NY証取 1日22時間取引へ 東証改革への影響は?

東京証券取引所では11月5日から取引終了時間を従来の15時から15時30分までに延長しました。投資家の間でもとても大きな話題となっていますが、それに先駆けて10月25日にニューヨーク証券取引所(NYSE)が取引時間を1日22時間へ延長する計画を発表したことをご存じでしょうか。


もともと米国市場では通常の取引以外に「プレマーケット」「アフターマーケット」と呼ばれる時間外取引が行われていました。それを含めると取引可能な時間は16時間あったわけですが、そこからさらに6時間伸び、ほぼ一日中取引が可能になります。


もともと米国は同国内においても時差がある関係もあり取引時間は長めでした。今回発表された計画では、時間外取引で午前の部の開始時間を午前1時30分に、午後の部の終了時間を午後11時30分までとしており、実施となれば1日のうち取引が停止するのはわずか2時間ということになります。


いくら時差があるとはいえ、米国内だけの投資家を対象にするのであればここまでの時間拡大は必要ないわけですが、これにより欧州の投資家も、そしてもちろん日本の投資家も米国株を格段に取引しやすくなると言えるでしょう。


実施には米証券取引委員会(SEC)からの承認が前提となりますが、この件を記事で取り上げた英フィナンシャル・タイムズ(FT)紙では、ニューヨーク証券取引所は25年中の延長実施を目指していると報じています。


流動性の問題などもあるでしょうし、あくまで時間外取引ということで米国の機関投資家が多く参加する時間帯とは値動きが変わってくることあるかもしれませんが、利便性が向上することは間違いありません。これでますます米国市場ならびに米国株のプレゼンスが増すことになると思います。


証券会社でも米国株の取引を強化する動きがあるようです。マネックス証券11月5日、同月11日より、米国株「プレ・マーケット」開始時間を2時間前倒しし、サービス時間を拡大して提供すると発表しました。



マネックス証券のプレマーケット開始時間前倒しに伴う変更点(日本時間(冬時間))


米国株を取引されていることならご存じのことですが、米国株の取引時間は、日本時間23時30分~翌6時(冬時間、夏時間は22時30分~翌5時)の間が立会時間となっています。加えて、この立会時間の前に「プレ・マーケット」、立会時間の後に「アフター・マーケット」という時間外取引が行われています。


日本でもPTS(私設取引システム)によって、東京証券取引所で取引が行われていない時間以外でも株式を売買することが可能ですが、それと似たものだとお考えください。


マネックス証券では、グループ会社で米国に拠点を置くトレードステーションと連携することで、通常の取引時間に加え、「プレ・マーケット」と「アフター・マーケット」を合わせて日本時間20時~翌10時(冬時間、夏時間は19時~翌9時)まで14時間、米国株取引が可能になるとしています。


日本にいながらにして米国株を取引することのハードルは以前と比べてずいぶんと低くなりました。今では主要な日本の証券会社の口座があれば、特別な苦労もなく気軽に米国株を売買できるようになっています。


加えて、証券会社のサポートも手厚く、日本語により決算の解説や事業に関するレポートなども充実しているため、言語による情報格差によって売買をあきらめる必要もなくなりつつあります。


前述したニューヨーク証券取引所の取引時間延長が実施されれば、日本株より米国株を売買する方が良い、という日本の投資家が増えてくるかもしれません。日本企業とその株式に魅力がないとは思いませんが、世界がライバルとなるなかで30分の取引時間延長が本当に競争力の強化につながるのか、考えさせられてしまいます。東証の改革をますます進めることで、日本株の売買が活性化することに期待します。


日本株情報部 アナリスト

斎藤 裕昭

経済誌、株式情報誌の記者を経て2019年に入社。 幅広い企業への取材経験をもとに、個別株を中心としたニュース配信を担当。

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