【市場趨勢指標でみる株式市場~その①】

市場趨勢指標とは?

「市場趨勢指標」とは、市場全体の投資環境を判断する重要な指標です。日本では、株式市場でどれだけ多くの銘柄が買われているか、あるいは市場の物色の広がりなどをみる指標として使われています。


あまり聞きなれない指標が多いと思いますが、具体的には、騰落レシオ、新高値-新安値指数、MA上位銘柄比率、騰落出来高などがあります。


海外では「マーケット・ブレドス」といい、米国では1960年代には市場趨勢が株式投資に重要な指標だと認識されていたようです。


株価上昇局面での市場趨勢

景気が拡大する局面では、業績好調な企業が増加し、株式市場では上昇する個別株が増加傾向になります。このような局面では、市場全体に占める株価上昇銘柄数の比率は50%を超え、市場趨勢指標は高くなる傾向があります。


景気拡大の影響が広がるにつれ、業績が好転する企業も増えるため、市場趨勢指標は上昇を続けます。景気や業績好調の裏付けがあり、強気見通しを抱く投資家が増えている間は、市場趨勢指標は上昇を続けるでしょう。


日経平均やTOPIX(東証株価指数)などの株価指数が上昇している局面では、市場に強気見通しが広がっていることを示唆するとはいえ、指数に採用されている銘柄、あるいは指数に影響の大きい銘柄だけが上昇している可能性もあります。


しかし、市場趨勢指標が上昇していれば、指数に採用されている銘柄だけが上昇しているのではなく、市場内の多数の銘柄に強気見通しが広がっていることを示唆しています。つまり、株価指数も市場趨勢指標も上昇している局面は、相場に勢いがあると判断できます。


市場趨勢の変化をどう考えるか?

日経平均やTOPIX(東証株価指数)などの株価指数が上昇しているにもかかわらず、市場趨勢指標が下降に転じたときはどういった判断ができるでしょうか。


それは、指数に採用されている銘柄、指数に影響の大きい銘柄は株価上昇が続いているものの、それ以外の銘柄の株価が上昇しなくなってきたことを意味します。「日経平均は上がっているのに自分の持ち株は上がらない」、こんな局面を経験された投資家は少なくないでしょう。


株価上昇局面でも、重要な経済指標の発表、FOMC(連邦公開市場委員会)や日銀金融政策決定会合などの中央銀行イベントなど、市場に影響のある日程が近づくと、その結果を確認するまでは市場全体で取引が手控えられることがあります。そのような場合も、市場趨勢指標は低下しやすいといえるでしょう。


しかし、注意しなければならないのは、相場自体が反落に転じる前兆となる場合があることです。市場趨勢指標は、「指標が中立を上回っているか下回っているか」という水準も重要ですが、「上昇傾向にあるのか下降傾向にあるのか」という方向の変化が重要となります。


日本株情報部 チーフストラテジスト

東野 幸利

証券会社情報部、大手信託銀行トレーダー、大手銀行などの勤務を経て2006年に入社。 マーケット分析やデリバティブ市場のコンテンツを担当。世界主要指数や個別株を対象にテクニカル・ストラテジーの提案。 日経CNBC「夜エクスプレス」、日経チャンネル「マーケッツのツボ」、テレビ東京「モーニングサテライト」、ラジオ日経(金曜後場マーケットプレス)など 会社四季報プロ500、ダイヤモンド・ザイ、日経マネー、株主手帳など 金融機関向けコラム「相場一点喜怒哀楽」 IFTA国際検定テクニカルアナリスト(MFTA) 日本テクニカルアナリスト協会理事 CFP、1級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産設計提案業務) DCアドバイザー(確定拠出型年金教育・普及協会)

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