今回解説していく通貨はポンド円です。英国は世界で数少ない米国との貿易協議が成立した国であり、市場を騒がせている相互関税の影響を直接的には受けずに済む状態にあります。ただ、英国内では景気減速懸念および財政不安などが意識されており、今後も注意が必要となるでしょう。
一方で、テクニカル的には上値を試しやすい状況。節目の200円も迫るなか、さらに上値余地を拡大していくのか注目されます。
ポンド円の現状と今後の展望(2025年7月時点)
2025年7月現在、ポンド円は200円突破目前まで迫る展開となっており、為替市場で大きな注目を集めています。4月初旬には一時184.39円まで下落しましたが、その後は買い戻しが優勢となり、7月上旬には199.01円まで回復。テクニカル分析上では、明確な上昇トレンドへの転換が示唆されました。
ファンダメンタルズ分析:英国内外の要因に注目
米英貿易協定の影響と安心感
英国はトランプ政権による相互関税の影響を回避できる米英二国間貿易協定を締結済み。このことから、ポンド円為替レートに対する直接的な悪影響は限定的と見られています。
英経済の懸念材料:景気減速と財政不安
ただし、英国経済の減速懸念が広がっており、イングランド銀行(BOE)は2025年8月の金融政策委員会(MPC)で利下げを行う可能性が高まっています。
また、英政府は財源確保のために進めていた福祉改革を撤回したことから、財政不安も顕在化。一部ではリーブス財務相の辞任説も浮上し、市場に不透明感を与えました。
テクニカル分析:チャートで見るポンド円の上昇トレンド
日足チャート分析:三役好転で押し目買い有利
- 2024年9月安値183.72円(チャート上の青色実線)付近で下値の堅さを確認。
- その後は戻り高値(チャート上の赤丸で囲った部分)を上抜け、相場は上昇基調へ転換。
- 「一目均衡表」では三役好転(買いシグナル)が点灯中。
- 今後は一目基準線や直近安値付近を目安とした押し目買い戦略が有効。
週足チャート分析:200円超えでさらなる上昇も
- 長期的には2020年3月からの上昇トレンド(チャート上の黄色実線)が継続中。
- 現在は199.81円の直近高値(チャート上の青色実線)や200.00円の節目突破が焦点。
- これを明確に上抜けると、昨年7月の高値208.11円を目指す可能性も。
- 「DMI」では+DI>-DIで上昇トレンド継続を示す一方、トレンドの強さを示すADXは低水準で、さらなる勢いには200円突破がカギ。
今後1カ月間の注目イベントと為替変動要因
7月16日 英国 6月消費者物価指数(CPI)
7月18日 日本 6月全国CPI
7月30-31日 日本 日銀、金融政策決定会合
8月1日 米国 相互関税の上乗せ部分の猶予期限
8月7日 英国 英中銀、政策金利発表
日銀の早期利上げ観測は後退しているものの、英中銀は今回の会合で追加利下げに動く見込み。同時に公表される英金融政策委員会(MPC)議事要旨などから、今後の追加利下げ余地などを探っていくことになります。
また、米相互関税の上乗せ部分の猶予期限が8月1日へと延期されており、日米貿易交渉については期限まで引き続き注意しておく必要があるでしょう。
まとめ:ポンド円は200円突破が転換点に
ポンド円は200円という心理的・テクニカル的な節目を突破できるかどうかが重要な分岐点となります。ファンダメンタルズでは英経済状態や財政懸念に注意しつつ、テクニカルでは押し目買いをベースに戦略を立てることが有効となるでしょう。