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第102回 ドル円、8月は円高アノマリー(水星逆行)

2025年の第2次トランプ米政権(2025年~2028年)でのドル円は、エリオット波動での「第4調整波動」による「三角保ち合い」を予想します。

現状のドル円は、2024年7月の高値161.95円を頭とする「ヘッド・アンド・ショルダー」を形成中であり、ネック・ライン(※140.25円~139.58円~4月:139.06円~5月138.98円)の下抜けにより完成します。

ドル円のエリオット波動分析では、第4調整波動のX波動を形成中だと思われます。

ヘッド・アンド・ショルダーが完成した場合、三角保ち合いの起点である127.23円付近までの続落が想定されます。

【戦術(2025年8月5日週)】

ドル売り:@148.00円&149.00円 ⇒ ストップロス@150.00円

 

1.2025年8月のリスクシナリオ

金融市場では、8月は市場参加者がバカンス気分で油断しているせいなのか、金融危機に襲われがちな季節としてトラウマになっています。

今年の8月は、2008年9月のリーマンショック、2020年2月のコロナショック、2024年8月の令和ブラックマンデーなどに符号した水星逆行(Mercurial retrograde)が予定されており、警戒感が高まっています。

すなわち、地政学リスクの激化(ウクライナ戦争や中東紛争)、8月21-23日のジャクソンホール会合を控えてトランプ米大統領が次期FRB議長を指名する可能性、習中国国家主席が8月27-30日に開催予定の党中央委員会第4回全体会議で引退する可能性などに要警戒となります。

・1日:米7月雇用統計ショック

・8日:クーグラーFRB理事辞任⇒ハト派のFRB理事

・11日:下院監視委員会でのマックスウェル受刑者の証言(エプスタインファイル)

・21-23日:ジャクソンホール会合(カンザスシティー連銀主催の年次シンポジウム)

・27-28日:中央委員会第4回全体会議

 

2.「8月の円高」というトラウマ

■ イラクのクウェート侵攻

1990年8月2日、イラクのフセイン政権は、クウェートに侵攻した。1991年1月17日、多国籍軍によるイラク空爆により湾岸戦争が勃発しました。

ドル円は、8月2日の高値151.60円から10月の123.70円まで下落しました。

■ アジア通貨危機

1997年7月、アジアの新興国諸国で一斉に通貨が暴落し、8月にかけてアジア全体が不況に陥った。ドル円は、5月の高値127.48円から、6月には110.61円まで下落していました。

■ ロシアショック

1998年8月17日、ロシア政府は、対外債務の90日間の支払い停止を宣言しました。

ドル円は、8月11日の高値147.64円から9月11日の128円台まで約20円下落しました。

■ パリバショック

2007年8月9日、仏銀行最大手のBNPパリバ銀行傘下のミューチュアルファンドが、サブプライムローンの証券化商品の混乱により解約を凍結されました。

ドル円は、8月9日の119円台から8月17日の111円台まで下落しました。

■米国債格下げ

2011年8月5日、米格付け機関スタンダード&プアーズが、アメリカの長期発行体格付けを『AAA』から『AA+』に格下げした。当時、米国議会は、米国債務上限の引き上げを巡る問題で紛糾しており、デフォルト(債務不履行)のリスクが警戒されていました。

ドル円は、80円前後から10月31日の変動相場制移行後の最安値75.32円まで下落しました。

■中国人民元切り下げ

2015年8月11日、中国人民銀行は、中国人民元の対ドル基準値を前日比1.9%切り下げ、その後12日、13日と3日間で約4.7%の中国人民元切り下げを断行しました。

ドル円は、125円台から月末の116円に向けて約9円下落しました。

■米中貿易・通貨安戦争の勃発

2019年8月1日、トランプ大統領が対中制裁関税第4弾を9月1日から発動する、と表明し、中国商務省は、国営企業に対して米国産農産物の輸入停止を要請し、報復関税措置の発動を表明したことで、米中貿易戦争が再燃しました。さらに、中国人民銀行が、ドル・人民元が1ドル=7元以上に上昇することを黙認したことで、人民元安誘導という「為替操作」の思惑が強まり、米財務省は中国を「為替操作国」に認定し、米中通貨安戦争が勃発した。ドル円は109.32円から104.46円まで下落しました。

■令和のブラックマンデー

2024年8月5日、日経平均株価は4451.28円(▲12.40%)下落して、1987年10月20日の「ブラックマンデー」の下げ幅3836.48円(▲14.9%)を上回り、「令和のブラックマンデー」となった。NYダウは、1033.99ドル(▲2.60%)下落しました。

ドル円は、7月3日に到達した1986年12月以来の高値161.95円から、141.70円まで約20.25円下落しました。

この連載の一覧
第102回 ドル円、8月は円高アノマリー(水星逆行)
第101回 ドル円、消費減税の円高に備えよ
第100回 ドル円、「孕み線」と「ヘッド・フェイク」で反落か
第99回 ポンドドル、MACD(移動平均収束拡散法)が売りシグナル
第98回 ユーロドル:新値八手十手は酒田の骨子
第97回 加ドル円:「ヘッド・アンド・ショルダー」の右肩を形成中
第96回 ドル円、三角保ち合い(第4調整波動)のX波動を形成中か
第95回 ドル/スイスフラン:下落途上のヘッド・アンド・ショルダー
第94回 ドルインデックス、中期下落抵抗線が上値を抑制
第93回 豪ドル円、「ヘッド・アンド・ショルダー」の右肩を形成中
第92回 ドルインデックス、「ヘッド・アンド・ショルダー」と「ヘッド・フェイク」
第91回 ドル円、第4調整波動のX波動を形成中か
第90回 ポンドドル、「ダブル・トップ」形成中
第89回 ドル円、H&Sのネック・ライン(139.06円⇒138.98円)
第88回 ドル円、H&Sのネック・ライン割れで追撃売り
第87回 ドル円、ヘッド・アンド・ショルダーのネック・ラインに接近中
第86回 第2次トランプ米政権=第4波動
第85回 豪ドル円、「ヘッド・アンド・ショルダー」のネック・ラインへ接近中
第84回 ユーロ円「ヘッド・アンド・ショルダー」の三角保ち合い
第83回 ドルインデックス、「ヘッド・アンド・ショルダー」完成で下落中
第82回 ユーロドル:ゲームチェンジャーなのか?
第81回 ユーロ円:「ヘッド・アンド・ショルダー」完成間近
第80回 NZドル円:ヘッド・アンド・ショルダーを形成中
第79回 「プラザ合意II」=「トランプ合意(Trump Accord)」の足音
第78回 加ドル円:「ヘッド・アンド・ショルダー」の右肩を形成中
第77回 豪ドル円、「ヘッド・アンド・ショルダー」のネック・ラインへ接近中
第76回 ユーロ円:下落途上の「ヘッド・アンド・ショルダー」?
第75回 ポンドドル、「ダブル・トップ」形成中
第74回 ユーロドル:「ダブル・トップ」完成で目標値0.9682ドル
第73回 2025年のドル円相場見通し
第72回 ポンドドル、中期「ヘッド・アンド・ショルダー」形成中
第71回 ドル円、上値抵抗線の手前で戻り売りスタンス
第70回 加ドル円:売りシグナル点灯中
第69回 ドル円「ヘッド・アンド・ショルダー」の右肩を形成中か
第68回 ユーロドル「ダブル・トップ」完成で目標値0.9682ドル点灯
第66回 ドル円、「トランプ・トレード」対「ヘッド・アンド・ショルダー」
第65回 ポンドドル、「ヘッド・アンド・ショルダー」完成
第64回 ドル円、第25太陽黒点極大期で高値反転か
第63回 NZドル/ドル:売りシグナル点灯中
第62回 ポンドドル、「ヘッド・アンド・ショルダー」を形成中
第61回 ユーロドル:「ダブル・トップ」完成で目標値1.0790ドルが点灯
第60回 ドル円、イシバノミクスによる「ヘッド&ショルダー」完成か
第59回 ドル円、「ヘッド・アンド・ショルダー」未完成
第58回 ドル円、全値押し(127.23円)の可能性
第57回 NZドル円:売りシグナル点灯中
第56回 豪ドル/NZドル:売りシグナル点灯中
第55回 ユーロドル:「ダブル・トップ」形成と見込んで売り
第54回 ドル円、中期抵抗線を抵抗に戻り売り
第53回 ドル円、一目・転換線を抵抗に売り
第52回 ドル円、中期支持線を下抜け
第51回 ポンドドル、「ヘッド・フェイク」が下落トレンド示唆
第50回 NZドル円:売りシグナル点灯中
第49回 ユーロ円:半値戻しは全値戻し
第48回 ドル円、弱気の乖離(ベアリッシュ・ダイバージェンス)
第47回 ドル円、175円か145円か?
第46回 ユーロドル:ストキャスティックで売りシグナル
第45回 ユーロ/スイスフラン:中期支持線を下抜け
第44回 ユーロドル:MACDデッドクロスで売りシグナル
第43回 ポンドドル、「三角保ち合い」上辺付近で「H&S」を形成中
第42回 NZドル/ドル:三役好転 対 弱気の乖離
第41回 ドル円「半値戻しは全値戻し」
第40回 ポンドドル、「ヘッド・アンド・ショルダー」のネック・ラインへ接近中
第39回 ドル円、斜行三角形とドル高8年サイクル
第38回 ドル/スイスフラン:「ダブル・ボトム」か「逆ヘッド・アンド・ショルダー」か
第37回 ポンド円:二本立ち二羽烏
第36回 ドル円:黒田シーリングと植田シーリング
第35回 ドル円「トリプル・トップ」か否か?(2)
第34回 ドル円「トリプル・トップ」か否か?
第33回 ポンドドル、「三角保ち合い」のAPEXへ接近中
理外の理:ユーロドルの「ヘッド・アンド・ショルダー」(3)
第31回 ドル円、ヘッド・フェイク待ち?
第30回 ドル円「ダブル・トップ」⇒「トリプル・トップ」??
第29回 ユーロドルの「ヘッド・アンド・ショルダー」(3)
第28回 ドル円「ヘッド・アンド・ショルダー」
第27回 ポンドドル、ヘッド・アンド・ショルダーのネック・ラインに要注目
第26回 ユーロドルの「ヘッド・アンド・ショルダー」(2)
第25回 半値戻しは全値戻し(2)
第24回 半値戻しは全値戻し
第23回 2024年ドル円相場見通し
第22回 ポンドドル、MACDでの売りシグナル
第21回 ドル高・円安8年サイクル(2)
第20回 ドル円の「斜行三角形」目標値は137.25円
第18回 ドル円の「ダブル・トップ」目標値は146.51円
第17回 豪ドル円、上昇第3波動を形成中か
第16回 ドル円V計算値=152.70円
第15回 ドル高・円安8年サイクル
第14回 ユーロドルの「ヘッド・アンド・ショルダー」
第13回 ドル円の「斜行三角形」と「弱気の乖離」
第12回 ドル/スイスフラン「ダブル・トップ」完成
第11回 ドル円の「弱気の乖離(ベアリッシュ・ダイバージェンス)」
第10回 NZドル円、上昇第3波動を形成中か
第9回 ポンドドルの「ヘッド・アンド・ショルダー」
第8回 ユーロ円の弱気の乖離(ベアリッシュ・ダイバージェンス)
第7回 縦の糸「価格」と横の糸「時間」の交差:9月12日&148.77円
第6回 ヘッド・アンド・ショルダー(2)
第5回 ヘッド・アンド・ショルダー
第4回 弱気の乖離(ベアリッシュ・ダイバージェンス)
第3回 8月15日は米国債償還・利払いの円買いの日柄
第2回 8月は円高アノマリー
第1回 ドル円145円は「三田(神田・植田・岸田)関所」か

為替情報部 アナリスト

山下 政比呂

証券会社で株式・債券の営業、米系銀行で為替ディーラー業務(スポット、スワップ、オプション)に従事。プライベートバンクでは、為替のアドバイサーとして円資産からドル建て資産への分散投資を推奨してきたドル高・円安論者。 「酒田罫線法」「エリオット波動分析」「ギャン理論」などのテクニカル分析をベースに、ファンダメンタルズ分析との整合性を図り、相場観を構築。 ウォール街の格言「ゴルフと相場は、どちらもタイミングが全て」に出合い、ゴルフと相場の共通項を模索中。 2016年にDZHフィナンシャルリサーチに入社。

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