この記事では、トルコリラ円の今後の見通しについて、テクニカル・ファンダメンタルズ両面から詳しく解説します。特に、過去最安値を更新した背景や今後の下値リスク、取引の参考になる情報を探しているFX投資家の方は、ぜひ最後までお読みください。
2025年現在のトルコリラ円の相場 売りの勢い弱まるが戻りも鈍い、先月には史上最安値更新
2025年に入ってからのトルコリラ円は、厳しい下落トレンドが継続。5月には売り圧力こそ弱まりましたが、上昇する力も乏しく、3.6円台でのレンジ相場へと移行しました。直近では7月24日に一時3.50円と史上最安値を更新しており、依然として下値リスクは警戒すべき状況です。
今後のトルコリラ円の相場焦点 鍵を握る3つの要因
トルコリラ円の為替相場は、主に以下の3つの要因によって変動します。
1. 日米の金融政策の動向 先月の日米金融政策の結果から、外国為替市場は円安・ドル高方向へ傾きつつあります。ドル円の上昇がクロス円全般の支えとなり、トルコリラ円の下げ渋りにも寄与しています。今後も日米の金融政策に注目が集まるほか、8月21-23日には各国の中銀総裁が集まる米ジャクソンホール会議が開催され、重要な発言が出る可能性もあるため要チェックです。
2. トルコ中央銀行は昨年12月に最初の利下げを実施。一時的に中断していた時期もありましたが、直近の会合(7月2日)では緩和路線を再開し、43.00%まで金利を引き下げました。トルコの消費者物価指数(CPI)が前年比で33%台まで鈍化するなか、次回以降も漸進的な利下げが続くと思われます。トルコリラ相場へ与える影響に注目です。
3. トルコリラとその他主要通貨での大きな違いに政治情勢を考慮する必要があるという点があります。米国でもトランプ米大統領の言動に為替相場が振り回される場面は度々見られていますが、政治が為替相場を振り回すという面ではトルコの方が残念ながら上です。
エルドアン大統領の独裁政権が長く続くなか、2020年代に入ってからは自身の意に沿わない中銀メンバーを総裁も含めて次々に解任、直近では最大のライバルとされていたイスタンブールのイマムオール市長を逮捕。この逮捕報道が伝わった今年3月19日にはトルコリラが急落する場面も見られました。
今後もトルコリラの取引を行う際には、こうした政治的な事件で急激な価格変動が起きる可能性を考慮しておく必要があります。
トルコリラ円相場の週足分析 明確な下落トレンドが継続、トレンド転換のハードルは高い
下図のチャートはトルコリラ円(try/jpy)の週足チャートになります。現状は2021年に起きた急落が一巡した後、2022年4月高値を起点とした下落トレンド(チャート上の青色実線)にあります。さらに細かく見ていくと2022年来の下落トレンド内で、より穏やかな下落トレンド(チャート上の青色点線)を2023年8月から形成しているようです。
ただ、チャート下部に追加した「DMI」で確認すると、-DI>+DI(下落トレンド)を示唆しており、トレンドの強さを示すADXも非常に高い水準での推移が継続。「DMI」では下落トレンドの転換の兆しすら見えていない状況です。
「DMI」の転換ももちろんですが、現状の下落トレンドから抜け出すには前述した2種類の下降トレンドラインをブレイクすることが必須要件。さらに言えば昨年後半につけた直近高値(4.50-4.55円のゾーン、チャート上の四角で囲った分)も上抜ける必要があり、現状ではかなり高いハードルと言わざるを得ません。
トルコリラ円相場の日足分析 短期目線はレンジ相場だが、下値リスクには警戒
次に日足で直近の状況を確認してみましょう。(下図のチャート)。
こちらでは「DMI」は+DIと-DIが頻繁に交差しており、方向感を欠いた状況のようです。トレンドの強さを示すADXも低下を続けており、上値の重さこそ感じられますが、直近2-3カ月に限ればレンジ相場(チャート上の黄色実線および黄色点線)と見ることもできそうです。
とはいえ、長期の週足分析で明確な下落トレンドが継続している以上、短期的なレンジ相場であっても、やはり下値リスクをより警戒すべきです。直近で史上最安値を更新していることから明確な下値目標は確認できませんが、5月高値(3.85円)-7月安値(3.50円)のレンジ分の切り下げは想定しておきましょう。史上最安値の3.50円を今後再び下抜けた場合は、3.15円程度までの下値余地拡大を考慮しておく必要があります。
今後の取引材料・変動要因をチェック 日・トルコのインフレ動向を確認しておく必要
最後に今後1カ月間の経済指標や重要イベントも確認しておきます。期間内には予定されていませんが、日銀は9月18-19日、トルコ中銀は9月11日に金融政策の公表が控えています。
トルコでは今後追加緩和、日銀は追加引き締め方向にありますので、両国のインフレ動向はしっかりと確認しておきましょう。
また、例年各国の中銀関係者が集まり、市場の注目を集める米ジャクソンホール会議が今年も8月21-23日の日程で開催されるため、日本やトルコの中銀総裁などが出席した場合はこちらにも注意が必要です。
その他のイベントは以下の通りとなります。
今後1カ月の重要イベント
・8月21-23日 米国 ジャクソンホール会議
・8月22日 日本 7月全国消費者物価指数(CPI)
・9月3日 トルコ 8月CPI