FX 誰にでもわかるチャート教室

第156回 2025年最新のユーロドル見通し:長期下落トレンドの転換点か?

今回の外国為替見通しでは、ユーロドル相場(EUR/USD)に焦点を当てて解説します。欧州連合(EU)と米国の間で貿易協定が合意に至ったことで、世界的な貿易紛争は回避されました。テクニカル分析の観点からも、ユーロドルの長期的な下落トレンドが転換する可能性が高まっており、今後の動向が注目されます。ただし、直近では調整リスクにも留意が必要です。


2025年現在のユーロドル相場の現状:年初の安値から買い戻し優勢


ユーロドルは2024年10月以降下げ基調が続いていましたが、2025年1月13日の1.0178ドルを安値として売りが一服しました。2月初旬には再び下値を探る動きが見られたものの、1月安値の手前で下げ渋り、買い戻しへと転換。

今年の4月以降は買いの勢いがさらに強まり、7月1日には一時1.1829ドルまで上昇する場面も見られました。この動向は、ユーロドルが短期的に上昇トレンドにあることを示唆しています。


今後のユーロドル相場の焦点:米欧間の貿易協定成立と金融政策への注目

今後のユーロドル相場を占う上で注目されていた欧米間の関税交渉は、7月27日に合意が成立しました。トランプ米大統領は7月12日にEUからの輸入品に対して、4月に宣言した相互関税率(20%)を上回る一律30%の関税を課す方針を示していましたが、最終的には15%の関税率となりました。

これにより、世界最大の貿易規模を誇る欧米間の貿易戦争はひとまず回避。今後は正式決定となった関税(8月1日から)が欧米経済にどのように波及していくかを見極めるフェーズに入ったと考えてよいでしょう。この貿易協定は、ユーロドルの為替レートに安定をもたらす可能性があります。

 

これに伴い、今後のユーロドル相場の注目材料は、欧米両国の金融政策へと移行していく見込み。欧米金融政策の方向性の違いがユーロドルに与える影響を注視する必要があります。欧州中央銀行(ECB)は2024年6月からの緩和サイクルで政策金利を4.50%から2.15%まで引き下げてきましたが、市場では現状の水準でECBの利下げは打ち止めとなる可能性が出てきたとの声も聞かれます。

 

一方、米連邦準備理事会(FRB)は金融緩和方向ながらも、足もとでは利下げを急がない慎重姿勢を維持しています。この方針に対してトランプ米大統領は執拗に利下げを要求しており、パウエルFRB議長が今後どのような姿勢を示すのか、FRB内での早期利下げ支持派が拡大するかなどが注目を集めるでしょう。これらの金融政策の動向が、ユーロドル予測の重要な鍵となります。


ユーロドルの月足分析:長期下落トレンド転換への足掛かり

ユーロドルの月足チャートを見ると、前回の解説(4月30日)からの経過で、5月中旬にかけて1.1065ドルまで調整売りに押される場面がありました。



その際には、理想的な調整目処であった2023年7月高値(1.1276ドル、チャート上の黄色実線)を下抜けたものの、次の目処であった2008年からの下降トレンドライン(チャート上の青色実線)がサポートとして機能したことが確認できました。これにより、ユーロドルの相場反転への足掛かりはできたと考えてよさそうです。


ただし、2008年からの長期に渡る下落トレンドが完全に転換したと判断するには、やはり直近高値(2021年1月高値の1.2349ドル、チャート上の丸で囲った部分)の上抜けなど、もう一押しが欲しいところ。

チャート下部の「DMI」で確認しても、現在は+DI>-DI(上昇トレンド)になっているものの、トレンドの強さを示すADXはまだ低水準にあり、足もとの上昇トレンドがしっかりしたものではないことを示唆しています。


ユーロドルの週足分析:押し目買いを進める際の下値目処

もう少し短期的な視点で、今後のユーロドルの見通しを確認していきます。



週足のユーロドルチャートを見ると、月足分析で紹介したように2008年からの下落トレンドが転換したと仮定した場合、現在は2022年9月安値を起点とする上昇トレンド(チャート上の黄色実線)にあることが分かります。

この上昇トレンドラインを基に「チャネルライン」を引いてみると、前回チャネルラインで頭を抑えられたのが2023年7月、そして今回も6月末に再びチャネルラインが上値の目処として意識された格好となりました。


2023年7月のケースでは、その後の調整幅は約800bpほど。今年の7月1日につけた直近高値1.1829ドルから同程度の調整が入った場合、1.1000ドル付近まで下押し余地があると予想されます。同水準付近には今年の5月12日につけた直近安値1.1065ドル付近も控えているため、その辺りが当面の下値目処となるでしょう。中長期的な押し目買いを進める際の目処としても利用できそうです。


今後の取引材料・変動要因をチェック:米金融政策やジャクソンホール会議に注目

最後に、今後1カ月間のユーロドルに関する重要イベントも確認しておきましょう。注目は本日(7月30日)まで開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)です。市場予想では政策金利は据え置きとなっており、今回のFOMCではメンバーの金利見通し(ドット・チャート)は公表されないため、声明文とパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の会見がポイントになります。

 

一方で、欧州中央銀行(ECB)ですが、期間内には金融政策決定理事会は予定されていません(次回は9月11日)。ただし、例年各国の中銀関係者が集まり、市場の注目を集める米ジャクソンホール会議が今年も8月21-23日の日程で開催されるため、ラガルドECB総裁が会議に出席した際には注意しておきましょう。

その他の経済指標・イベント等は以下の通りです。これらのイベントは、ユーロドルの為替レートに影響を与える可能性があります。

 

今後1カ月の重要イベント

  • 7月29-30日 米国 米連邦公開市場委員会(FOMC)
  • 7月31日 米国 6月PCEコア・デフレーター
  • 8月1日 ユーロ圏 7月消費者物価指数(HICP、速報値)
  • 8月1日 米国 7月米雇用統計
  • 8月12日 米国 7月消費者物価指数(CPI)
  • 8月21-23日 米国 ジャクソンホール会議
この連載の一覧
第156回 2025年最新のユーロドル見通し:長期下落トレンドの転換点か?
第155回 2025年最新のランド円見通し、再び上昇基調へ?チャートとファンダメンタルズから徹底分析
第154回 2025年最新の豪ドル米ドル見通し:2021年来の下落トレンドはついに転換か?
第153回 2025年最新ポンド円見通し:200円突破なるか?チャート分析と今後の注目ポイント
第152回 今後のハンガリーフォリント円見通し、上昇トレンド継続で上値余地拡大へ 高金利状況は続く
第151回 今後のNZドル米ドル見通し、下値確認でトレンド転換なるか
第150回 今後のメキシコペソ円見通し、レンジ継続も上抜けチャンスが到来
第149回 今後の豪ドル円見通し、調整が深まるか直近安値の維持が焦点に
第148回 今後のユーロ円見通し、貿易リスクはあるがチャート上では上昇期待も
第147回 ドル円相場見通し、一段の円高へと向かうリスク 2025年中に120円台もあり得るか
第146回 NZドル円(nzdjpy)相場予想、追加利下げ濃厚も下落トレンドは終了か?
第145回 トルコリラ円(try/jpy)相場予想、過去最安値更新で止まらぬ下落
第144回 ユーロドル為替相場予想、トレンド反転の判断は慎重に
第143回 南アフリカランド円相場予想、一目雲下限を維持できるか注目
第142回 豪ドル米ドル相場予想、下降トレンドへの移行で下押し圧力も増すか
第141回 ポンド円、下押し圧力を警戒すべき局面
第140回 NZドル米ドル、下落トレンド転換のチャンス到来か
第139回 メキシコペソ円、反発に向けたラストチャンスか
第138回 豪ドル円、調整局面入り
第137回 ユーロ円、昨年8月安値が再び焦点に
第136回 ドル円、短期的な下値リスクに要注意
第135回 NZドル円、さらなる下値余地拡大に注意
第134回 トルコリラ円、過去最安値更新が視野に
第133回 ユーロドル、2023年来のレンジ相場を下方ブレイク
第132回 ランド円、直近の下げ加速なら2020年来のトレンドも怪しく
第131回 豪ドル米ドル、レンジブレイクを回避できるか
第130回 ポンド円、ダブルトップの完成が迫る
第129回 NZドル米ドル、一転下落で下値目標も迫る
第128回 メキシコペソ円、現状は7円台のレンジ相場
第127回 豪ドル円、穏やかな上昇トレンドながら下値リスクもちらり
第126回 ドル円、ポジティブな状況だがあまり強気に立ち回ると・・・
第125回 ユーロ円、直近安値の維持がポイントに
第124回 NZドル円、新たな下落トレンドがスタートか
第123回 トルコリラ円、週足でのトレンド転換はまだまだ遠く
第122回 ユーロドル、下値余地拡大の可能性に注意
第121回 豪ドル米ドル、慎重な判断が求められる局面
第120回 ランド円、一目均衡表の雲上限が今後のポイントに
第119回 米大統領選後のシナリオ別相場展望
第118回 米大統領選のアノマリー
第117回 米大統領選の直前特集、FX初心者向けガイド
第116回 ポンド円、上昇トレンドチャネルが維持できれば・・
第115回 NZドル米ドル、「三角保ち合い」は上方ブレイクで決着
第114回 ドル円、1年半続いた上昇トレンドが終了して今後は?
第113回 ポンドドル、10年来の下げ相場転換に向けて
第112回 メキシコペソ円、一段の下値余地拡大に注意
第111回 豪ドル円、4年続いたトレンドが終了
第110回 トルコリラ円、売り材料豊富で買い向かうには・・
第109回 NZドル円、相対的な上値の重さが目立つ
第108回 ユーロ円、はたして「ダマシ」だったのか
第107回 ランド円、週足は上昇トレンド崩れたが月足は?
第106回 豪ドル米ドル、保ち合いか下落トレンドか
第105回 NZドル米ドル、「三角保ち合い」のブレイクを見極めたい
第104回 ドル円、上昇トレンドは崩れていない
第103回 ポンド円、順調に上値試しを継続
第102回 メキシコペソ円、2022年からの上昇トレンドは終了?
第101回 ユーロドル、現在の下落基調でレンジブレイクなるか
第100回 トルコリラ円、週足ベースでも変化の兆し
第99回 豪ドル円、10数年ぶりの高値の視野に
第98回 NZドル円、ますます上昇トレンドが明瞭に
第97回 ポンドドル、短期的には上方向へ
第96回 ユーロ円、ユーロ導入来高値更新で未知の領域へ
第95回 ランド円、10数年来の相場転換となる可能性も
第94回 ドル円、急落後も上昇トレンドを維持
第93回 メキシコペソ円、上昇トレンドは健在だが・・
第92回 トルコリラ円、大きなチャンス到来か
第91回 豪ドル米ドル、上方向は攻めづらい
第90回 NZドル米ドル、トレンド転換につながる注目ポイントに接近
第89回 ユーロドル、ヘッド・アンド・ショルダーズの完成なるか
第88回 ドル円、5月中にも上方向へブレイクか
第87回 豪ドル円、上昇トレンド継続に黄色信号
第86回 NZドル円、上昇トレンド継続も目先は調整リスク
第85回 ポンドドル、長期下降トレンドの転換は間近?
第84回 ランド円、上昇トレンドは本物か
第83回 メキシコペソ円、レンジブレイクのチャンス到来
第82回 ユーロドル、レンジ相場脱却の手掛かりは乏しい
第81回 トルコリラ円、昨年8月以来のチャンスをものにできるか
第80回 ドル円、上昇トレンドを維持も上値追いは慎重に
第79回 NZドル米ドル、長期下落トレンドのブレイクは失敗か
第78回 豪ドル米ドル、依然として下落トレンド
第77回 ポンド円、来年以降の下値リスクに警戒
第76回 ランド円、ヘッドアンドショルダーズの可能性高まる
第75回 メキシコペソ円、レンジ相場がしばらく継続か
第74回 ユーロドル、メインシナリオはレンジ相場
第73回 ドル円、ポイントは一目均衡表雲の維持
第72回 低迷ぶりが際立つトルコリラ円、反発の可能性は?
第71回 豪ドル円、上値トライのチャンスだが力強さを欠く
第70回 NZドル円、いよいよ過去最高値も視野入りか
第69回 ユーロ円、月足チャートでは不安なし 週足では?
第68回 ポンドドル、一目雲に接近で正念場に
第67回 ランド円、ヘッドアンドショルダーズの懸念消えず
第66回 NZドル米ドルに反発のチャンス到来?
第65回 好調なメキシコペソ円に失速の気配
第64回 ドル円、150円台までは介入の可能性低い
第63回 カナダドル円、110円台への再挑戦が迫る
第62回 リラ円、一目雲を数年来上抜けできず
第61回 今後の豪ドル米ドル相場
第60回 今後のユーロドル相場
第59回 今後のポンドドル相場
第58回 今後のランド円相場
第57回 今後のNZドル円相場
第56回 今後のドル円相場
第55回 今後のメキシコペソ円相場
第54回 今後のトルコリラ円相場
第53回 今後の豪ドル円相場
第52回 今後のNZドル米ドル相場
第51回 今後のユーロドル相場
第50回 今後のユーロ円相場
第49回 今後の豪ドル米ドル相場
第48回 今後のポンド円相場
第47回 今後のドル円相場
第46回 今後のランド円相場
第45回 今後のトルコリラ円相場
第44回 今後のNZドル円相場
第43回 今後のメキシコペソ円相場
第42回 今後のユーロドル相場
第41回 今後の豪ドル円相場
第40回 今後のドル円相場
第39回 ダウ理論とエリオット波動(3)
第38回 ダウ理論とエリオット波動(2)
第37回 ダウ理論とエリオット波動(1)
第36回 ローソク足(3)
第35回 ローソク足(2)
第34回 ローソク足(1)
第33回 一目均衡表(4)
第32回 一目均衡表(3)
第31回 一目均衡表(2)
第30回 一目均衡表(1)
第29回 リトレースメント
第28回 避けられるリスク(その他の国編)
第27回 避けられるリスク(英国・オセアニア編)
第26回 避けられるリスク(日本・欧州編)
第25回「誰にでもわかるチャート教室」 避けられるリスク(米国編)
第24回「誰にでもわかるチャート教室」 ポイント&フィギュア
第23回「誰にでもわかるチャート教室」 練行足とカギ足
第22回「誰にでもわかるチャート教室」 新値足
第21回「誰にでもわかるチャート教室」 パラボリック
第20回「誰にでもわかるチャート教室」 エンベロープとボリンジャーバンド
第19回「誰にでもわかるチャート教室」 MACD
第18回「誰にでもわかるチャート教室」 ROC
第17回「誰にでもわかるチャート教室」 突発的な急変動に対処する
第16回「誰にでもわかるチャート教室」 DMI
第15回「誰にでもわかるチャート教室」 サイコロジカル・ライン
第14回「誰にでもわかるチャート教室」 RCI
第13回「誰にでもわかるチャート教室」 ストキャスティクス
第12回「誰にでもわかるチャート教室」 RSI
第11回「誰にでもわかるチャート教室」 時間軸の考え方
第10回「誰にでもわかるチャート教室」 フォーメーションあれこれ~その4
第9回「誰にでもわかるチャート教室」 フォーメーションあれこれ~その3
第8回「誰にでもわかるチャート教室」 フォーメーションあれこれ~その2
第7回「誰にでもわかるチャート教室」 フォーメーションあれこれ~その1
第6回「誰にでもわかるチャート教室」 移動平均線~その2
第5回「誰にでもわかるチャート教室」 移動平均線~その1
第4回「誰にでもわかるチャート教室」チャネルラインと外国為替市場の独自性
第3回「誰にでもわかるチャート教室」相場の方向性が一目瞭然、トレンドライン
第2回「誰にでもわかるチャート教室」相場のトレンドを探る
第1回「誰にでもわかるチャート教室」 相場が不安定だからこそ、チャート分析に頼りたい

為替情報部 アナリスト

岩間 大祐

大学卒業後の2004年に国内証券会社に入社。 外国為替証拠金取引業務に携わった後、金融情報サービス会社にて個人投資家向けの為替情報配信業務を担当。市況サービスのほか、テクニカル分析を軸にした情報を配信する。 国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト。

岩間 大祐の別の記事を読む

人気ランキング

人気ランキングを見る

連載

連載を見る

話題のタグ

公式SNSでも最新情報をお届けしております