「株式投資にはリスクがある」というのは、もはや多くの方にとって常識といえるでしょう。
とはいえ、本当に急激な株価下落に見舞われると、「新NISAにしたのは失敗だったのか」「投資はやめて売ってしまった方がよいのか」などと過剰な不安感を抱く人の声が聞こえてきます。
日本証券業協会が2025年4月中旬に行った「個人投資家の証券投資に関する意識調査」によると、相場急落時に投資額を変えなかった人は4割程度でした。投資行動を変えなかった人を含めると、全体の4分の3程度に上ります。
今後も相場の波乱がないとは言い切れません。日本証券業協会の調査結果から、個人投資家の意識を覗いてみましょう。
調査対象者は一般的な個人投資家
日本証券業協会では、毎年、「個人投資家の証券投資に関する意識調査」を行なっています。インターネットで日本全国の18歳以上の証券保有者5,000人を対象に、2025年4月中旬に実施しました。
年収や金融資産保有額の平均からは、特別に裕福な層に偏っていない、ごく一般的な個人投資家の姿が浮かび上がります。
年代別の年収の加重平均は、30代以下(875人)が463.3万円、40代(958人)が535.8万円、50代(902人)が538.9万円、60~64歳(549人)が449.4万円、65~69歳(434人) が387.1万円、70代以上(1,282人)が309.0万円となっています。
また、金融資産保有額の年代別の加重平均は、30代以下が821.4万円、40代が1,417.4万円、50代が1,720.2万円、60~64歳が2,169.9万円、65~69歳が2,344.3万円、70代以上が2,151.3万円です。
回答者全体での有価証券の保有状況は、株式が72.8%、投資信託が66.7%、公社債が12.2%です。保有額は、10万円未満から5,000万円以上まで極端な偏りがなく、さまざまな個人投資家からの回答が得られています。
相場急落時でも比較的冷静だった
こうした個人投資家が相場急落時にどのような投資行動を取ったのかは、非常に興味深いものでした。
記憶に新しい株価急落としては、2024年8月2日(金)と週明け8月5日(月)の2日間でしょう。日経平均株価が2営業日で6,667円値下がりし、「ブラックマンデー超えの下落」と言われました。特に8月5日は過去最大の下落幅を記録しました。
また、2025年4月には米国による関税措置等を受け、日経平均株価が2025年4月4日(金)の始値から急落し、週明け4月7日(月)には過去3番目の下落幅を記録しました。これらのタイミングで、個人投資家はどのような行動をとっていたでしょうか。
回答者全体では、2024年8月の相場急落時に「有価証券の投資額を変えなかった」という人は、43.4%で最も多く、「相場急落を踏まえた投資行動は取っていない」人が29.8%。この2つの回答を合わせると全体の73.2%で、多くの人が特に慌てた行動をしていないことがわかります。
2025年4月の相場急落時も同じような傾向で、「有価証券の投資額を変えなかった」という人が44.7%、「相場急落を踏まえた投資行動は取っていない」人が32.6%で、大きな行動変化を起こさなかった人は77.3%に上りました。
ただし、若い世代ほど積極的な傾向も
急落時の行動は、年代別にみると傾向の違いがありました【グラフ1】【グラフ2】。
相場急落時に、若い世代ほど投資額を増やした人が多く、年齢層が上がるほどに「相場急落を踏まえた投資行動は取っていない」という人の割合が増えています。一方、若年層の一部に、下落時に買い出動した人がいたことがわかります。「投資額を変えなかった」人は、どちらの急落時でも年代を問わず40%台です。
また、どの年代においても、2024年8月の急落時に比べて2025年4月の急落時に投資額を増やした人は減っています。順調に株価が上昇して日経平均株価が最高値を更新した時には「待ちに待った押し目」と思った投資家も、8か月後に再び急落を目の当たりにすると二の足を踏んだのかもしれません。
今後も、米国による関税政策や、各国の金融政策、地政学リスク等を考慮すると、相場の急落はあっても不思議ではないでしょう。そのような場面でも必要以上に慌てないよう、自分に合うのはどのような投資なのかを考えているとよいでしょう。日ごろの投資環境や状況、そして自分の気持ちに向き合いながら、自分なりの投資方針を確立してください。
【参考】
「個人投資家の証券投資に関する意識調査について」(日本証券業協会)