英、財政不安でトリプル安
4月にトランプ米政権が打ち出したショッキングな相互関税に市場は「米国の自傷行為」とみなし、関税によるスタグフレーション突入への警戒感から米債売り・米株売り・ドル売りというトリプル安を招いたが、今週の2日に英国も財政不安を背景にトリプル安に見舞われました。
英30年債利回りは一時20bp(1 bp=0.01%)余り急上昇し、10年債利回りは16bp上昇するなど米債売りが進み、主要株価指数FTSE250指数は1.5%安を付け、ポンドは対ドルで1%超下落しました。
きっかけは英財務相の交代観測
市場の注目が英国の財政政策に集まる中、スターマー英首相が議会で、次回総選挙までにリーブス氏が財務相に留まるか明言を避け、リーブス氏を擁護するどころか明確な支持を示しませんでした。政府の借り入れを抑え、財政規律を重視するリーブス氏の姿勢を債券市場はそれでも好感し、望ましい財務相と評価する声が多いです。財務相交代観測の台頭で、財政規律が緩むリスクを市場が警戒したわけです。市場の混乱を受けて、リーブス財務相が今後何年も現職にとどまるだろうと発言し交代の観測を打ち消したが、英財政リスクへの警戒感は残されています。
英国の財政不安
与党労働党の議員らは1日、福祉予算を50億ポンド削減する政府の歳出案を撤回に追い込み、社会保障改革により財政赤字を抑制するリーブス財務相の計画に狂いが生じました。
英政府は財政規律を満たすため、秋に財政健全化策を発表する予定だが、今後の歳出削減が実現しなければ、増税または追加の国債発行が必要になる可能性が高いです。今秋の財政計画公表に向け、リーブス氏は200億ポンドの不足に直面していると言われています。
英国市場はここ数年、債務増大と経済成長鈍化を懸念する投資家からたびたび厳しい売りにさらされてきました。2022年には、当時のトラス首相が打ち出した財源の裏付けがない減税案が無謀だと市場に受け取られ、英国資産は大きく変動しました。国債は最大の売りを記録し、ポンドは37年ぶりの安値に下落しました。
英政府の財政悪化の連鎖が懸念されるたびに債券投資家は英国債を売り急いでいます。スターマー氏が議会でリーブス氏を全面的に擁護しなかったことに市場の一撃を受けたが、状況が悪い時にはほんのささいなことで導火線に火が付くことがあります。市場は数カ月にわたり高度な警戒を続ける可能性があり、英政府が市場の信認回復に向け抜本的な対応策を講じなければ、政権交代に追い込まれたトラス政権と同様のことが起きる可能性は否定できません。