デジャブ・・・日米両首脳の発言
日本時間7月23日に日米間での貿易交渉が締結されることになりました。
この時にトランプ米大統領は自身のSNSに「おそらく、これまでで最大の取引」と述べています。
その後の会見でも、「これまでにない」などと自分の成果を誇張しましたが、この発言を聞いてふと思い出したことがあります。
それは同じ貿易交渉で、遡ること2018年の安倍政権の時です。
詳細は第19回「日本語を信じるな…翻訳ソフトで良いので原文を読む」に記載していますが、すこしだけ抜粋します。
2018年は日本は第2次安倍政権、米国はトランプ政権でしたが、両国間で通商協議が行われました。
9月後半の日米通商協議後に日本政府は、日米間の新たな通商協議である「日米物品貿易協定(TAG)」
が行われたと発表しました。
安倍首相が「これまで(の自由貿易協定=FTA)と全く異なる」と表現したように、
日本語だけの報道を見ていると、新たな取り組みが行われたと思ったでしょう。
しかしながら、米国サイドは「TAG」などという言葉を一切使用していません。
米国側の声明では「Agree to Negotiate a Free Trade Agreement」と従来のFTAを使用していました。
安倍首相もトランプ大統領と同じで「これまでと全く異なる」と「これまでにない」ことを強調していたわけです。
日本でさえも現在はTAGという言葉を使わないどころか、おそらく誰も覚えていない状況です。
このように、日米問わず政治家は国民や周りに、かなり誇張をして、成果を上げた発言を繰り返します。
本来ならばマスコミがファクトチェックするべきことも、日本のマスコミもほぼスルーしてしまう状況です。
日米交渉合意の茶番・・・出来レースで選挙後に発表
参議院選挙の投開票が7月20日、それからわずか3日で日米の貿易交渉が合意しました。
この数週間は石破首相は選挙で東奔西走をし、選挙後3日で米国に新たな交渉内容を提案するなど普通に考えて無理でしょう。
これまでに
第146回「そのポジション7月まで我慢できますか?時間軸を無視してやってはいけない」
第154回「参議院選挙後の豹変を覚悟しないでやってはいけない」
などにも記載しましたが、選挙が終わるまでは、日米間の合意が伏せられるというのは出来レースだったでしょう。
わずか数日で合意したというのは茶番以外の何物でもないです。
もし、仮に今回の合意が参議院選挙前に発表されていたらどうだったでしょうか?
今回の合意にトランプ大統領は
「おそらく最も重要なことは、日本が自動車やトラック、米、その他特定の農産物などの貿易に国を開放することだ」
(原文・ Perhaps most importantly, Japan will open their Country to Trade including Cars and Trucks, Rice and certain other Agricultural Products, and other things. )
と述べています。
米を中心とした農産物の開放をすると、当然自民党の岩盤支持層でもある農業従事者からの抵抗を受けるでしょう。
そして、自民党の獲得票が更に減少したことと思われます。
更に石破政権、そして選挙の要となる森山幹事長は、農林族のドンと呼ばれる方です。
農林族のドンが幹事長でいる状況で、日本の農業に多大な影響を与えることを発表し、選挙前にドンに恥をかかすわけにはいかなかったでしょう。
今後の経済的な影響は?
このような経緯がある中で、日米合意が締結されました。
ただ、詳細を報じるべきマスコミも踏み込んだ内容を発表しないことで、我々投資家たちは憶測や予想に基づいて取引をしなくてはならないでしょう。
不明点としては、トランプ大統領が「日本は私の指示により、5500億ドルを米国に投資し、米国はその利益の90%を受け取ることになる」と述べたこともあります。
(原文・Japan will invest, at my direction, $550 Billion Dollars into the United States, which will receive 90% of the Profits. )
5500億ドルは日本円で80兆円です。
これはいったい何に投資されるのかにより、為替にも影響を与えるでしょう。
これまでトランプ政権前の平均関税率が3.3%程度だった中で、15%まで引き上げられた(25%から15%への引き下げより、こちらの引き上げが重要)で、輸出企業への影響はどうなるのか?
輸出企業の米国でのプレゼンスはどうなるのか?
輸出企業は税率の高い米国ではなく、さらに輸出先が多様化するのか?なども為替へ影響を与えます。
このように茶番のなかで決定した日米合意ですが、為替への影響は避けられないことで、今後も政治も流れを含めて相場を見ないでやってはいけないでしょう。