2024年9月12日、事実上新しい日本のリーダーを決める自民党総裁選が告示されました。そのなかの有力候補の一人は1981(昭和56)年生まれであり、2024年現在43歳です。当選して首相指名を受けると史上最年少の総理大臣になります。
現在1位が初代総理の伊藤博文で44歳2カ月の就任であるため、長い憲政史上のなかで今回の若返りがいかに異質なものか理解できるでしょう。今回の記事は敢えて「候補独自の特徴」から距離を置き、世代論を論じることにします。なお蛇足ですが、筆者も1982(昭和57)年生まれのため、有力候補の1歳下です。
アメリカでは「Y世代」に該当
まず日本人の好きな「〇〇年生まれは△△世代」論です。今回の主役の含まれる1980年から1995年は、Y世代(ミレニアム世代)に該当します。枠にとらわれない個人主義の価値観を持つ一方で、保守的な価値観をも持ち合わせています。背景としてはバブル崩壊や就職氷河期など、経済的に不安定な環境を経験したためといわれています。
Y世代はアメリカ発の考え方で、日本ではカッコ内のミレニアム(ミレニアル)世代という言葉の方が浸透しています。ただ当事者の感覚としては、ミレニアム世代はもう少し年下ではないかというのが率直な感想です。筆者が学生だったときは、PHS(ピッチ)に新時代を感じた世代であり、自分より年下の方々がデジタルデバイスを使いこなしている様には尊敬の念が浮かびます。なお、このY世代の次が、一般名称としても定着したZ世代(1996年~)です。
保守的な価値観とは?
気になるのは定義のなかにある保守的という言葉です。従来の保守という言葉は、伝統や習慣、制度などを維持し、社会的もしくは政治的な改革や革新、革命に反対する思想のことを指します。
戦後における日本の成長期である1950年から1970年あたりでは、保守と革新という言葉が頻繁に使われました。1789年に革命が起こった直後のフランスでは、議長席を対にして保守は右、革新は左に陣取ったため、保守を右(右翼)、革新を左(左翼)と呼ぶことも多いものでした。
現在においては、一人の人間が右か左かをはっきり区分できないほど、両思想は必ずしも完全な対立をしていません。そのなかで今回の世代が「保守」と見られているのは、どのような意味を持つのでしょうか。
筆者の見立てでは、テクノロジーの急進的な発展による全面的刷新よりも、その技術や社会風潮は本当に自分たちに必要か、伸長に検討を重ねる傾向があるように思います。とはいえ挑戦心が無いわけではなく、デジタルリテラシーも相応に持ち合わせている世代といえるでしょう。
これから育児卒業を迎える世代
結婚・育児の年齢には差があるため、一概にこのような見出しをつけるのは雑です。それを充分に承知したうえで、投資メディアとしての視点を続けましょう。
この世代は教育費というライフプラン上の大きな負担期を終え、「自由に使えるお金」は増えていく段階に入ります。とはいえ介護だったり、不透明な自分たちの公的年金の状態だったりと、消費欲に正直になるのは不安があるというのもひとつの特徴でしょう。
FPとしての専門家の視点でいえば、これから年金制度が大きく変わったとしても、一定の猶予期間が設定されるのは間違いありません。現行でいえば、65歳から受給開始という前提のもとで保険料を納めてきたためです。繰り下げ年金のように、70歳や75歳から受け取る場合は、相応のメリットが付加されます、という新たな仕組みが生まれる可能性は充分にあります。
これらの特徴と社会的背景を踏まえ、「投資の視点」でこれらの世代を見ていきましょう。1つ考えられるのは、社会インフラとして認められたインターネットサービス、または新たな価値提供には、とても積極的な世代といえます。Amazon、メルカリといったこれまでの概念を大きく変えるサービスのほか、FacebookやTwitter(現X)などのSNSにも抵抗感がありません。
なおFacebookの最大の特徴は「実名」である点です。このサービスが実際の仕事やプライベートにおけるコミュニティと繋がり、瞬く間に広がっていった印象を受けます。最近の20代に話を聞くと、実名SNSなどまずリスクを懸念すると回答する方が圧倒的に多いようです。考えようによっては、この価値観も保守と繋がるものかもしれません。
これらのベースを前提としたサービスであれば、今後「使えるお金」が増えてくる世代であることは確かです。主要な購買層となり、サービスの成長に欠かせない顧客となることでしょう。
史上最年少の首相が誕生すれば、社会の主役世代も変わるシンボリックな出来事になることでしょう。日本中が注目する総裁選は、9月27日(金)に投開票が実施されます。