あの株はいまいくら?

第63回 越境ECプラットフォーム提供のジグザグ(340A) 株価下落も今期は様子見がよい?

「あの株はいまいくら?」では、話題になった銘柄の現状を確認します。今回はジグザグ(340A)みていきます。


同社は海外カスタマー向け購入支援サービス「WorldShopping」と、国内ECサイト向け越境EC支援サービス「WorldShoppingBIZ」からなる越境ECプラットフォームを提供しています。


「WorldShopping」は、海外対応していない国内ECサイトであっても同社が海外カスタマーから注文を受け付け、代わりに購入して海外配送まで提供します。

同社が間に入り多言語カスタマーサポートを提供するとともに、海外カスタマーの利便性に配慮した多様な決済手段を提供することで、海外カスタマーは安心・安全に海外対応できていないECサイトの商品を購入することが可能になるとしています。


「WorldShoppingBIZ」は、国内ECショップ向けに上記の「WorldShopping」の機能を設置可能とする越境EC対応サービスです。ECサイト側がサービス開始に必要となるのは、ECサイトに当社の発行するJavaScriptタグを1行追加するという工程のみ。データ連携やシステム改修は一切不要であり、導入後最短1日で世界228の国と地域への海外対応が可能になるとしています。


同社の上場については、業績が順調に拡大していることなどから、堅調な初値形成が予想されていました。では、ジグザグの上場からの株価の動きをみていきます。



ジグザグの株価推移(上場から2025年7月18日まで)

2025年3月31日に東証グロースに上場した同社の初値は2030円と公開価格1500円を大きく上回りました。初値形成後も堅調な展開となり、2199円まで上値を伸ばしましたが、その後はやや売りに押され上場初日の終値は2080円となりました。


上場2日目からは一転して軟調な展開。あっさりと2000円の大台を下回ると、ずるずると5日続落となり、4月7日の終値は1313円と公開価格1500円を下回りました。なお、同日は安値引けとなっており、この1313円が現時点(2025年7月16日)の上場来安値となっています。


ただ、大きく下げたことで、割安感が出てきたこともあり、ここから切り返しの動きになりました。4月8日の終値は1610円となり、あっさり公開価格1500円を上回る水準を回復。堅調な株価推移が続くなかで、上場後初の決算発表を迎えます。


同社は2025年4月14日に25.5期3Q累計(6-2月)の決算を発表し、営業利益は2億6600万円となりました。25.5期通期の営業利益予想2億8500万円に対する進ちょくは93.3%となり、通期の上振れも期待できる好調な着地となりました。


決算発表を受けて翌15日に株価は売りが優勢となりました。これは進ちょくが良いにもかかわらず通期業績の修正がなかったことや、決算期待で株価が上場していたことが要因と考えられます。

ただ、一時的に売られたものの、決算の内容が良かったことからその後の株価は上昇トレンドとなります。5月半ばには2000円の大台を回復。6月は2000円台前半でのもみ合いが続きましたが、7月に入り一段高となり、7月2日に2793円まで上昇しました。なお、この2793円が現時点(2025年7月16日)の上場来高値となっています。


その後の株価は上場来高値からはやや水準を切り下げましたが2000円台半ばという高値圏で、25.5期通期の決算発表を迎えました。


同社は2025年7月14日に25.5期通期の決算を発表。営業利益は3億2200万円(前期比45.9%増)となり、会社計画2億8500万円を上回る着地となりました。なお、26.5期の営業利益予想は3億2800万円(前期比1.8%増)と小幅な増益にとどまる見通しとしています。これは、事業規模の拡大に伴う人員に対する投資およびプロダクト開発に対する投資を行うことを想定したとのことです。


この決算を受けて翌15日の株価はストップ安。26.5期の利益の伸びが物足りないと受け止められたことが要因と考えられます。その後も売りが続き7月18日の終値は1697円となり、公開価格1500円が視野に入る水準まで下落しています。



【ジグザグの日足チャート(上場から2025年7月18日まで)】



今後について

株価は高値から大きく下落していますが、今期の小幅増益見通しにより安定した利益成長が続くとの期待がはく落したことや、バランスをとりながら投資を行うとは思うものの四半期で減益となる可能性があることには注意が必要です。


同社株の購入ですが、公開価格を下回る局面が来るようであれば、拾っておくのもよいと思います。ただ、基本的には今期は様子見とし、来期以降に人材や開発の投資の成果が出始めることを確認してからがよいと考えます。


この連載の一覧
第63回 越境ECプラットフォーム提供のジグザグ(340A) 株価下落も今期は様子見がよい?
第62回 ブティック型フィットネススタジオの運営のLIFE CREATE(352A) 上期は出店コスト増もそこにチャンスあり?
第61回 企業向け社会人教育事業を展開するリスキル(291A) 「biz研修」の成長に注目
第60回 不正アクセス検知サービス提供のカウリス(153A) 25.12期は減益見込む 期待先行に注意
第59回 2025年2月IPOの技術承継機構(319A) 1Qは減益着地も株価は上昇
第58回 2025年2月IPOのフライヤー(323A) 株価は上場来安値から切り返し
第57回 2025年2月IPOのブッキングリゾート(324A) 利益成長による株価上昇に期待
第56回 水に関する建設コンサルの日水コン(261A) 下水道などインフラ老朽化で注目度高まる
第55回 リテール販促における総合支援事業の「MIC(300A)」  決算発表受け株価はストップ高
第54回 料理レシピ動画サービス「クラシル」のdely(299A)  好決算受け株価は上場来高値更新
第53回 半導体製造装置部品の販売・修理の「TMH(280A)」 利益率が注目ポイント
第52回 「横浜家系ラーメン壱角家」のガーデン(274A) M&A再開に期待
第51回 インターネットによる教育サービス提供の学びエイド(184A) エドテック関連として成長期待はあるものの
第50回 スキンケア商品・美容家電などの企画・開発・販売の「Aiロボ」 業績堅調も上場来安値更新
第49回 物流の安全に関するコンサルティングの「アスア」 決算発表後の上昇で流れ変わるか?
第48回 「らぁ麺はやし田」など運営の「INGS」 期待はく落で下落はチャンス?
第47回 ドローンベンチャーの「ブルーイノベーション」 来期の黒字転換期待が高まれば・・・
第46回 IoTプラットフォーム「SORACOM」展開の「ソラコム」 26.3期以降に成長を加速できるかが注目点
第45回 若者向けアパレルブランド展開の「yutori」 株価推移に特徴あり
第44回 スキマバイトサービス運営の「タイミー」 初値超えで視界良好か
第43回 スペースデブリ除去の「アストロスケール」 株価は右肩下がり続くが
第42回 製造業界向けAIベンチャーの「VRAIN Solution」 自動化・DX化ニーズの取り込みに期待
第41回 ECプラットフォーム運営の「BASE」  株価は高値から大幅下落も通期黒字化は目前?
第40回 ラーメンチェーン展開の「魁力屋」 成長期待はあるものの
第39回 軽量化金属部品の製造加工の「STG」 地味な業態だがきらりと光る会社
第38回 勤怠管理システムの「ヒューマンテクノロジーズ」 株価は上場来安値圏で公開価格も下回るが
第37回 ポケットマルシェ運営の「雨風太陽」 赤字縮小も株価は下落傾向
第36回 自転車専門店の「ダイワサイクル」 決算受け株価は水準訂正 営業利益10億円も近い?
第35回 AI関連として注目集まる「ABEJA」 足もと株価は上場来高値の半値水準
第34回インフラ分野特化のAIベンチャー「グリッド」  初値天井も株価は逆襲局面
第33回 サーモンの養殖、水産品の加工・販売の「オカムラ食品」 上場日の高値を12月に更新
第32回 名刺管理サービスの「Sansan」 大きな流れの変化のタイミングは近い?
第31回 オーダーメード型AI開発の「ラボロAI」 24.9期は組織の土台づくり優先へ
第30回 航空機エンジン部品の製造・販売の「エアロエッジ」 キラリと光る下請け製造業
第29回 メタバースプラットフォーム運営の「monoAI」 とうとう公開価格割れ
第28回 月面開発事業の「ispace」 資金調達懸念も夢は大きい
第27回 キャッシュレス決済サービスの「TMN」 株価はついに公開価格割れ 底打ちはまだ?
第26回 単結晶ダイヤモンドの「EDP」 1Q赤字転落も状況は改善
第25回 AI技術活用したサービス開発の「HEROZ」 株価10分の1からの逆襲局面
第24回「不眠治療用アプリのサスメド 不眠大国ニッポンの救世主?」
第23回「ビジネスコーチ リスキリングが追い風」
第22回「CtoCメディアプラットフォーム運営のnote 黒字化はまだまだ先?」
第21回「クラウド型ソフト“ヤプリ”を提供するヤプリ 初の四半期黒字化達成でトレンド転換か」
第20回「月額制ファッションレンタルサービスのエアークローゼット リオープン関連株の出遅れ?」
第19回「音楽著作権管理のネクストーン 過度な期待のはく落はチャンス?」
第18回「マイクロ波技術ベンチャーのマイクロ波化学 夢の技術も業績が」
第17回「ライブ配信プラットフォーム「ツイキャス」の運営のモイ 急騰でトレンド転換?」
第16回「完全栄養食の開発・販売のベースフード 利益率改善で黒字化なるか」
第15回「航空会社国内3位のスカイマーク 経済再開で需要回復だが懸念も」
第14回「クラウドインテグレーター大手の日本ビジネスシステムズ ChatGPTで再注目?」
第13回「ヘルスケア機器の開発・販売のPHCHD V字回復見通しだが・・・」
第12回「農工大発の創薬型バイオベンチャーのティムス 臨床試験開始再評価の発表で株価急落」
第11回「アルゴリズム開発のパークシャテクノロジー 来期は大幅増益なるか」
第10回「ヘアカット専門店「QBハウス」のQBネットHD」
第9回「にじさんじ運営のエニーカラー ホロライブのカバー上場で需給はさらに悪化?」
第8回「ロボアドのウェルスナビ 預かり資産の増加ペース鈍化?」
第7回「高級家電のバルミューダ 上場来安値更新も?」
【あの株はいまいくら?】第6回「SIXPADのMTG インバウンド消滅響くも反撃に期待」
【あの株はいまいくら?】第5回「クラファンのマクアケ 2年続く下落トレンド 底入れ間近?」
【あの株はいまいくら?】第4回「ユーチューバー事務所のUUUM 株価10分の1からの再出発?」
第3回 ペッパーフードサービス(3053) 直近株価は急落 今後の株価復活はあるか?
【あの株はいまいくら?】第2回「フリマアプリのメルカリ 株価は底値圏のようだが・・・」
【あの株はいまいくら?】第1回「パズドラのガンホー」

日本株情報部長

河賀 宏明

証券会社、事業会社におけるIR担当・経営情報担当、FPや証券アナリスト講師などを経て2016年に入社。 金融全般に精通。証券アナリスト資格保有。 「トレーダーズ・ウェブ」向けなどに、個別株を中心としたニュース配信を担当。 メディア掲載&出演歴 株主手帳、日経CNBC「朝エクスプレス」、日経マネー

河賀 宏明の別の記事を読む

人気ランキング

人気ランキングを見る

連載

連載を見る

話題のタグ

公式SNSでも最新情報をお届けしております