3連休の真ん中である2025年7月20日、第27回参議院議員通常選挙の投開票が行われました。与党である自民・公明両党での獲得議席は47議席となり、事前の予測通り過半数を確保することはできませんでした。
一方、野党では合計78議席を獲得。特に国民民主党が17議席、参政党が14議席を獲得するなど躍進しました。
元来、政治と株式相場は切っても切れない関係にあります。政局不安になると国がもともと定めていた政策などを進めにくくなるほか、新たな取り組みも実施しにくくなります。それらは経済活動にも影響するようになり、企業の業績に逆風となるケースがあります。
なにより政局不安になると、海外投資家が株を売却する傾向があります。日本取引所グループの示すデータによれば、2024年の日本市場(現物)の売買シェアは海外投資家が過半を占めます(同保有割合では国内投資家が過半を占める)。つまり海外投資家の売買動向が相場のセンチメントを左右することになるのです。
今回の参院選では与党苦戦が事前に伝わっていたこともあり、直後の株式相場への影響は限定的でした。3連休明けの7月22日の日経平均は終値で44円安の39774円(小数点以下省略)と小動きの水準です。ですが翌23日は一転、1396円高と前日比で大幅に上昇。上昇幅で上位10位に入るほどの目を見張る上げとなりました。
要因の一つは日米関税交渉の合意です。トランプ米大統領が自身のSNS上で日本に15%の関税を課すことで合意したと公表。それまで25%としていた数値から大幅に引き下げられたことで、これを好感した買いが優勢となりました。
二つ目の要因はより政治と密接に結びついたもので、一部メディアにより石破首相が8月にも退陣を表明するとの観測報道が流れたことです。前述したように自民党は参院選で目標とする過半数の議席を確保できませんでした。敗北と言ってよい結果であり、衆参両院で少数与党による難しいかじ取りを迫られることになります。
石破首相が続投するのであれば、今後も低い政権支持率が続き、支持者からの理解も得られない。そんな状態では次の選挙でも負ける可能性があります。そのため、新しい自民党総裁、そして首相を選出し、再出発しようと自民党が考えるのはむしろ自然なことであると言えるかもしれません。
そうした背景から新総裁、新首相を歓迎するムードとなり、23日の株式市場は観測報道を受けて一段高となりました。
ちなみに、過去に首相が退陣すると決まった際には、株価はどのような動きをしたのでしょうか。2024年8月14日、岸田首相が総裁選不出馬を決めた際には、同日の日経平均は前日比209円高の36442円でした。
その前、2021年9月3日に菅元首相が総裁選不出馬を決めた際には、前日比584円高となる29128円となっています。率にすると2%近い上昇となります。
さらにさかのぼって、2020年8月28日に安倍元首相が辞任を表明した際には、前日比326円安の22882円と下落しています。終値では1.5%安ほどでしたが、場中では2.5%安の22594円まで下げる場面も見られるなど、同氏の辞任を受けて、株式市場は大きく揺さぶられたことになります。
安倍さんといえば、アベノミクスでも知られる株価対策を推し進めたことにより株式市場での評価は高く、その影響が不安視されたということだと思います。
こうしてみると首相の進退が株価に大きく影響を与えるということがおわかりいただけるでしょう。同日は関税ニュースも伝わったことにより、1396円高が石破首相の退陣観測報道だけの影響とは言えませんが、株価を押し上げた要因となったことは確かだと思われます。
同日の取引時間終了後に、石破首相自身により退陣を否定するコメントも出ましたが、株式市場ではすでに退陣を半ば既定路線として織り込む動きが出始めています。石破首相が退陣となれば、次の自民党総裁が首相となる可能性が高く、候補として注目されている小泉農林水産相や高市議員などが進めている政策に関連した銘柄が23日には動意付く場面がありました。
まず、小泉農水相の方ですが、前回の自民党総裁選の時にも解雇規制の見直しや労働市場の活性化について声を挙げていました。そのため、リクルートホールディングス<6098.T>などの人材サービス関連が大きく上昇しました。
リクルート日足チャート
また、小泉農水相の地元神奈川にある百貨店のさいか屋<8254.T>も一時急騰。同百貨店は同氏の父親である小泉純一郎氏が首相だったころから、関連商品を販売するなど関連が深い企業として知られています。
さいか屋日足チャート
ライドシェアについても注目されており、ディー・エヌ・エー<2432.T>や大和自動車交通<9082.T>などが関連銘柄として市場からも注目されています。
一方、高市議員の方は宇宙開発関連の政策に注力していることが株式市場では広く認知されています。QPS研究所<5595.T>、アストロスケールホールディングス<186A.T>などは実際に買われる場面がありました。また、宇宙開発以外にもエネルギーの観点から核融合を開発推進の必要性を訴えており、関連として助川電気工業<7711.T>などが挙げられます。
アストロスケールホールディングス日足チャート
そのほか、両者に共通する性sカウとして防衛やサイバーセキュリティの推進があり、三菱重工業<7011.T>、IHI<7013.T>、川崎重工業<7012.T>といった防衛3銘柄や、トレンドマイクロ<4704.T>、FFRIセキュリティ<3692.T>などは、折に触れ注目されることでしょう。
FFRIセキュリティ日足チャート
今後の政局がどのように変化するか確定的なことは言えませんが、政治と株の関係を踏まえ、次にどんな株が注目されるか予想してみるのも楽しいと思います。