特定の銘柄の値動きを1カ月間追いかけてみる「あの銘柄を買ってみた!」
今回は2024年9月に取り上げたセブン&アイ・ホールディングスの値動きを振り返ります。
注目度の高い状態が続き株価も上昇継続
10月11日の終値は2292.0円でした。9月11日の終値は2120.0円でしたので、値動きを見た1カ月では172円の上昇となりました。21万2000円が22万9200円となり、172円×100株で1万7200円の上昇(手数料・税金は考慮せず)、上昇率は8.1%となりました。
市場の関心は業績よりも買収動向
それでは、この間の値動きを見ていきましょう。
カナダのコンビニ大手アリマンタシォン・クシュタール社から買収提案を受けたことが伝わり、8月に大きく上昇したセブン&アイの株価は、9月以降も高値圏を維持しました。「何か新しいことが出てくるかもしれない」との期待から、売りが出づらい状態が続きました。実際、この話が出てからセブン&アイに関するニュースが多くなっています。
買ってみたの回では、2月につけた2244.5円に接近してきたことに触れましたが、9月12日には2275円まで上昇してこの水準を上回っています。
10月9日には大きな動きが出てきました。一部メディアでクシュタール社が買収価格を引き上げるとの観測が報じられ、これを材料に一時2492.5円まで上昇。2500円に接近しました。
10月10日が上期決算の発表日でしたが、この日は正式発表を前に、日本経済新聞から「上期の連結営業利益が前年同期比で2割強減ったとみられる」との観測が出ています。しかも、海外のコンビニが苦戦しているという内容でした。前の日に大きく上昇していることを踏まえると、一転大幅安となってもおかしくありません。
しかし、10日は厳しい決算が出てくることが予想される中、10円安の2325円と小幅な下落にとどまりました。実際の決算を受けた11日も33円安(2292円)と下落しましたが、売り気配で始まった後は下げ幅を縮めています。足元の業績よりも買収の成否に関する関心が高いことがうかがえます。
コンビニ以外の事業の分離を発表
10月10日にセブン&アイは、グループの食品スーパーマーケット事業や専門店・その他事業などを統括する中間持ち株会社を設立することを発表しました。セブン&アイはコンビニの「セブン-イレブン」のほか、スーパーの「イトーヨーカ堂」「ヨークベニマル」、専門店の「赤ちゃん本舗」「ロフト」外食の「デニーズ」などを抱えています。「セブン-イレブン」以外の事業がこの中間持ち株会社に集約されるとのことです。
コンビニ事業とそれ以外の住み分けを明確にすることで、企業価値を高める狙いがあるとみられています。
変化に対する期待が高いうちは株価も安泰か
値動きを見た期間の株価は上昇しました。クシュタール社が買収に強い意向を示しており、かつ、セブン&アイ側も対抗して企業変革に踏み切っていますので、こういった状態が続いているうちは、株価も上昇が続きやすいと考えられます。
セブン&アイは日本を代表する小売グループです。買収額が引き上げられたからといって簡単に首を縦に振るとは考えづらく、その分、クシュタール、セブン&アイの双方から、新たな材料が出てくることに対する期待が高まります。
一方、株価を見る上でのリスクとしては、買収提案がご破算になることが挙げられます。現状ではすぐにそういった状況になる可能性が高いわけではありません。しかし、セブン&アイが買収阻止策を矢継ぎ早に出してくる、クシュタール社の業績が大きく悪化して買収どころではなくなる、クシュタール社の経営陣が刷新されて新しい経営陣が買収を断念する、セブン&アイの不祥事が出てきてクシュタール側の関心が低下する、世界的に大恐慌が発生する、などなど、現状の前提が大きく変わることはあり得ます。
なお、セブン&アイの株価が大きく上昇することで買収に対するハードルが上がるケースでは、クシュタール社が買収を断念したとしても、株価に対するネガティブな影響は限定的と考えられます。今のセブン&アイには「株価を意識した経営」が期待されています。クシュタール社のような外部からのプレッシャーも受けながら、その中で多くの投資家を納得させるだけのビジョンや実績を示すことができれば、企業の変化に対する期待が高まります。セブン&アイが「変化し続ける企業」に飛躍できるかどうかが、今後の株価を見る上では重要となってきます。