ストップ高・ストップ安って何? 値幅制限に関するルールとは

「ストップ高」「ストップ安」とは


株に関するニュースを見聞きしていると、たびたび「ストップ高」「ストップ安」という単語を聞くことがあると思います。日常的に株式を売買している方にとっては、いまさらな部分もあるかと思いますが、株式売買にはさまざまなルールがあり、「ストップ高」「ストップ安」は、その中の値幅制限に関するルールによるものです。


具体的には、株は1日の価格で変動する幅に制限があり、前日の終値(あるいは気配値)をもとにした基準値から一定程度上昇(下落)するとそれ以上は株価が上がらなく(下がらなく)なります。これをストップ高あるいはストップ安と言います。


例えば、基準値1000円の株があった場合、制限値幅である300円上昇の1300円でストップ高となり、これ以上は例え1400円で買いたいという人がいても、その日はそれ以上株価は上がりません。反対に300円下落して700円になった場合も、同日にそれ以上下がることはありません。


では、なぜこのような「ストップ高」や「ストップ安」というルールがあるのでしょうか。上段でも書きましたが、ストップ高で1300円となっている株について、1400円でもいいから買いたい、という投資家にとっては、その日のうちに買えないというルールは、ある意味では邪魔に感じることもあるでしょう。もっと自由に売買したい、という意見はあると思います。


それでも、こうしたルールが設けられているのは、株価に大きな言動があったときに、市場の混乱を防ぎ、投資家に落ち着いて取引を行う時間的な猶予を与えるため、と言われています。何か大きなニュースなどがあり、何円でも良いから買いたい、売りたいという投資家が殺到した場合、株価は非常に大きく変動することになります。そうなる前にいったんクッションをおいて、株価の変動をある程度緩やかにしようということです。


株式投資をされたことがある人のうち、ある程度経験のある方にはご理解いただけると思いますが、株価が一気に動くと、その変動の大きさに驚き、冷静な判断を下せないことがあります。どんどん上昇する株価を前に、これ以上上がる前に買わなきゃ!と焦って高値掴みをしたり、逆に下がってく株価をも持ち続けられず、売ったところが底値だったというのは株式市場のいわゆる「あるある」と言えるでしょう。こうしたときに、一度に変動する値幅に制限を加えることで、売買する前に落ち着いて考える時間を設けているのです。




この制限値幅については、1000円の基準株価の場合は300円だと書きましたが、これが100円が基準株価の場合でも同様の制限値幅になると、変動率が大きすぎますし、逆に1万円の基準株価の場合、小さすぎてすぐにストップ高、ストップ安になってしまいます。そのため基準となる株価に合わせて、複数の値幅が設けらえており、おおよそ基準の3割前後に収まるようになっています。


一方で制限値幅が設けられていない市場も存在します。米国などがその代表と言えるでしょう。昨今、ネット証券での取り扱いなどにより、米国株への投資が非常に身近になりました。しかし、制限値幅がないため、一日で株価が何十倍にもなったり逆に半分以下の価格になったりといった例もまれにではありますが実際に起きています。その点には十分に注意が必要です。


制限値幅については、別のルールも存在します。それが制限値幅の4倍拡大ルールです。2020年にできた比較的新しいルールで、2営業日連続でストップ配分となった場合、翌営業日の制限値幅を4倍に拡大するというものです。それまでは3営業日連続でストップ配分となった場合に、制限値幅を2倍にしていました。


これまでの説明と真逆のことを言うようですが、買いや売りが殺到してストップ高やストップ安が連続すると、売買自体がほとんど成立せず、少ない出来高のなかでどうしても買いたい、売りたいという人の注文を集め、さらなる上昇や下落につながることがあります、そうなると、制限値幅のルールによって、かえって値動きが行き過ぎて恐れがあるため、一時的に制限値幅を拡大して、売買が成立しやすくするのです。



ストップ高配分の銘柄を買いやすくするコツ


最後にストップ高気配の銘柄を買うときに、少しでも確率を上げて買いやすくするコツをご紹介したいと思います。これまでの文章でも述べてきましたが、ストップ高の銘柄については、その日はそれ以上株価が上がらないため、もっと高い値段で買いたいといっても売買は成立しません。その場合、ストップ高の値段で買いたい人がたくさんいて、ストップ高の値段で売りたいという人の注文数よりも多くなるという事態が起きます。そのときに比例配分という措置が行われます。


これは注文数が多かった証券会社の順に、証券取引所が売買の成立した株を配分する仕組みです。たとえばストップ高の値段でで6000株の売買が成立したとします。それに対し、A社、B社、C社、D社の4社がそれぞれあった場合、注文数の多かった証券会社の順にまず1000株ずつ4社に配分されます。さらに売買が成立した2000株については、再度注文数が多かった順に今度は2社に配分されます。注文数が多い証券会社ほど配分が多くなる仕組みです。これを比例配分と言います。


とすると、配分される株数の多い、注文数の多い証券会社、つまりは出来高の多い証券会社で注文を出したほうが確率が上がる、と考えるかもしれません。しかし、実際にはそうではなく、注文数の少ない証券会社を経由して注文を出した方が確率が上がるケースがあります。


たとえば、前述の例でいえば、A社の買い注文が10万株、B社が8万株、C社が6万株、D社が2万株だったと仮定します。その場合、A社は配分が2000株なので10万分の2000で0.02%の人しか、実際に買うことはできません。一方、D社は配分は1000株しかありませんが、買い注文の数が2万株なので、2万分の1000で0.05%の人が買うことができます。A社の2.5倍の確率で配分されることになりますね。あくまで計算上の話にはなりますが、複数の証券会社で口座を持っていると、こういうときに有利な確率で抽選を受けることができるケースがあります。


一つ注意する点としては、多く配分されることを狙って実際に欲しい株数以上に買い注文を出していた場合、買い注文数と売り注文数が一致してザラ場で売買が成立すると、注文分がすべて約定してしまうことになります。注文数には十分注意してください。


日本株情報部 アナリスト

斎藤 裕昭

経済誌、株式情報誌の記者を経て2019年に入社。 幅広い企業への取材経験をもとに、個別株を中心としたニュース配信を担当。

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