時価総額でトヨタがテスラに負ける理由は?EV販売数の減少から今後の動向を探る

2020年に時価総額でトヨタがテスラに負けてから、その後大きく差をつけられました。しかし、2023年からトヨタ好調とテスラの停滞で状況が変化してきています。


本記事では、当時なぜトヨタが停滞してテスラが躍進していったのか、その理由を振り返りました。またEV(電気自動車)販売数の鈍化から、トヨタとテスラの今後の動向を探ってみます。ぜひ参考にしてみてください。


なぜ時価総額でトヨタはテスラに負けているのか?

まずはトヨタとテスラの時価総額を比べてみます。2024年4月28日時点における2社の時価総額は以下のとおりです。


・トヨタ:約3,796億ドル(約58兆6,850億円)

・テスラ:約4,769億ドル(約73兆7287億円)


2020年7月にテスラはトヨタの時価総額を抜き、自動車メーカーでトップの地位を築いています。その後、2021年後半に1兆ドルを突破してトヨタ社と一時は3倍以上にも及ぶ時価総額の差を見せました。


その背景にはEV(電気自動車)市場シェアの伸びと、トヨタのEV市場への進出が遅れた点が関係しています。次の章でテスラ成長の背景について、解説します。


テスラの株価上昇要因とその背景

テスラの株価上昇要因として、EV(電気自動車)の製造メーカーだけでなく、最新のAIテクノロジーを搭載した革新的な企業であると市場に認知された点があげられます。将来的に自動運転を可能にする画期的なアイデアを市場が評価し、株価がみるみる上昇したのです。


他にもEV独自の強みとしてガソリン車よりCO2排出量が少なく、環境に優しい点があげられます。世界的に環境意識は高まっていたため、EV(電気自動車)は先進国を中心に広く支持されました。


またEVには充電設備が整っていないと長距離走行に不安が残る点が問題でしたが、バッテリーやシャーシ技術は向上し、充電拠点も徐々に増えています。2023年までEVの販売数は順調に伸びてきているため、成長期待は高まりました。


EV(電気自動車)の販売数減少によりテスラの成長懸念が広がる

成長が期待されていたテスラですが、ここにきてEV販売台数の減少に伴い大きな懸念材料が出てきました。2020年以降のテスラにおけるEV販売台数の推移は以下の通りです。


・2020年:50万台

・2021年:93.6万台

・2022年:131.3万台

・2023年:180.8万台


販売数は順調に推移しているようにも見えますが、テスラのEV販売台数は伸び悩み、2024年第1四半期は前年同月比で減少しました。


また中国企業が大きく業績を伸ばしており、2023年10~12月期はBYD(比亜迪)がテスラを抜いてEVの販売数が世界一になっています。


販売数減少の要因はいくつかありますが、中国企業が新型車を発表するなかでテスラのモデルが古くなっている点が挙げられます。他にも世界的にHV(ハイブリッド車)のほうが価格は安く、需要が伸びている点がEV市場にとって逆風です。


これから中国企業との価格競争がさらに激しさを増していくと、テスラの収益減少も懸念されます。



HV(ハイブリッド車)の販売数上昇により業績好調のトヨタ

トヨタにおける自動車の販売数はHV(ハイブリッド車)を中心に手堅く伸びています。2020年以降におけるトヨタグループの世界販売数の推移は、以下のとおりです。


・2020年:953万台

・2021年:1050万台

・2022年:1048万台

・2023年:1123万台


HV(ハイブリッド車)はガソリンエンジンと電気モーターを組み合わせたモデルであり、CO2排出量と生産コストの割合に優れ、世界中で人気を集めています。トヨタは2023年に経験した記録的な円安と車体価格の値上げにより収益性を改善した結果、大きく利益を伸ばしました。


 

参照:トヨタ決算書から筆者作成


2023年には株価も順調に推移していて、日本企業として初めて時価総額50兆円を突破しています。


 

参照:Traging View


テスラの今後の動向は?

テスラの成長が期待されていた分、悲観材料が出たことで、直近の株価は下がっています。テスラの将来性を見込んで購入した層が、EV販売台数の落ち込みを見て成長に不信感を抱いた投資家が売りに出たのでしょう。


2021年後半に時価総額は1兆円を超えましたが、その後は減少していき2024年4月には半分以下の5,000億ドルを割り込んでいます。


また直近5年間におけるテスラの株価推移は以下の通りです。

 

参照:Traging View


テスラの悪材料は出尽くした印象もありますが、株価が底値を付けたかどうかは注意して見なければいけません。2024年1-3月期決算は事業予想を下回る内容でしたが、4月23日に新型車における発売時期の前倒しを発表したことで株価は急騰しました。


なお、一般消費者の目線でみたとき、環境問題を優先して自動車を購入する層は少ないと予想されます。しかし、今はEV市場の過渡期であり販売価格が下がってくれば、多くの消費者がEV(電気自動車)に乗る時代はくるかもしれません。


反対にトヨタはEVの業績が振るわず、2024年3月期の販売見通しを下方修正しています。5~10年後の未来はEVの覇権争いにより、また業界の動向は変わってくると予想されます。


今後もトヨタやテスラの動向に注目してみてください。

独立系ファイナンシャルプランナー

藤崎 竜也

「独立系ファイナンシャルプランナーとして執筆業を中心に活動中。2019年から教育資金や老後資金を蓄えるために投資を始める。実体験をもとに、専門用語をわかりやすく解説するのが得意。2級ファイナンシャル・プランニング技能士資格を取得し、現在は金融ジャンル(資産運用・投資・不動産・保険)をメインに執筆している。

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