首脳陣が平和記念公園で献花、ゼレンスキー出席・・“歴史的な”広島G7サミット
広島G7サミットが無事終了しましたね。核兵器を持つ米英仏を含む参加国と欧州連合(EU)の首脳9人が平和記念公園で献花する姿は、まさに歴史的瞬間として刻まれることでしょう。
岸田首相のツイートには、4.7万件近い「いいね」が寄せられていました。
画像:献花するG7とEUの首脳陣
(出所:岸田文雄/Twitter)
主要各国メディアのヘッドラインは、以下の通り。ゼレンスキー大統領のG7出席もヘッドラインを賑わせていましたが、やはり平和記念公園を訪れたG7首脳陣にスポットライトが当たっていました。中国は想定通り猛反発、G7声明に対し「中国の懸念を無視し、台湾など内政問題に干渉している」と批判し、議長国の日本に抗議した動きを、環球時報の英語版が踏襲しています。
NYT紙:Biden Pays Silent Tribute to Victims of Hiroshima Bomb
WSJ紙:Biden, Fellow G-7 Leaders Take on China at Hiroshima Summit
ワシントン・ポスト紙:Atomic bomb survivors look to G7 summit in Hiroshima as a 'sliver of hope' for nuclear disarmament
英フィナンシャル・タイムズ紙:How Zelenskyy upstaged G7 summit to confront Ukraine doubters
環球時報:China strikes back at 'economic coercion' rhetoric from divided, confrontational G7 summit
共同声明での「中国」登場回数、20回と前回の12回から増加
共同声明において、中国やロシアを念頭に「経済的威圧」に対応するため新たな枠組を創設し、抑止していくことで合意したことで知られています。その「中国」の登場回数は、広島G7の共同声明では20回と、前回の独エルマウ・サミットの12回から増加しました。
今回、中国に対し「中国に率直に関与し、我々の懸念を中国に直接表明することの重要性を認識しつつ、中国と建設的かつ安定的な関係を構築する用意がある」、「グローバルな課題及び共通の関心分野において、国際社会における中国の役割と経済規模に鑑み、中国と協力する必要がある」など、新たに盛り込まれ、中国との対立を煽らないよう配慮が見て取れます。
台湾海峡についても、前回の「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに、両岸問題の平和的解決を促す」との路線を受け継ぎ、今回は「国際社会の安全と繁栄に不可欠な台湾海峡の平和と安定の重要性を再確認する。台湾に関するG7メンバーの基本的な立場(表明された「一つの中国政策」を含む)に変更はない。我々は、両岸問題の平和的解決を促す」と表明。あらためて、「一つの中国」という文言を盛り込みました。
また「我々は、デカップリング又は内向き志向にはならない。同時に、我々は、経済的強靱性にはデリスキング及び多様化が必要であることを認識する」との文言を挟み、中国と分断する意志はないものの、経済安全保障に一石を投じる巧みな表現を用いました。
そこに繋がる部分で、個別声明にて「経済的強靭性及び経済安全保障に関するG7首脳声明」を追加した意義は大きい。声明では、中国を名指しこそしませんでしたが「経済的脆弱性及び経済的依存関係を悪用し、G7メンバーや世界中のパートナーの外交政策及び国内政策並びにその立場を損なうことを企図する経済的威圧の事案の憂慮すべき増加に直面している」と指摘。また「重要・新興技術に関するG7パートナー間の研究開発を深めるに当たり、我々が開発する最先端技術が、国際の平和及び安全を脅かす軍事力の増強のために利用されることを防止するために連携する共通の責任及び決意を確認する」と明確化しているだけに、中国を念頭にサプライチェーンを含めG7で関係を強化する姿勢が打ち出された格好です。
G7で経済安全保障の枠組み立ち上げ、日本にとって好機か
日本による英国への3兆円投資は、こうした経済安全保障への取り組みに向けた一歩と捉えられます。また、日経新聞によれば、2021年以降で半導体関連企業が表明した日本への投資額は計2兆円超えであり、今後もこうした流れが続いてもおかしくありません。直近でも理研とインテルが量子コンピューターやスパコン共同研究を発表、マイクロン・テクノロジーが広島の工場など最大5000億円投資する方針を表明していました。エマニュエル駐日大使が5月19日にマイクロンによる日本投資について中国による「威圧」に対処する上で先例になると言及していましたが、広島サミットで種が撒かれたG7間での経済安全保障の枠組みが、日本で花開く期待が高まります。