FXのニュースでは、戦争や金融危機などが起きると「リスク回避の円買い」という言葉が登場します。日本は資源の多くを海外から輸入しているため、地政学リスクの高まりは必ずしも日本経済にプラスではありません。それでも、なぜ円が買われるのでしょうか。
今回は、FX初心者の方にも知っていただきたい「有事の円買い」の仕組みを見ていきます。
なぜ円は安全資産と呼ばれるのか
世界で金融不安や地政学リスクが高まると、投資家は株式や新興国通貨などのリスク資産を売り、安全性が高いと考える資産へ資金を移します。その際、円は買われやすい通貨の一つです。
背景には、日本が長年にわたって低金利だったことがあります。投資家は低金利の円を借り、その資金を米ドルや豪ドルなどの高金利通貨、株式などへ投資してきました。これが「円キャリートレード」です。
しかし市場が急変すると、投資家はリスク資産を売却し、借りていた円を買い戻して返済します。この「キャリートレードの巻き戻し」が、リスク回避局面での円高につながることがあります。
「有事なら必ず円高」ではない
ここは初心者の方が注意したいポイントです。世界情勢が悪化すれば必ず円高になるわけではありません。日本が地政学リスクの中心になった場合や、原油価格が急騰して日本の輸入負担が増えた場合には、むしろ円が売られる可能性があります。
また、為替市場では米国の金利や日銀の金融政策も重要です。「有事だから円買い」と一つの材料だけで判断するのは危険です。
現在の円相場に変化も
2026年のドル円市場では、リスク回避だけでなく、日米金利差や日銀の利上げ観測、為替介入などが大きな材料となっています。
7月にはドル円が一時1ドル=164円近くまで上昇した後、円買いの動きによって円高が進みました。しかし、その後は再び円安方向へ戻っています。こうした動きからも、一時的な円買い材料だけで長期的なトレンドを変えることは難しいことが分かります。
FX初心者が覚えておきたいこと
「有事の円買い」という言葉を覚えるだけでなく、「なぜ投資家が円を買うのか」を考えることが大切です。
リスク回避によるキャリートレードの巻き戻し、日米金利差、中央銀行の政策、為替介入、原油価格など、複数の要因が同時に円相場を動かしています。
ニュースを見たときも、「悪いニュースだから円高」と考えるのではなく、「そのニュースによって世界の投資マネーがどこへ向かうのか」と考えてみてください。
おわりに
「有事の円買い」は、円が日本経済そのものの安全性だけで買われているわけではないことを教えてくれるテーマです。
低金利通貨として利用されてきた円の特徴や、投資家のポジション調整など、さまざまな要因が重なって現在の円相場が形成されています。
FXでは「昔からの常識」をそのまま信じるのではなく、「なぜそうなるのか」「今もその仕組みは機能しているのか」などを考えることが重要です。こうした視点を持つことが、為替市場を理解する第一歩になります。



