脱炭素社会の実現に向け重要性が高まる蓄電池

国内生産の税優遇措置を検討

8月11日付の日本経済新聞朝刊では、経済産業省が2024年度の税制改正で電気自動車(EV)向け蓄電池や半導体を念頭に生産量に応じた税優遇の創設を要望していると報じました。

国内で多く生産すれば法人税の支払いを減らすなど、税制面で生産を後押ししようとしています。

蓄電池や半導体は経済安全保障の強化や脱炭素につながる重要な製品として注目されています。


車載用蓄電池はEVなどの普及に伴い、市場が拡大しています。

日本の世界全体に占める市場シェアに関して、日本は技術的優位性から2015年時点で40%程度のシェアを獲得していましたが、市場の拡大に伴い、中国や韓国に抜かれ20%程度まで低下しています。


蓄電池の利用用途は幅広い

さらに蓄電池はEVのみならず、発電や産業、携帯電話などさまざまな用途で利用されています

商業施設・オフィスビル、工場の非常用電源として用いられているほか、データセンター・5G通信基地局のバックアップ電源としての需要も増加しています。


蓄電池はデジタル社会を支える重要な基盤であり、今後ますます市場拡大が見込まれています。

そのため、蓄電池を他国へ依存すると関係が悪化した場合、供給が途絶えてしまう可能性が懸念されます。

そうしたリスクを回避するために、今回蓄電池の国内生産を増やすための税優遇を創設する方針を示したとみられます。


既に経済産業省は自動車・蓄電池における目標として「グリーン成長政略」を策定しており、自動車において、2035年までに乗用車の新車販売における電化率100%を目標に据えています。

蓄電池では、大規模化・研究開発・蓄電ビジネス創造を支援し、2030年までできるだけ早期に生成能力の向上を目標に掲げており、シェアの拡大を図ろうとしています。

経済安全保障の強化を図る観点で税優遇の創設が決定すれば、蓄電池関連企業への恩恵が大きくなりそうです。


蓄電池関連企業とは

代表的な蓄電池関連企業といえば、ジーエス・ユアサ コーポレーション(6674)。車載用のみならず、鉄道車両、航空・宇宙分野など幅広い分野の蓄電池の開発・生産を行っています。


またパナソニックホールディングス(6752)では、家庭用・産業用の蓄電システムを提供しています。同社の「創蓄連携システム」は太陽光発電システムで発電した電力を効率的に蓄電池に蓄えることが可能となります。


同様にニチコン(6996)では、スーパーやコンビニから商業施設やオフィスビル、さらに工場など大規模施設まで幅広く蓄電システムを提供しています。


その他には、村田製作所(6981)ではオリビン型リン酸鉄リチウムイオン二次電池「FORTELION」を搭載した蓄電池モジュールを手掛けています。

同製品の特徴として、安全性能の高さや急速充電性能に加え、15年以上の長寿命が期待できるほか、用途に合わせて電圧や容量をカスタマイズすることができます。




再生可能エネルギーの活用にも不可欠

蓄電池はEVやデータセンターなどのバックアップ電源のみならず、再生エネルギーの活用にも欠かせません。

風力発電や太陽光発電では発電量の不安定さなど安定性の問題が指摘されていますが、電気を溜めることのできるという観点から蓄電池の役割は重要となります。


脱炭素社会並びにデジタル社会の実現に向けて、ますます蓄電池への注目度は高まっていきそうです

日本株情報部 アナリスト

角屋 昌範

2005年に国内証券会社へ入社後、投資情報部や調査部に在籍。投資情報部では、米国や香港株式市場見通しの作成など海外金融市場に関する調査業務に携わる。調査部では、ネット関連セクターを中心に国内個別企業のアナリストレポートを執筆した。 国内証券会社などを経て2019年に入社。主に先物市場見通しなど「デリバティブコンテンツ」を担当。 CFP DCプランナー

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