株価指数を運営するハンセン・インデックシズは10日、「恒生科技指数(ハンセンテック指数)」の算出方法を大幅に見直す案を公表し、市場関係者から意見募集を開始しました。香港のテクノロジー市場が2020年の指数創設時から大きく変化したことを踏まえ、指数の代表性と投資対象としての魅力を高めることが狙いとされています。
構成銘柄数を30から50へ、AI・先端ハードウエアを拡充
今回の改革案で最も注目されるのが、構成銘柄数を現在の30銘柄から50銘柄へ増やすことです。これまでは主に時価総額を基準に銘柄を選定していましたが、改定後は40銘柄を時価総額で選ぶ一方、残る10銘柄については過去12カ月の売上高成長率を基準に選定することとし、これにより、現在は時価総額が比較的小さいものの、高い成長力を持つテクノロジー企業を指数に取り込みやすくすることが可能になります。
テクノロジー分野の定義も大きく変わります。従来の特定業種による制限を撤廃し、「デジタルプラットフォーム・ソリューション」「人工知能(AI)」「先進ハードウエア」「ロボティクス・オートメーション」「クラウド」「フロンティア・テクノロジー」の6テーマに再編します。また、サブテーマも16から24へ拡大し、半導体やスマート機器だけでなく、宇宙・衛星技術、量子コンピューティング、ブレーン・コンピューター・インターフェース(BCI)、先端材料など、今後の成長が期待される分野まで対象を広げています。

特にAIと先進ハードウエアの拡充は重要で、ハンセン・インデックシズのシミュレーションによると、改定後は先進ハードウエア関連の構成銘柄数が現在の5社から15社へ、AI関連は3社から6社へ増加する見通しとなっています。また、上位10銘柄の指数ウエートは70.6%から66.3%へ低下すると試算されており、特定の大型株への集中度も緩和されます。指数全体として、従来のインターネット・プラットフォーム中心から、AI、半導体、ロボット、ハードウエアなどを含む幅広い新経済(ニューエコノミー)分野をカバーするテクノロジー株の指標へと変わることになります。

香港のテクノロジー市場が大きく変化、パッシブ資金も拡大
今回の改革の背景には、香港市場そのものの変化があります。ハンセンテック指数は20年に算出が始まったので、歴史は比較的浅いといえます。一方、当時の香港のテクノロジー株は、テンセント(00700)やアリババ集団(09988)などのインターネット企業の存在感が大きかったものの、現在はAIや半導体、ロボット、先端ハードウエアなど、テクノロジー産業の裾野が大きく広がっているほか、同指数に連動するパッシブ運用の資産規模も20年の15億米ドルから26年6月には404億米ドルへ急増しています。ハンセン・インデックシズとしても投資資金の受け皿として十分な流動性と代表性を維持するため、今回の改革が必要と判断したものとみられます。
韓国・台湾に出遅れる香港、AI・半導体株の構造差が重し
また、香港市場は韓国や台湾と比較すると、テクノロジー株の相対的な弱さが目立ち、課題の1つとなっています。BNPパリバは4月のリポートで、世界的にソフトウエア株がハードウエア株に対して出遅れるなか、半導体・ハードウエア株の比重が大きい韓国や台湾に対し、インターネット・プラットフォーム株の比重が大きい香港市場が出遅れていると指摘しています。香港上場のインターネット企業もAIへの投資を進めていますが、AI半導体やハードウエアへの直接的なエクスポージャーが大きい韓国・台湾市場に比べ、現在のAI相場の恩恵を受けにくい構造になっています。
もっとも、韓国・台湾市場もAI関連株への資金集中による反動リスクを抱えています。7月には両市場から海外投資家の資金流出がみられるなど、AI投資の持続性や半導体需要の先行きに対する警戒も強まっています。
専門家は改革を評価、香港市場の資金流入につながる可能性
一方、今回の改革について、市場関係者からは前向きな評価が目立っています。専門家の間では、香港のテクノロジー市場が「インターネット時代」から「AI・ハードテクノロジー時代」へ移行するなか、指数改革はタイムリーであり、特にAIや先端ハードウエアを増やし、売上高成長率を選定基準に加えることで、現在の大型株だけでなく、将来の成長企業を早い段階から指数に取り込めると評価されています。
また、指数改革によってETFやインデックスファンド、国際資金が香港のテクノロジー株を投資対象として捉えやすくなれば、売買高や市場流動性の向上につながる可能性があります。構成銘柄を50社へ増やすことで、指数のウエート集中度が低下し、特定銘柄の値動きが指数全体に与える影響も抑えられる見通しです。
今回の見直し案は、9月18日まで市場関係者から意見を募り、9月末に最終的な内容を公表する予定です。実際の構成銘柄数の変更は12月の指数調整で実施される見通しとなっており、今後の動向が注目されます。



