日本経済新聞電子版は17日、家電量販店大手のノジマが、販売員などをはじめとした従業員の約9割を対象に、平均7.4%の賃上げを実施すると報じました。
記事によれば、まず2025年1月に全社員を対象に2%のベースアップ(ベア)を実施し、4月には店舗や倉庫で働く社員向けに実質的に基本給の加算となる最大月額2万5000円の現場手当を新設するとしています。2025年春入社予定の約300人については、当初は全員がまず店舗に配属されるため、基本給27万5000円に、現場手当の2万5000円が加算され、30万円となるという仕組みのようです。
初任給から30万円というのはインパクトがありますね。みなし残業代込みではなく、残業代を含まずに30万円というのもわかりやすいです。
東京労働局が公表している「令和5年3月 新規学校卒業者の求人初任給調査結果」によれば、大卒の初任給は業種によってばらつきもありまますが、高いところで金融業、保険業の23万円。安いところでは医療、福祉が20万2900円となっています。ノジマのような小売業では、21万3000円が平均的な水準となっています。
比べると30万円の額の大きさがより際立ちます。ちなみに初任給で30万円を超える企業というと、第一生命HDや東京エレクトロン、ファーストリテイリングなどがあげられます。いずれも押しも押されぬ大企業ばかりです。
家電業界で競合大手となるとヤマダホールディングスですが、そちらは23万円ほどでノジマとは大きな差があります。最高水準といえるほどに初任給を引き上げるのは、それだけ人材獲得競争が激しくなっていることを示していると言えるでしょう。
有価証券報告書よりDZHFR作成
さて、そんなノジマですが、会社全体の平均給与はどうなっているでしょうか。有価証券報告書によれば、同社の2024年3月期の平均年間給与は502万円、2023年3月期は同495万円、2022年3月期は同469万円、2021年3月期は同453万円、2020年3月期は同444万円となってます。
グラフをみても、期を重ねるごとに平均年収が上がっていることがわかります。給与とは異なりますが、2022年3月期から2023年3月期にかけて一気に従業員数が増え、その後24.3期にやや減少しているのは携帯電話ショップ運営のコネクシオを買収した影響があったのでしょう。
ちなみにキャリアショップ運営事業を手がけているのは連結会社のため、上記グラフに記載されている従業員数には含まれていません、人員整理というよりは、あくまで同社の運営部門のなかで組織再編などの変化があったためと思われます。
2025年の春闘については、10月16日に連合が基本給を一律に上げるベースアップ(ベア)と定期昇給(定昇)を合わせた賃上げ目標について「5%以上」とする方針を固めたと各メディアで報じられました。そのなかで、賃金制度が整っていない中小企業では、大手との格差を縮めるため全体の目標に1%上乗せし、6%以上の賃上げを目指すことを春闘方針の「基本構想」案に盛りこみ、11月28日に開催する中央委員会で正式決定する見通しとされています。
25年春闘では、他社に先駆けてサントリーホールディングスが早々にベアを含む7%程度の賃上げを目指すと表明していますが、それに続く動きはまだ本格化しているとは言えません。そんななかで出てきたノジマの話は、今後の賃上げの流れを方向づけるインパクトをもった内容と言えるかもしれません。