雨の日に利用開始する日本版ライドシェアと「投資家の動くべきタイミング」

2024年4月から既存のタクシー事業者に登録したうえで、一定の条件下で自家用車をタクシーとして活用する「日本版ライドシェア」が開始されました。タクシーのような送客事業に自家用車を使うことは従来の日本においては「白タク」と呼ばれ、規制下だったことを考えれば著しい緩和といえます。一方でアメリカや東南アジアなどライドシェアの完全自由化国でサービスを利用した人は、日本版ライドシェアにはまだ中途半端な印象があります。


世界におけるライドシェアは2種類

日本版ライドシェアの前に、世界の醸成を見ていきましょう。世界におけるライドシェアの形は2種類です。


TNC型

Uber社のような配車プラットフォームが運用します。国は関与しないか、登録など最低限の要件のみを担います。いわばライドシェアの完全自由型ですが、導入国は意外に多くは無く、アメリカや中国、東南アジアなどで導入されています。


PHV型

一方のPHV型は、個人タクシーの派生形のような形です。配車プラットフォームが運営することはTNC型と変わりませんが、各国の規制に対応したライセンスの取得や登録など、一定の要件を満たさなければなりません。ドイツやイギリスなどが導入しています。世界におけるライドシェアと聞くとTNC型を想定しますが、実際に導入しているのはそれほど多くはなく、主流はこちらのPHV型といえるでしょう。


日本版ライドシェアと雨天時の対応

日本においても都市部の深夜や過疎化の進む地方において、ライドシェアの導入の声は数年前から高まっていました。折衝のすえ、2024年4月から開始されたのが日本版ライドシェアです。


日本版ライドシェアは、許可を受けたタクシー事業者が一般事業者を管理し、「タクシーが不足している地域や時期に限定」したうえで運送サービスを提供します。正式名称は日本版ライドシェアではなく、「自家用車活用事業」です。

2024年7月から雨天時に拡大


4月に開始されたライドシェアは、段階的に拡大する予定です。2024年7月からは、降水量の予報が1時間に5ミリ以上となった時間帯と、その前後1時間も運行できるようになります。雨の日はタクシー不足が深刻であるための措置です。



日本における完全自由化はあるのか

2024年6月30日、テレビ番組に出演した自民党の茂木幹事長は、ライドシェアに関して「日本版なんとかというのはグローバルの時代におかしい」と言及、完全自由化の可能性を示唆しました。一方で5月に国と民間事業者の協議が行われます。IT企業などタクシー事業者以外の参入を認める全面解禁の可否や、解禁となる場合に必要となる法制度の検討を進めるという方針に政府は合意しました。とはいえ、これらの取り組みに期限は決めず、見方によっては事実上の先送りともいえます。


賛成派と反対派の意見

日本国内において、ライドシェアの全面解禁には何がハードルとなっているのでしょうか。


ライドシェア反対派の意見は、主に以下の3点に集約されます。

〇現在のタクシー事業者や、タクシードライバーの生活が圧迫される

〇乱立はタクシーサービスの品質を低下させる

〇整備不良の車両などで、事故が増えないか不安視される


一方、同様にライドシェア賛成派の意見としては、このようなものです。

〇参入各社の競争による、サービス品質の向上

〇社会におけるシェアリングエコノミーの浸透

〇スキマバイトが注目されているので、タクシーにも広げるべき


現在の立場によって、賛成派と反対派がいることは理解できます。何が社会インフラとして必要なものかを協議しながら、導入は進んでいくことでしょう。


ライドシェアにおける株価上昇ポイント

日本版ライドシェアの撤廃(もしくはタクシー業者以外の新規参入解禁)はもとより、タクシーアプリビジネスの実績があるDeNAなどのIT会社や、既にタクシー事業者として実績がありながらアプリサービスを提供する日本交通に株価上昇の期待が寄せられています。


またタクシー無線機やタクシーに活用されている車両にも期待感があります。既に全面解禁の議論は開始しているので、日経新聞あたりで全面解禁の道筋が報じられるあたりまでが、関連銘柄購入のチャンスタイムと考えられそうです。


ライドシェア全面解禁を見通した動きもあります。「サステナブルな地域交通の実現」を目指したnewmoは2024年7月4日、大阪の老舗タクシー会社「未来都」と経営権を取得しました。現在の日本型ライドシェアはいまだタクシー事業者であることを前提としており、既存事業者を経営統合したうえで新たな仕組みを仕掛けた方が成功率が高いと判断したことが伺えます。


どのぐらいのスピードで話が進んでいくか不透明な余地はありますが、2024年における印象的な動きであることは間違いありません。個人投資家としては、どこで買いの判断をするか、腕が試されるところでしょう。

独立型ファイナンシャルプランナー

工藤 崇

株式会社FP-MYS 代表取締役 1982年北海道生まれ。相続×Fintechサービス「レタプラ」開発・運営。2022年夏より金融教育のプロダクト提供。上場企業の多数の執筆・セミナー講師の実績を有する独立型ファイナンシャルプランナー(FP)。

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