ゼブラ企業は投資の対象になる?ユニコーン企業との違いや将来性は?

環境問題や地方創生など社会課題の解決と、経済成長の両立を目指す企業を「ゼブラ企業」と呼びます。投資家が注目する企業評価額10億ドル以上で未上場の「ユニコーン企業」とは何が違うのでしょうか?投資対象として将来性はあるのでしょうか?


本記事ではゼブラ企業とは、ユニコーン企業との違いと投資対象としての将来性などを解説していきます。


ゼブラ企業とは

ゼブラ企業とは、2016年に4人のアメリカ人女性起業家が提案した概念です。

利益と時価総額を重視するユニコーン企業に対し、「社会課題解決」と「経済成長の両立」を目指す企業を白黒模様のゼブラ(シマウマ)にたとえました。4人は「Zebras Unite」という組織を作り、2023年2月現在世界中で70以上の支部、7000人以上のメンバーが存在します。


一方で、ユニコーン企業とは企業評価額が10億ドル以上の設立10年以内、未上場の企業を指します。2022年9月時点の世界のユニコーン企業は1,404社存在し、テスラ社のCEO・イーロン・マスク氏が創立した「SpeceX」などが該当します。


ユニコーン企業は利益を最大化することを重視しています。利益が急上昇の後に企業価値が10億ドル超でエグジット(上場&売却)が目的です。一方でゼブラ企業は持続的な繁栄と社会課題の解決を目指します。社会課題の例としては地方創生や環境問題の解決、発展途上国への支援などがあります。


ユニコーン企業とゼブラ企業の違いは以下のとおりです。

 

出典:中小企業庁「小規模企業白書 2022 地域課題の解決と地域内連携」


内閣府が運営する「地方創生」ポータルサイト内にある大分県が作成した「地域再生計画」によると、「ゼブラ企業の理念はSDGsと同一」と記されています。


“ゼブラ企業はユニコーン企業のような急激な成長を志向しないものの、民間ビジネスとして持続的な成長を目指していく事業体である。誰も取り残さない地域づくりが求められている行政と同様の思想を持ち、「収益性の高い事業構築」よりも、「地域に根付く技術導入により課題解決を目指す」ことを最優先とする企業=ゼブラ企業の理念は、SDGs が目指す「持続可能な社会づくり」と同一の考えを持ち、課題である地域の経済負担力や担い手不足の具体的な解決策となっている。”


ゼブラ企業は投資対象になる?

ユニコーン企業は10倍の成長を目指し企業価値が10億ドル超となり、最終的には上場を果たすまたは売却する事例が多いです。「次のユニコーン企業を探している」という投資家は多いでしょう。


一方でゼブラ企業は投資先として適切と言えるのでしょうか?上記の「地域再生計画」によると「ゼブラ企業の理念はSDGs が目指す『持続可能な社会づくり』と同一の考えを持ち」と記されています。


SDGs(持続可能な開発目標)とは、2015年9月の国連サミットで採択された2030年までの達成を目指す国際目標です。「あらゆる場所あらゆる形態の貧困を終わらせる」「気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる」などの17のゴールと169のターゲットから構成されています。


SDGsはESG投資で考慮されるESG(社会・環境・統治)の課題と似ており、被っている部分もあります。


ゼブラ企業に投資する=ESG投資と言えるかもしれません。日本最大の投資機関の1つGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は、2015年9月に投資の意思決定プロセスや株主行動にESGの視点を反映させるための考え方を示す原則(国連責任投資原則)に署名しています。ホームページには「ESGを考慮した投資を推進しています」と明記されています。


世界のESG投資の市場規模から見ても、今後長期的にESG投資が加速すると推測できます。よってゼブラ企業への投資も長期では伸びる可能性があります。ただし、通常の投資と同様に財務分析や業界分析などを行った上で判断することが重要です。


日本国内にもゼブラ企業が。今後の動向に注目を

日本国内でも世界文化遺産として登録されたものの、住民人口が減少する地域で「ゼブラ企業」が誕生しました。


中小企業庁の「小規模企業白書2022」によると、株式会社石見銀山生活観光研究所はこれまで企業や個人事業者が個別で収益を上げていたビジネスの構造を、ともに商品開発やサービス提供をすることで利益を分配できるシステムに変える構想を検討しています。


町を観光するフリーパスを導入し、施設への入館・交通のレンタサイクル・バスの利用などを1つのチケットで可能にする「地域一体型経営」というコンセプトで地域経済全体に役立つビジネスを作ることを目指しています。


ゼブラ企業を支援する企業も存在し、地方の商工会議所の「ゼブラ企業のワンストップ創業支援」などの制度も申請検討中の段階です。支援制度によりゼブラ企業が増え、投資家に注目される未来が来るかもしれません。今後の動向に注目していきましょう。


ファイナンシャル・プランナー/ライター

田中 あさみ

大学在学中に2級FP技能士の資格を取得。会社員を経て独立し、金融・投資・相続・法律などの記事を執筆している。 自身でも米国株やETF・投資信託等を運用中。

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