ここ数年、株式市場で存在感を示しているのがアクティビスト(物言う株主)といわれる機関投資家です。とある企業の株を大量に保有することで、その企業に対する発言権を獲得できます。いわゆる株主提案ですね。
現在の会社法では、議決権の1%以上、または300個以上の議決権(1単元100株なので3万株)を保有していること、株主提案権の行使日の6カ月前から継続して保有していることが条件です。まとめると、一定の株式数を半年持てば株主提案が可能ということになります。
そこで資金力のあるアクティビストが、内部留保を多く持つなどの何かしら妙味がありそうな日本企業を対象にアクションを起こしているのが今の日本株市場です。
アクティビストに乗っかって投資する手法もあり、これが意外にもパフォーマンスは良好なケースが多いです。著名アクティビストの大量保有が分かると、思惑から株価が急騰するのはもはや市場の風物詩ともいえるでしょう。
ところで、アクティビストに直接お金を預ける方法もあり、数は少ないですが国内でも関連する投資信託がありました。今回はアクティビスト系ファンドの1つを取り上げ、実力を見ていきたいと思います。
ダルトン・ジャパン・パートナー戦略ファンド
ファンド名にあるように、米国運用会社のダルトン・インベストメンツが運用を行う国内株式に投資するファンドです。2024年12月6日に設定され、25年12月16日時点で純資産総額は511億円ほど。結構お金が集まっている印象があります。ちなみにNISAの対象商品です。
ダルトンといえば株式市場でも特に有名なアクティビストの一角。フジ・メディア・ホールディングスに対する提言などがメディアでもたびたび取り上げられており、知っている人も多いのではないでしょうか。
同ファンドの直近の運用報告書を見ると、組み入れ上位銘柄は以下のようになります。

出所:ダルトン・ジャパン・パートナー戦略ファンド 運用報告書 第1期
直近のファンド決算期においては、前述したフジメディアHDが組み入れ銘柄のトップです。ちなみに12月発行の11月月次レポートにおいてもフジメディアHDがトップとなっており、江崎グリコ、マクニカHD、リンナイ、センコーGHDの順で上位5位まで掲載されていました。
このファンドは少し特殊で、「特化型」と呼ばれます。1銘柄の寄与度が10%を超える可能性があるといったように銘柄集中リスクがあります。なんだか、今の日経平均と半導体株の関係に似ていますね。
気になる運用成績は?
トップクラスの知名度を誇るアクティビストが運用するファンドなので、その成績も気になるところです。運用が始まっておおよそ1年が経過したところですが、日本株全体を見るTOPIXと比べてみたところ、以下の比較チャートとなりました。

※2024年12月6日を10000として基準価格、TOPIXともに指数化
結果的に1年間のパフォーマンスはTOPIX並みとなりましたが、4月の関税ショック時には、市場全体と比べて下落が限定的だったことが分かります。ダルトンによる株主提案期待があるなか、下値では買いたいという投資家が多かったのかもしれません。
今後、飛躍的な運用成果を上げるかは、運用者であるダルトンの要求が通り保有銘柄の株価が大きく上昇するかどうかがポイントです。もちろん、日々の上下だけでなく決算発表などでも株価は大きく動くため、一朝一夕で成果が出ることはまれです。
ダルトンがフジメディアHDの株を5%以上取得したのは、このところのコンプライアンス問題が取り上げられる前の2023年末でした。そこから2年経過しており、アクティビストと企業の対話は長期化するケースも少なくないことが分かります。
とはいっても、アクティビストの存在が企業の意識を変えるきっかけになっているのは間違いないでしょう。ダルトンの名前をニュースで見たら、今回取り上げたファンドのレポートなどを見てみると新しい発見があるかもしれません。



