今回は宇宙ベンチャー3社「ispace」、「QPS研究所」、「アストロスケールホールディングス(以下、アストロスケール)」の現在の状況を確認したいと思います。
1. ispace(東証グロース:9348)
月面開発の事業化に取り組む宇宙ベンチャーであるispaceは、2023年4月12日に東京証券取引所グロース市場に上場しました。
上場間もない2023年4月26日に、民間初の月面着陸に挑戦。残念ながら、民間月面探査プログラム「HAKUTO-R」ミッション1においては、ランダー(月着陸船)が月面に軟着陸できず、月面着陸を確認する「Success9」を完了させることはできませんでした。
ispaceは赤字ベンチャーであることから、資金調達は不可欠です。2023年の経済産業省からの120億円の補助の獲得(経産省公募事業)のほか、みずほ銀行や朝日信用金庫からの借り入れ、さらに2024年3月には海外市場で、公募による新株式発行を実施し資金を調達しています。
なお、25.3期通期については最終赤字124.7億円の会社予想となっています。引き続き赤字が見込まれていますので、今後も定期的に資金調達が行われることが想定されます。
民間月面探査プログラム「HAKUTO-R」ミッション1での月面着陸成功はなりませんでしたが、2024年9月12日に民間月面探査プログラム「HAKUTO-R」ミッション2 の打ち上げを最速2024年12月に予定していると発表しました。
ミッション2の目的は、ミッション1で得た成果を踏まえた、ランダーの設計・技術、および月面輸送サービス・月面データサービスの提供という事業モデルのさらなる検証と強化としています。今度こそ月面着陸成功なるか、ミッション2の動向に注目したいと思います。
【ispaceの週足チャート】
2. QPS研究所(東証グロース:5595)
小型SAR(合成開口レーダー)衛星の開発、製造、小型SAR衛星より取得した画像データ販売を行う宇宙ベンチャーであるQPS研究所は、2023年12月6日に東京証券取引所グロース市場に上場しました。
上場間もない2023年12月15日に、小型SAR衛星QPS-SAR5号機が無事に軌道投入されたと発表し、株価は一時急騰しました。2024年4月8日にはQPS-SAR7号機が無事に軌道投入されたと発表、同年8月17日にはQPS-SAR8号機が軌道投入されたと発表しました。
QPS-SAR8号機の打ち上げ成功は、2023年6月に打上げられたQPS-SAR6号機、同年12月に打上げられたQPS-SAR5号機、2024年4月に打上げられたQPS-SAR7号機に続き、4機目の打ち上げ成功実績となっています。
順調に打ち上げが進んでいることから、今後の収益拡大が期待されていましたが、2024年7月12日にQPS-SAR6号機が、スラスターの不具合によって2024年12月までに地球観測に必要な高度を維持できなくなる可能性が極めて高くなることを確認したと発表しました。
さらに同年9月12日には、QPS-SAR5号機に通信系の不具合が確認され、今後の継続的なサービス運用に支障が生じる見込みになったと発表しました。宇宙空間における放射線の影響を偶発的に受けた、電気系統の故障が発生原因と考えているとのことです。
QPS研究所の24.5期の営業利益は3.4億円でした。黒字の宇宙ベンチャーとして注目されていますが、QPS-SAR6号機、QPS-SAR5号機と立て続けに不具合が発生したことは懸念材料です。
ただ、28.5期までに24機体制を構築していく計画に、現時点で遅れや変更は生じていないとしています。今後のQPS-SAR9・10・11号機の打ち上げ、軌道投入、販売可能な画像を取得する定常運用が無事に進むか、動向に注目したいと思います。
【QPS研究所の週足チャート】
3. アストロスケール(東証グロース上場:186A)
スペースデブリ(宇宙ゴミ)除去・防止などの軌道上サービス(OOS)の提供をめざす宇宙ベンチャーであるアストロスケールは、2024年6月5日に東京証券取引所グロース市場に上場しました。
7月9日には商業デブリ除去実証衛星「ADRAS-J」が一度目のデブリの周回観測を実施したと発表。さらに7月30日には商業デブリ除去実証衛星「ADRAS-J」のミッションにおいて、観測対象のデブリの周回観測に成功したと発表しました。本物のデブリの周囲を飛行する運用に成功したのは世界初だったことから、発表を受けて株価は動意づきました。
アストロスケールは契約獲得も順調で、8月19日には宇宙航空研究開発機構(JAXA)との間で、商業デブリ除去実証フェーズIIの大型契約を8月20日に締結すると発表。9月11日には英国子会社が、英国宇宙庁との間でCOSMIC(Cleaning Outer Space Mission through Innovative Capture:低軌道上に存在する運用を終了した英国の衛星2機の除去を行う英国のデブリ除去プログラム)フェーズ2の契約(契約金額195万英ポンド)を獲得したと発表しています。
アストロスケールの24.4期の最終赤字は91.8億円でした。ispaceと同様に、赤字が続く可能性が高いと考えられますので、資金調達が定期的に行われることは想定しておく必要があります。
【アストロスケールHDの週足チャート】
最後に
今回は宇宙ベンチャー3社(ispace、QPS研究所、アストロスケール)の現状を確認しました。
注目イベントは、最速2024年12月とされているispaceのミッション2 の打ち上げです。ミッション1の打ち上げが2022年12月で、月面着陸挑戦が2023年4月だったことを考慮すると、最短で来年4月に月面着陸挑戦の可能性があります。前回失敗に終わった月面着陸ですが、今回は成功なるか、注目したいと思います。