BTC、NY序盤に乱高下
代表的な暗号資産のビットコイン(BTC)は2025年12月18日10時30分頃、対円では1342万円台と前週(7日前)比で約5.8%低い水準で取引されています。BTCドルが8万6000ドル前後、月初来で約4.6%の下落率と上値の重い展開が続いています。
今年も残すところ2週間となりました。BTCは今年の安値圏(対円が1079万円台、対ドルは7万4400ドル台)を上回ってはいるものの、10月に記録した過去最高値からは約3割も下げた水準で取引されています。
BTC相場は17日夜中(ニューヨーク序盤)に乱高下しました。米国勢が中心の時間帯ですので対ドルだけで話すと、23時45分に8万7200ドル前後をつけたところから、約20分後には9万0300ドル台まで急騰します。
しかしながら9万ドル台では頭をグッと抑えられ、伸び悩んだところで買った向きが慌てて売り戻し始めました。18日1時頃には8万7000ドルも下抜けて、8万6200ドル前後まで下げ足を速めました。3.5%ほど急ピッチで上げ、そこから4.5%急落という激しい動きでした。
金融市場に関する分析を配信するThe Kobeissi LetterのX投稿によれば、先物市場では、上昇時に1億2000万ドル相当のレバレッジをかけられたショートポジションが清算されたようです。しかしながらその後の大幅下落で、約2億ドルのレバレッジ・ロングが損切らされたと述べています。
※Trading Viewより
荒い動き、ニュースではなく…
昨日のボラタイルな動きは、現物ビットコインETFの取引が開始される(NY株式市場が現物オープン時間)日本時間23時30分以降に始まりました。
BTCウォッチャーのNoLimitによるX投稿によれば、急騰はニュースによるものではなく、流動性の薄い中で大手取引所やETF関連のアカウントによる買いが殺到したからだとしています。レバレッジをかけたショートが踏みあげられた(刈り取られた)後、今度はロングの傾き過ぎへの懸念が高まったようです。
レバレッジのロングを維持するファンディングコストが高まっていたことに大口の投資家が気づき、逆方向に仕掛けたと(10月の最高値を言い当てたという)NoLimitは述べています。
ここでのファンディングとは、暗号資産の永久先物取引で、どちらかにポジションが偏りすぎた場合に「一方がコストを負担する」仕組みです。
永久先物取引では、売り(ショート)と買い(ロング)のバランスを保つため、一定時間ごとに資金のやり取りが発生します。ロングが多すぎるときは、ロング側がショート側に「維持費」を払います。逆にショート過多だと、ショートがロングの人に支払います。
ファンディングは、永久先物の価格を現物に近づけるための調整料と言えるでしょう。ファンディングコストのプラスが続けば相場は買いに偏っている、マイナスが続くと売りに偏っているサインとされています。暗号資産分析サイトcoinglassなどで参照できます。

※2025年12月18日12時頃
高速取引が市場をかく乱?
日本の真夜中、NY序盤に大きく動くことについて指摘したコメントは以前にもありました。
12月9日の暗号資産分析Bull TheoryのX投稿によれば、ビットコインは11月以降、米国市場が開いた直後に急落する動きが繰り返し見られたというのです。12月初旬には、わずか20分で16時間分の上昇を帳消しにする場面もあったと述べています。先月から目立ちましたが、今年半ば以降から同様の現象が起きていると言及。これは単なる偶然ではなく、市場の仕組みによるものだとの見解を示しています。
この背景には、大手の高速取引(High Frequency Trading、HFT)会社であるJane Streetの関与をBull Theoryは指摘しています。市場オープン後に急落し、その後ゆるやかに回復する一貫した流れがあり、典型的な高頻度取引の動きと一致するようです。
※HFTとは、高頻度取引会社とは、超高速のコンピューターとアルゴリズムを使って、株や先物などをミリ秒単位で大量に売買する企業のこと。人間のトレーダーでは不可能な速度で取引を繰り返し、わずかな価格差や市場の歪みを利益に変えるのが特徴。
戦略はシンプルで、オープン時に売りを仕掛け、価格を流動性のある水準まで押し下げ、安値で再び買い直すというものです。これを繰り返すことで、Jane Streetは効率的にポジションを積み上げ、数十億ドル規模のビットコインを蓄積したと見られています。
11月から12月前半にかけての急落は景気やマクロ要因による弱さではなく、特定の大口投資家による意図的な動きに振り回された可能性が高いとの見立てです。BTCの好材料に反応するのは、もう少し先になるかもしれません。



