今回は貨幣処理・決済機器の大手のグローリー(6457)に注目。グローリーといえば、金融機関の営業店において出納管理を行うオープン出納システムや窓口用紙幣・硬貨入出金機、両替機などの金融市場向けで高いシェアを有しています。その他には、レジで使用されるつり銭機や交通機関向けの小型入出金管理機などもイメージされます。
今回は、まず業績と株価動向を確認し、その後に意外に感じた取り組みを紹介します。
グローリーの業績と株価動向
グローリーが5月13日に発表した25.3期の決算では、25.3期通期の連結営業利益は352億円(前の期比31.2%減)と減益での着地となりました。また、26.3期通期の連結営業利益予想は215億円(前期比38.9%減)と大幅な減益を見込んでいます。
25.3期の減益は、前期発生した改造作業などの新紙幣発行対応(特別特需)の反動が要因としています。26.3期についても新紙幣発行対応の反動がまだ残ることから減益の見通しとしています。
また、決算発表と併せて、株主還元方針の変更と自己株取得枠の設定・消却を発表しました。
株主還元方針の変更では、従来の配当金額(1株につき年間106 円)を基準とした累進配当、株主資本配当率(DOE)3%以上に加え、26.3期および27.3期の総還元性向を100%以上にするとしています。
自己株取得については、600万株・150億円を上限とした自己株取得枠を設定。上限株数を取得した場合の自己株式を除いた発行済株式総数に対する割合は10.4%となっています。また、取得した自己株式の全株式を2026年6月30日に消却するとしています。
上記の発表を受けて株価は急騰。新紙幣発行対応(特別特需)の反動は避けられませんので、減益は想定内だったいえます。そこに株主還元方針の変更と自己株取得枠の設定・消却が発表されたことで、株価は急騰しました。
自己株取得枠の設定が10%を超えるほどの割合だったことから、自己株取得枠の設定が短期的な株価の上昇要因になったと考えられます。ただ、株価はその後も上昇が続きます。これは株主還元方針の変更が評価され、徐々に水準訂正が進んだと想定されます。
7月に入っても株価は年初来高値更新が続いており、7月11日には3663円まで上昇。2017年12月に付けた上場来高値4430円も視野に入ってきたといえます。
【グローリーの週足チャート 2024年1月~2025年7月第2週まで】
グローリーの意外な取り組みに注目
グローリーでは、貨幣処理・決済機器のイメージとはちょっと異なる取り組みも行っていますので、ここで紹介したいと思います。
「データコネクティングサービス」提供
グローリーは2024年10月に、スーパーマーケットやドラッグストアなどの流通小売業のスマートフォンアプリ会員と飲料や食料品、化粧品や日用品などさまざまなメーカー会員の情報を紐づけ、当該会員の店舗での購買データをメーカーに提供する国内初のデータコネクティングサービスの提供を開始したと発表しました。
サントリーと東急ストアをデータコネクティングサービスのファーストユーザーとして、サービスを開始。2025年7月には森永乳業への提供も開始しています。
競馬場の指定席エリアへの入場管理を顔認証で実現
グローリー2025年3月26日に、日本中央競馬会の6競馬場で2025年4月下旬より、顔認証を利用した指定席エリア通行管理業務を受託し、運用を開始すると発表しました。
グローリーは、顔認証機能を用いたさまざまなソリューションを、2025年3月26日時点で国内1000カ所以上のロケーションで提供。今後も顧客のニーズに合わせたカスタマイズ開発を継続し、安全安心な社会の実現に貢献するとしています。
ローソンが車中泊の実証実験 グローリーも参加
三菱商事とKDDIが折半出資するローソンは7月7日に千葉県のローソン6店舗の駐車場で車中泊施設「RVパーク」実証実験を7月14日より開始すると発表しました。この取り組みは、日本RV協会(神奈川県横浜市)および貨幣処理・決済機器の大手のグローリーと連携して行うものとしています。
日本RV協会のリリースには、具体的にグローリーがどのような役割を担うのかは記載されていません。そのため詳細は分かりませんが、この取り組みはネット上でもかなり話題になっています。実証実験からの本格展開、さらには他のコンビニへの拡大にも期待したいところです。
最後に
26.3期は減益見通しではあるものの、海外市場については、リテールや、飲食の各市場での大型案件獲得などにより、大幅増益を見込んでいます。海外市場が順調に拡大していけば、27.3期以降のV字回復の確度は高まります。
加えて、「データコネクティングサービス」や顔認証機能を用いたさまざまなソリューションなどの新たな取り組みも注目されます。
株価は上昇しているもののPERは20倍程度、PBRは0.9倍と1倍を割れています。配当利回りは3%程度と悪くない水準であり、長期視点で投資してみるのもよいと思います。