「英利下げ観測」の強まりでポンド売りが進んでいます。インフレ再加速への懸念もありますが、足もとの物価の落ち着きがポンドをさらに重くしました。インフレ指標などを受けた「英利下げ観測」の強弱に振らされる状況が続きそうで。
BOE総裁のハト派発言でポンド売り加速
10月3日、イギリスの中央銀行であるイングランド銀行(BOE)のベイリー総裁は英ガーディアン紙のインタビューでインフレ圧力が懸念していたほど長期化していないことに触れ、インフレ好転が続けば中銀は利下げに「もう少し積極的」になる可能性があると述べました。同総裁のハト派(金融緩和派)発言により、次回11月7日に金融政策発表を控えるBOEの利下げへ前向きな姿勢が意識され、ポンドは対ドルで1.3250ドル付近から、まず1.31ドル割れまで急落しました(図表1)。
このところ米連邦準備理事会(FRB)の大幅利下げ観測が後退していたことなどから、対ドルで上値が重くなっていたポンドが、前日のNYタイムにいったん下げ渋っていた1.32ドル前半を下抜けたことによるテクニカル要因でのポンド売り加速もあったようです。しかし、下げ渋り場面を挟みつつもその後、波状的に下落が進んでいる動きからすると、「英利下げ観測」を背景としたポンド売りに根強さが感じされます。
ポンドドルは、BOEが8月に約4年5カ月ぶりの利下げへ動き始めたなかにおいても、FRBの利下げへの動きもあって9月24日に2022年2月以来の水準1.34ドル台まで戻していました。(図表2)。しかし英利下げへの意識が強まり始めたことから、調整余地が感じられる状態のなか下落の動きがしばらく続くことになりそうです。
CPI予想を下回りポンドは対ドルで1.3ドル割れ
加えて16日発表の9月英消費者物価指数(CPI)が予想を下回ると、英中銀(BOE)が利下げをより進めやすくなるとの見方が強まり、英長期金利の低下とともにポンド売りが加速しました。同CPIは前年比で予想の+1.9%を下回る+1.7%、コア指数も予想の+3.4%より弱い+3.2%となりました。
ポンドドルは目先の下値の節目だった9月11日安値1.3002ドル下抜け、8月20日以来の1.3ドル割れまで下落しました。今後「英利下げ観測」の流れを追って下落の進行状況を推測する展開が続くでしょうか。
足もとで英インフレ圧力の落ち着きが意識し始められてきた状況もあり、市場が予想しているとおり11月は利下げを行うと考えられます。一方で今後数カ月のインフレ再加速への懸念もあり、12月会合では利下げを見送るではないかとされています。
BOEはいったん落ち着きを見せているエネルギー価格の上昇が再び強まり、インフレを再度加速させると予想しています。今週のCPIでポンドが急落したように、インフレ指標の強弱に一喜一憂するるなど、惑わされ過ぎてはいけないながらも、単月の指標の振れで荒っぽい動きになりやすい点に留意して臨むべきでしょう。