BTC、久しぶりのリスクオフ
代表的な暗号資産のビットコイン(BTC)は2025年8月16日24時過ぎ、対円では1693万円付近と前週(7日前)比で約4%低い水準で取引されています。BTCドルは11万4900ドル前後での値動きです。
BTC相場は8月に入ってすぐ、久しぶりにリスクオフ(回避)の売りにさらされました。きっかけは、1日に発表された米雇用データです。米労働省が発表した7月米雇用統計では、非農業部門雇用者数が前月比7.3万人増と予想を3万人ほど下回りました。
さらに市場参加者を驚かせたのは、過去2カ月分が計26万人弱も下方修正されたことでした。毎月発表される雇用統計の強弱に対して、市場はその度に反応しています。重要な取引材料がこれほど大幅に修正されるとは、統計自体の意味も問われると言えるでしょう。
※リスクオフ(回避):投資家が市場の不安要因(地政学リスク、景気後退、金融危機など)を警戒し、リスクの高い資産から安全資産へ資金を移す動き。または、そうした市場の雰囲気(地合い)を指す。
BTC円は7月末に1790万円近く上昇したところから、8月最初の週末には1652万円台まで下落。BTCドルが11万9000ドル付近で頭を押さえられ、11万2000ドル割れまで売り込まれる場面がありました。
※Trading View
大量売却でも支えられた水準を…
前回コラム・第156回「ビットコイン、昔の人が売ったけど…」で取り上げた大量売却でも、BTCドルは11万4000ドルを下抜けることはできませんでした。しかし、米景気減速の懸念が高まると、慌ててロングを投げたという感じです。
※ロングを投げる:価格上昇を狙って買ったポジションに見切りをつけて手放すこと。
「ETF拡大の中でビットコイン供給量の40%を米国が掌握…」ビットタイムズ
この記事で取り上げられている暗号資産アナリストのX投稿を信用するとすれば、米国全体では現在、780万BTCを保有していることになります。
※Fred Krueger氏のX投稿より
国別(政府や企業、ETF、カストディーなど)で米国は、2位インドの100万BTCを大きく上回っています。現在、供給されているビットコインは約1990万BTCとされ、そうなると米国保有量は全体の4割弱にも達しています。 そうなるとやはり、米国の経済状況には敏感にならざるを得ないということでしょう。
※カストディー:投資家に代わり有価証券(株式・債券など)を安全に保管・管理し、配当金や利息の受け取り、決済業務、議決権の行使などを代行する金融サービス
※Trading Viewより
8月はイマイチな月?
7月のビットコインは対円では1748万円台、対ドルでは11万5700ドル台で大引けしました。月の終値としては、どちらも最高値を更新しています。
暗号資産分析サイトcoinglassによれば、対ドルでBTCが月間プラスで終えたのは4カ月連続でした。1月に上昇スタートした後、2月と3月は失速。トランプ関税による先行き不透明感が、重しとなりました。もっともその後は、暗号資産市場に投資家の資金が向かい続けています。
※coinglass より
ただし、ここ数年を振り返ると8月は要注意かもしれません。2022年から24年まで3年連続で月間マイナスで終えているからです。2017年8月の急騰は目立ちますが、ビットコイン史上2回目の半減期が起きた2016年から振り返っても、8月はさえない年が多いようです。
※半減期:ビットコイン唯一の供給手段は、マイニングの報酬。1ブロック生成(1回のマイニング)に対する報酬が半分となり、供給を抑制するのが半減期。2012年、2016年、2020年、2024年に起きている。ビットコイン初期には50BTCだった報酬は、現在3.125BTC。
BTC、他を圧倒?!
「ビットコイン、2年間最強資産の座を維持…」クリプトタイムズ
↑暗号資産のマクロ戦略アナリスト@ecoinometricsの投稿を引用した記事です。ビットコインは下げたところは拾うべきとの見方は根強いようです。リスクセンチメントを背景に売られた場合は、パニックに陥る必要はないとの意見です。
Xに投稿されたグラフは、ビットコインや金(ゴールド)、主要な米株指数や商品の12カ月リターンを表しています。ビットコインは80%の上昇率を示し、他の金融資産を圧倒しています。また投稿記事では、過去2年間、金融市場をけん引しているとも述べられています。
ところで7月末に見かけたニュースでは、こちらが気になりました。
「JPモルガン、コインベースと提携し…」コインテレグラフ
米国の大手金融機関JPモルガン・チェースは先月末、暗号資産取引所コインベースと提携を発表しました。記事によれば、チェース・クレジットカードの保有者がコインベースで暗号資産を購入できるようになるというのです。
金融市場では「暗号資産を無視できない」というよりも、今後は「暗号資産の重要度が一層高まる」ことになりそうです。