日本証券業協会では、毎年、「個人投資家の証券投資に関する意識調査」を行なっています。2025年4月中旬にインターネットで実施した意識調査では、新NISA(少額投資非課税制度)の前後で、投資家にどのような変化があったかを調べました。
新NISAの口座開設者の概要
調査対象は全国18歳以上の証券保有者5,000人。そのうち、新NISA口座を開設している人は82.0%で、2024年7月に実施した前回調査に比べ、22.7ポイント増加しています。
年代層が若いほど口座開設割合が高く、各年代層の割合は次のとおりです。
・30代以下(875人):93.9%
・40代(958人):87.7%
・50代(902人): 80.4%
・60~64歳(549人):78.7%
・65~69歳(434人): 76.3%
・70代以上(1,282人):74.2%
また、新NISAの口座を開設している人(4,101人)の年収は、約4割が300万円未満で、500万円未満が66.9%を占めています。
新NISAの口座開設者の金融資産保有額は、加重平均で1,703万円。分布は次のようになっており、約4割の人が500万円未満です。
・100万円未満:14.1%
・100万円以上300万円未満:12.9%
・300万円以上500万円未満:12.2%
・500万円以上1,000万円未満:15.9%
・1,000万円以上3,000万円未満:25.3%
・3,000万円以上:19.6%
新NISAを機に、資産形成に興味を持ち、積極的に調べるようになった
では、新NISA口座開設の前後で、どのような行動の変化があったのでしょうか。複数回答で尋ねたところ、全体の3分の1の人が「特に変化はない」と答えました。変化があった人の回答で多かったのは、「資産形成についてより興味を持つようになった」(全体で37.2%)、「新NISAを今後も利用したいと思うようになった」(同25.3%)、「NISA口座での投資を始めた」(同25.0%)となっています。
この行動変化について、【表1】で各年代のトップ3の回答をまとめました。
特に30代以下は、過半数が「資産形成により興味を持つようになった」と答え、40代でもほぼ半数に達しています。次が「より積極的に調べるようになった」という回答で、大変喜ばしいことです。30代以下や40代が主体的に行動している様子がうかがえます。
一方、年代が上がるにつれ「特に変化はない」という回答が増えています。投資経験が豊富な世代では、特段の変化はないのかもしれません。ベテラン勢を除けば、若年層と似通った行動変化が見られます。
2025年にNISA口座での購入は増やす? 減らす?
2025年のNISA口座での購入金額については、「前年と同じ」という人が約半数。つみたて投資枠では48.9%の人が、成長投資枠では45.7%の人が同額と回答しています。
一方、「前年より増額している」または「増額予定」という人は、若い世代ほど多い傾向です。つみたて投資枠で増額または増額予定という人は23.8%で、全体の13.2%より10ポイント高くなっています。
前年より購入額を増やす・増やす予定という回答は、つみたて投資枠より成長投資枠の方が多く、【表1】で多くの人が「資産形成についてより興味を持つようになった」と答えていることと整合しています。
つみたて投資枠で購入額を増やした(増やす予定)という人の理由は、収入増、投資への興味増大、余剰資金の増加が上位回答でした。成長投資枠では、市場動向を踏まえた判断、年間投資枠の限度額まで投資したい、余剰資金の増加、投資への興味増大が上位となっていました。それぞれの枠の特徴に応じた理由が挙げられています。
一方、購入額を減らした(減らす予定)という人で多かった理由は、つみたて投資枠では余剰資金の減少、収入減の次に、市場動向を踏まえた判断となっていました。成長投資枠での減額理由は、市場動向を踏まえた判断、収入減、余剰資金の減少となっています。
それぞれの投資枠の性質に応じた動きが見られます。
NISA口座で投資のイメージは変化したか
最後に、NISA口座開設による投資イメージの変化を複数回答で尋ねた、上位の結果を紹介しておきましょう。
・大きな資金がなくても、少額から投資が始められることが分かった:35.1%
・特に変化はない」:30.9%、「長期投資や分散投資を意識するようになった:26.3%
・投資が身近に感じられ、投資へのハードルが下がった:23.6%
・預貯金だけでなく、投資を通じた資産形成の必要性を感じるようになった:23.2%
と続きます。
この設問でも、年齢層が高いほど「特に変化はない」人が多くなっています【表2】。
表にはありませんが、年代の違いで差が大きかった回答がありました。
「ライフプランやマネープランについて考えるようになった」は、30代以下の25.9%に対して70代以上では6.7%。さらに、30代以下の25.6%が「投資がこわいものではなくなった」と答えているのに対し、70代以上が3.9%でした。
年齢とともに経験を重ね、投資への不安が少なくなっていることの表れかもしれません。
この調査からは、新NISAがきっかけとなって「資産形成に興味を持った」「投資について調べるようになった」「実際に始めてみた」という人が、特に若い世代を中心に多かったことがわかりました。投資は「少額からでも始められる」「長期・分散が大事」というイメージの広がりが見られ、「怖い」「難しい」と感じていた人の背中を押してくれたようです。
【参考】
「個人投資家の証券投資に関する意識調査について」(日本証券業協会)