気になるテーマ解説

【気になるテーマ解説】DX銘柄も生成AI活用が必須に

10月16日付の日本経済新聞朝刊が「経済産業省は東京証券取引所などと選ぶデジタルトランスフォーメーション(DX)銘柄の要件に生成人工知能(AI)に強い人材の活用やサプライチェーン(供給網)強化などを加える。」と報じました。


国がNISAやiDeCoなどを通じて資産運用を促進していますが、これらは投資という大まかなものです。国は個別株については言及しないというイメージがありましたが、DX銘柄として個別株の取引を促すような取り組みをしていることは面白いですね。


経産省がいうDX銘柄とは?


DX銘柄と聞くと企業のDX支援を行う情報通信(IT)関連の企業を想像しますが、経済産業省の要件は「デジタル技術を前提として、ビジネスモデル等を抜本的に変革し、新たな成長・競争力強化につなげていくDXに取り組む企業を、DX銘柄として選定する」となっています。


要は経産省が「この会社はDX化に取り組んでいる」と判断すればDX銘柄に選定されるということです。毎年30社ほどが選ばれており、2024年はLIXIL、三菱重工業、アシックスの3社が銘柄選定企業の中から「デジタル時代を先導する企業」として「DXグランプリ企業」に選ばれました。3社ともにモノづくり企業ですね。


例えばLIXILは、「オンライン接客サービスが、顧客満足度向上だけでなく、従業員 の子育て支援につながっているところが素晴らしい」といった審査員のコメントなどがありました。


また、傑出した取り組みを継続している企業として、日立製作所とトプコンは「DXプラチナ企業2024-2026」に選出されています。ちなみに1社1回のみという制限はなく、例えばブリヂストンは10回、JFEホールディングスは8回選出されるなど常連もいます。


経産省のDX銘柄に選ばれたからと言って株価が大きく上昇することは考えづらいですが、DXを進めることによって業績が伸びていけば株価の上昇が期待されます。そういった意味では、国のお墨付きをもらったDX銘柄は注目度が高まると言えそうですね。


<DX銘柄2024一覧>

 

出所:経済産業省 デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)


今後は生成AI人材活用が要件に


冒頭の説明に戻りますが、今後はDX銘柄の選定要件に生成AI人材活用が加わるようです。報道では具体的な内容は記載されていませんが、経産省はDX銘柄の要件を見直すことで、企業の継続的なIT活用を後押しするとのことでした。


生成AIというと、米オープンAIが「ChatGPT」を発表したことが火付け役となりました。今では世界中で生成AI開発が行われるようになっており、対話だけでなく、画像、動画、音楽などデジタルで作れるものであれば生成AIが代わりを担うことができるように進歩しています。


ChatGPT がリリースされたのは2022年11月30日なので、生成AIはそれから約2年で凄まじい成長を遂げたことが分かりますね。日本はバブル崩壊から長らく低迷が続き、革新的な技術開発、経済成長は他国に遅れをとっています。今後世界をリードするには最先端の技術を扱える人材が必要不可欠なので、今回のDX銘柄の要件見直しは国をあげた取り組みの一環と言えそうです。


業種問わず生成AIの活用が広がってきており、企業研修を手がける会社も生成AI関連の講座を始めるといったことが増えてきました。リスキリングの一環として生成AI人材を増やす目的で利用する企業も少なくないと思われます。


自分の仕事は生成AIと関係がないと思っていても、いつの間にか使うことになっていた・・・なんてことがあるかもしれませんね。昨今、日本では毎日のように生成AIを活用したサービスの発表が何かしらあります。顧客対応に生成AIを活用するなど、我々消費者も触れる機会が増えているため、いつの間にか生活に生成AIが溶け込んでいるといった時代になりました。


新しい技術が出ると、いつの時代であっても期待の一方で不安の声が上がります。ただ、そこで遠ざけてしまってはチャンスも失いかねないので、企業が生成AIを活用するように、我々一般人もうまく利用していきたいところです。



この連載の一覧
【気になるテーマ解説】DX銘柄も生成AI活用が必須に
来年のNISA枠はどうする?
投資促進の一方で詐欺被害も多発
市場予想との付き合い方
政策保有株の解消良し悪し
「地面師たち」が大ヒット 厳しい日本の土地事情
7分の1は空き家の日本
QUOカードはなぜ人気なのか
住宅ローン人気銀行の動向まとめ
米大統領選、どこに恩恵?
中小型株への資金回帰が鮮明に
国際会計基準のルール変更へ 営業利益が分かりやすく?
新紙幣の発行開始でキャッシュレスが進む?
次世代自動車「SDV」とは?
マンション価格下落も依然高い そういえば晴海フラッグは?
プロが注目する配当株は?
出生率が過去最低を更新 止まらない少子高齢化
日本の長期金利が1%台に 今後の影響は?
日経平均と半導体株の関係
株式分割は本当に好材料なのか
株価は割高なのか? 指標を参考にしてみる
新興市場をざっくり振り返ってみる
金が人気の背景とは?
東京都の予算
マイナス金利解除が決定 マーケットへの影響は?
長期投資は我慢比べ
アクティブETFのその後
シリコンアイランド九州は復活か
政策保有株式の売却が進む(2)
決算プレーと自動売買
配当株投資の怖いところ
インターネット広告に試練 Cookie規制とは?
ロボアドバイザーの先駆け ウェルスナビの実力は?
優秀なインデックスファンドとは?
辰年は上がりやすい?
新NISA 注意したい配当金と分配金
新NISA 流行の積み立てと為替リスク
コスト最安の日本株アクティブファンドが登場
NTTが推進するIOWN構想とは?
政策保有株式の売却が進む
歯の健康は全身の健康 病気は未然に防ぐ時代へ
MSワラントの恐怖
配当金が保険料の賦課対象に?
今年は暖冬の予報 マーケットへの影響は?
投信の超低コスト競争に拍車
建設業界と2024年問題
積み立て投資との相性良し悪し
住宅ローンの借り入れは計画的に
東証スタンダード市場の選択申請が増加中
長期金利と株価の関係はよく言われるが・・・
国内初のアクティブETFが誕生
魚が高すぎて買えません
配当方針いろいろあります
太陽光発電は自家消費へ
メタの新SNS「Threads」使ってみた
電池の覇権、リチウムの次は亜鉛?
SENSEX指数が最高値更新 インドってどんな国?
訪日旅行者は今後も伸びる?
半導体製造装置 1台おいくら?
変動金利型住宅ローンが実質マイナス金利へ
話題沸騰のダイヤモンド半導体とは?
著名投資家の投資候補を考察
デジタル給与が解禁! メリット・デメリットは?
私の銀行は大丈夫?
全人代が開幕 いまさら聞けない日本の中国依存度
金利上昇の懸念はあるが省エネ住宅は拡大へ
【気になるテーマ解説】 健康だけじゃない? アミノ酸の可能性
なんでも材料視する株式市場
多発する客テロ AIカメラに注目集まる
会話は人そのもの 話題の「ChatGPT」とは?
「超」高齢化社会の日本
金利に翻弄される銀行 金利の影響と債券の仕組み
出生数80万人割れへ 子育て関連株の行方は・・・
何かと注目される親子上場
【気になるテーマ解説】市場規模は無限大? 壮大な宇宙産業
【気になるテーマ解説】レベル4解禁! ドローンの普及で何が変わるのか
【気になるテーマ解説】成功率3万分の1? 新薬開発の過酷な道のり
【気になるテーマ解説】パワー半導体ってなんだ?
【気になるテーマ解説】「Web3.0」ってなんだ?

日本株情報部 アナリスト

畑尾 悟

2014年に国内証券会社へ入社後、リテール営業部に在籍。個人顧客向けにコンサルティング営業に携わり、国内証券会社を経て2020年に入社。「トレーダーズ・ウェブ」向けなどに、個別銘柄を中心としたニュース配信を担当。 AFP IFTA国際検定テクニカルアナリスト(CMTA)

畑尾 悟の別の記事を読む

人気ランキング

人気ランキングを見る

連載

連載を見る

話題のタグ

公式SNSでも最新情報をお届けしております