました。


JPモルガンのアナリストは投資判断を「オーバーウエート」で据え置き、目標株価を265ドルから305ドルに引き上げました。みずほのアナリストも投資判断を「バイ」で据え置き、目標株価を280ドルから300ドルに引き上げました。


週明け13日の取引ではマイクロソフトが3.1%高と4営業日ぶりに反発しました。モルガン・スタンレーが、AIを活用した検索サービスを評価し、「オーバーウエート」とした投資判断を据え置いたことが好感されました。


マイクロソフトの時価総額は昨年8月以来の2兆ドルを回復しましたが、アルファベットの時価総額は1兆2100億ドルに減少し、マイクロソフトとの差が拡大しました。


国際金融情報部 アナリスト

羽土 美幸

富山県出身。国内証券で株式等の営業、仏系証券でポートフォリオ分析、転換社債、エクイティ・デリバティブの分析・開発・営業などを担当。 2014年からDZHフィナンシャルリサーチにおいて米国株式、金融市場レポート編集、海外ETF業務を担当。

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