量子コンピューターが株式市場の注目テーマとして再燃してきました。一時前に大きな話題となりましたが、今年1月に米半導体大手エヌビディアのジェンスン・フアンCEOが「実用化は20年先」と発言し、関連銘柄が暴落した経緯があります。いくら有望なテーマとはいえ、何十年も持ち続けるのは簡単にできることではないですよね。
ただ、実現ができなくなったわけではありません。各国の政府による研究開発支援の強化や、大手企業による具体的な応用事例の発表も出てきており、徐々に現実味を帯びてきているのは間違いないでしょう。
そもそも量子コンピューターとは何なのか
専門家でもない限り完璧な説明をできる人は少ないと思います。筆者も素人なので、なんとなくすごいというイメージを持つことが精一杯。なので、筆者が理解できる範囲で量子コンピューターの特徴を説明していきます。
従来のコンピューターは「0」か「1」の二進法で情報処理を行います。「1」と表現したい場合は「1」、「2」と表現したい場合は「10」と表記されます。ちなみに私たちの生活で馴染みがあるのは十進法(0から9を使う方法)。一方で、量子コンピューターでは「0」と「1」の状態を同時に保持できる「量子ビット(qubit)」を用います。
それの何がすごいのか、深く調べていくと頭がこんがらがってくるので割愛します。簡単に言うと、従来のコンピューターは計算を一つずつこなしていったのに対し、量子コンピューターは複数の計算を同時並行できるようになります。なお、同時並行できる計算は1量子ビットで2通り、2量子ビットで4通り、3量子ビットで8通りというように、「2のn乗通り」で増えていきます。
仮に100量子ビットだった場合は2の100乗となるため、同時並行できる計算数はなんと1,267,650,600,228,229,401,496,703,205,376通り。日本語表記では約1.27澗(かん)です。ケタが多すぎて何が何だか分からなくなってきますが、とりあえず膨大な量を計算できることが量子コンピューターの特徴となります。
万能ではないようですが、組合せ最適化やシミュレーションなど一部の領域で驚異的な性能を発揮すると言われます。例えば、新薬候補の発見、金融分野でのポートフォリオ最適化、気象予測の精度向上などが挙げられます。もし新薬候補があっという間に見つかるようになったら、病気とほぼ無縁の世の中もあり得そうですね。
国内外での量子コンピューターの研究機関や企業
前述のように天文学的な量の計算を可能とする量子コンピューターですが、実現には数多くの先端技術も必要です。
調べてみると、例えば量子ビット(qubit)を物理的に実装する技術、量子ビットに対して操作を精密に行う技術、量子誤り訂正(量子情報は非常に壊れやすい)、絶対零度に近い温度で作動させる必要がある、量子回路の設計、量子アルゴリズムの開発などがありました。
ざっくり言うと、物理・工学・ソフトウェア・数学・冷却・材料科学など、これまで培ってきた技術の総力戦ですね。
網羅できているわけではありませんが、前述した量子コンピューターに必要な技術を開発する企業をざっくり一覧にすると上のようになりました。NTT、東芝、富士通は日本人としても馴染みがあり、ぜひ頑張ってほしいところ。なお、富士通は4月に、理化学研究所と共同で世界最大級となる256量子ビットの超伝導量子コンピュータを実現したと発表しました。256量子ビットで一度に計算できる通り数は早見表の一番下で、なんと0が77個もつきます。
社名にQuantum(クオンタム)とつく企業がいくつかありますが、これを日本語に直すと「量子」。量子コンピューターを作るために生まれたと言ってもいいですね。ちなみにRigettiやIonQは米国市場に上場する量子コンピューター関連の代表格です。今後の国内IPOにおいても、量子コンピューター関連が新規上場してきたら盛り上がりそうです。