米株安は続くのか? 1987年との不気味な類似

米金利上昇を無視した米株高、1987年と酷似


米10年債利回りは10月3日、一時4.8%を超え2007年8月以来の高水準をつけました。その1週間前の9月26日、J.P.モルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)は「米FF金利7%、世界は備えていない」と懸念を表明。9月28日には、ヘッジファンド大手ブリッジウォーター・アソシエーツ創業者のレイ・ダリオ氏が「米国は債務危機に陥る」と警告を発し、米債を始め金融市場を身構えさせたものです。


5月からの米10年債利回りの上昇を無視し、7月27日に一時4,607.07と3月末以来の高値をつけたS&P500も、遂に屈しました。ダブルトップを付けた後は9月20日にネックラインを割り込み、下値模索の展開へ。10月3日には、一時4,216.45と5月末以来の水準に値を下げ、200日移動平均線の攻防に入っています。一方で、マグニフィセント・セブン(アップル、アルファベット、アマゾン、マイクロソフト、メタ、エヌビディア、テスラ)などの支えがない中小型株指数のラッセル2000に加え、ダウは200日移動平均線を割り込み、10月3日に年初来リターンはマイナスに反転しました。


足元の米金利上昇と米株相場を受けて、金融市場から不気味な類似点を指摘する声が上がっていますーー「足元の動きは、1987年の相場展開を彷彿させる」。1987年と言えば、10月19日にブラックマンデーが直撃した年にあたり、ブルームバーグもソシエテ・ジェネラルやインタラクティブ・ブローカーズ、ストラテガス・リサーチ・パートナーズなどの見解として伝えていました。特に、ストラテガスは当時の米10年債利回りの上昇ペースを足元に当てはめた場合、「11月初めまでに5%前後でピークに達することに等しい」と分析。米10年債利回りの一段の上昇を見込みます。


米金利上昇中に米株高となった事実以外に、1987年と現時点では、以下の類似点があります。


 

チャート:1987年と2023年のS&P500と米10年債利回り(白線、右軸)の推移、2023年は10月まで)


バイデン政権下での財政拡大、米債の需給不安を招く


バイデン政権下で成立した1.9兆ドルの追加経済対策を始め、22年8月に成立したCHIPS法やインフレ抑制法などの財政拡大路線は、中国やサウジアラビアの米債離れやFedの量的引き締めもあって、需給の不安をもたらし、米債相場を圧迫しています。加えてFedによる利上げもあって利払い負担が増大するなか、米国債のネットの発行高は8月末時点で約1.5兆ドルと、2022年の約1.2兆ドルを超えてきました。年末までには、金融危機後のレベルを抜き、3兆ドル超えになるとの試算もあります。


チャート:米国債のネット発行高は33兆ドルに増加 


米国債発行の増発もあって、米連邦政府債務残高は9月末時点で前期比8,350億ドル増の33.2兆ドル(法定債務上限31.4兆ドルは2025年1月まで凍結)に達しました。8,350億ドルは円換算すると約125兆円で、日本の2023年度の一般会計の総額114兆円を大きく上回る規模です。


チャート:前期比8,350億ドル増となった米連邦政府債務残高

 


200日移動平均線での攻防に入るS&P500、下値の目途は?


米金利の上昇がいつ終息するのかが注目されますが、ストラテガスが指摘するように米10年債利回り5%到達が一つの目途となりそうです。また、米9月雇用統計や米9月消費者物価指数(CPI)など米指標が鈍化すれば、買い戻しの呼び水となりえます。加えて、Fed高官の発言も注目。サンフランシスコ連銀総裁は米金利上昇につき「1回分の利上げに相当する」と述べ、シカゴ連銀総裁が「長期金利の上昇が失業率の急上昇や経済活動の急減速を引き起こすならば、FRBは調整を行うとした」と言及しました。Fed高官が利上げ打ち止めを強調しつつあり、高金利継続への懸念が薄れるならば、値ごろ感からの買い戻しが意識されます。


S&P500は、前述したように200日移動平均線の攻防に入っていますが、ここを下抜ければ次のターゲットは3月安値と5月高値の38.2%戻しにあたる4,110が意識されます。一段安を迎えるなら、心理的節目の4,000の後は、3月安値の3,800が視野に。果たして米金利上昇にブレーキが掛かり、米株安が止まるのか、まずは米9月雇用統計の結果が待たれます。


ストリート・インサイツ

金融記者やシンクタンクのアナリストとしての経験を生かし、政治経済を軸に米国動向をウォッチ。NHKや日経CNBCなどの TV 番組に出演歴があるほか、複数のメディアでコラムを執筆中。

ストリート・インサイツの別の記事を読む

人気ランキング

人気ランキングを見る

連載

連載を見る

話題のタグ

公式SNSでも最新情報をお届けしております