2025年の国内株式市場は「海外投資家の買いと自社株買いvs個人・国内機関投資家の売り」

株式投資を行う上で、投資家の需給は重要な情報です。株式市場では買い手を「需要」、売り手を「供給」といいます。「海外投資家が日本株を買い越した」または「売り越した」といった報道を見聞きすることも多いと思います。


では、2025年の国内株式市場の需給を見ていきましょう。


株式市場はオークションの場


なぜ株式投資で投資家の需給が重要なのかというと、株式取引は株式のオークションのようなものだからです。


株式を「買いたい」という需要側の投資家と、「売りたい」という供給側の投資家が出会い、折り合いのついたところで取引が成立します。取引成立した瞬間の株価が「現在値」というわけです。


株価は需要と供給の力関係によって変動します。買注文が多ければ株価は上昇し、売注文が多ければ株価は下落します。市場に参加する投資家は、大きく分けると個人、国内機関投資家、海外投資家に分類されます。これらの投資家は、それぞれ投資の目的や期間、金額の規模が異なるため、投資行動にもそれぞれの特徴が現れます。


そのため、どのような投資家が買いまたは売りの注文を出したかという情報が、投資判断の際に参考にされるのです。


「投資部門別売買状況」とは?


投資家の需給情報は、東京証券取引所を傘下に持つ日本取引所グループが、原則として毎週木曜日の取引終了後に「投資主体別売買状況」として公表しています。投資家を事業法人、金融機関、個人、海外投資家などの主体別に分け、それぞれの主体が前週1週間にどれだけ株式を売ったのか買ったのかを集計したものです。


集計は個別銘柄ではなく市場全体で、東証のプライム、スタンダード、グロースのそれぞれについてと、名古屋証券取引所、さらにこれらを合計した「二市場」の売買分が集計されています。集計対象は資本金が30億円以上の証券会社から発注された取引で、集計単位は「金額」と「株数」があります。


また、「売り」と「買い」のそれぞれと、「買い」から「売り」を差し引いた「差し引き」も集計されています。売りが多いと「売り越し」でマイナスの値になり、買いが多ければ「買い越し」です。


日本経済新聞では、金曜日朝刊のマーケット欄に、東証が木曜日に公表した二市場の投資主体別売買代金の差引き額を掲載しています。大きな変化があったり、目立つ値になったりした場合には、記事にもなります。


2025年の年間株式売買代金差額(東証・名証合計、総合証券ベース)を投資部門別に見ると、個人投資家は3.58兆円の売り越し、海外投資家は5.41兆円の買い越しです。さらに際立つのは、10.5兆円を買い越した事業法人です【グラフ1】。



投資信託は1.33兆円の売り越しでした。新NISA(少額投資非課税制度)によって投信は人気化しているものの、主に海外株式やバランス型の投信に資金が入る傾向で、じつは国内株式投信は売り越しが続いています。


金融機関全体の10.65兆円の売り越しも目立ちます。そのうちの信託銀行は、年間で兆円単位の巨額の売り越しが近年続いており、2025年も6.6兆円の売り越しでした。東証の集計上の信託銀行の正体は、主に年金基金の受託運用、公的年金の積立金(GPIF)、上場投資信託(ETF)、インデックス運用のファンドなどです。これらはリバランスの関係上、継続的な売りが発生しやすく、また、日銀のETF買入れ政策の停止による解消売りなどが主因とみられています。


事業法人は自社株買いで巨額の買い越し


2025年に目立ったのは、巨額の買い越しをした事業法人です。この買い越しの大半は、年間を通した報道から「自社株買い」と推察できます。【グラフ2】からも、事業法人の買い越しは長期的な傾向といえます。



この背景には、東証のガバナンス改革(資本効率の改善)を受けて、上場企業が自社株を積極的に購入している流れが考えられます。持ち合い株式の売りを進めつつ、自社株買いを通じて株主還元を強化しています。


高値圏でも海外投資家は強気


買い越しをしている投資家は、その集計期間中に強気だったといえます。つまり、日本株が断続的に高値をつけていく中、2025年の海外投資家は強気だったということです。年後半に進行した円安によって、ドル建てで日本株の上昇が緩和されたことも一因でしょう。


また、海外投資家の動向は、先述した企業のガバナンス改革も、海外投資家からの評価につながっていると考えられます。


巨額の資金で取引が行われる海外投資家の動向は、市場へのインパクトも大きく、多くの投資家から注目されています。投資判断に迷ったら、海外投資家の売買動向をチェックしてみるのも良いでしょう。


個人投資家は真逆の動き


一方、個人投資家は、2025年まで3年連続の売り越しです。株価上昇が続く中、年々売り越し額が拡大しています。昨今は長期投資を行う個人投資家も増えていますが、統計上はまだ利益確定売りを行う個人投資家が多いことが伺えます。


よく「個人投資家と海外投資家の売買動向は逆だ」と言われますが、グラフによく表れています。この傾向を踏まえると、相場の潮目を感じ取る参考情報として活用できます。


投資主体別売買状況を投資判断に活かす


このように、「投資部門別売買状況」からは、市場でどの投資家が強気でどの投資家が慎重かという投資姿勢を読み取ることができます。よって市場で誰がどのように動いたかがわかり、投資家心理の一端が見えるため、投資判断の際に参考にされています。目先の株価やニュースに振り回されがちな局面でも、投資家ごとの動向を俯瞰することは、有用なヒントになるでしょう。


特に、個人投資家の動きが海外投資家と逆になる日本取引所グループが毎週公表している「投資部門別売買状況」は、無料で誰でも確認できます。マーケットの流れを俯瞰するヒントとして、定期的にチェックしてみてはいかがでしょうか。



【参考】『投資部門別売買状況』(日本取引所グループ)

ファイナンシャル・プランナー

石原 敬子

ライフプラン→マネープラン研究所 代表 ファイナンシャル・プランナー/CFP®認定者。1級ファイナンシャル・プランニング技能士。終活アドバイザー® 大学卒業後、証券会社に約13年勤務後、2003年にファイナンシャル・プランナーの個人事務所を開業。大学で専攻した心理学と開業後に学んだコーチングを駆使した対話が強み。個人相談、マネー座談会のコーディネイター、行動を起こさせるセミナーの講師、金融関連の執筆を行う。近著は「世界一わかりやすい 図解 金融用語」(秀和システム)。

石原 敬子の別の記事を読む

人気ランキング

人気ランキングを見る

連載

連載を見る

話題のタグ

公式SNSでも最新情報をお届けしております