金融商品の選び方が変化 リスクを許せる傾向に

前回のコラム『運用や将来に備える資金が倍増』では、「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」の結果をもとに、運用や将来の備えとして蓄えている金融資産が増えている現状をお伝えしました。今回も「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」〔二人以上世帯〕の結果を使い、本コラムでは、個人が持つ金融資産がどの程度リスク資産に振り分けられているのかを見ていきましょう。


「家計の金融行動に関する世論調査」とは


「家計の金融行動に関する世論調査」は、2024年度に設立された金融経済教育推進機構(J-FLEC)が、それまでの金融広報中央委員会から引き継ぎ、年1回実施しているインターネット調査です。本調査の実施時期は2025年6月20日(金)~ 7月2日(水)、対象は世帯主が20歳以上80歳未満で世帯員が2名以上の5,000世帯です。なお、単身世帯の調査もありますが、本コラムでは二人以上世帯の結果をご紹介します。


この調査における「金融資産」は、運用や将来の備えとして蓄えている資金であり、日常的な出し入れ・引き落としのための現金や預貯金などは含みません。あくまでも長期間保有する予定の資金で、定期預金・普通預金といった預金等の区分は問いません。また、事業のために保有している金融資産や、土地・住宅・貴金属等の実物資産も除かれています。


金融商品の選び方に変化


前回のコラムで、金融資産を保有していない人の割合が大きく減少したことをご紹介しました。資産形成への関心が高まったといえそうです。では、その中身はどうでしょうか。


【グラフ1】は、金融資産を保有する世帯に対し、「金融商品を選択する際に重視すること」を尋ねた結果の推移です。リーマン・ショックが起こった2008年の前年から作成しました。2007年に比べて2025年の回答率が高い選択肢の折れ線グラフには丸いマーカーをつけています。



グラフを見ると、近年は収益性を重視する人の割合が上昇傾向にあります。2025年では「利回りが良いから」と回答した人は22.4%、「将来の値上がりが期待できるから」は19.4%で、合計41.8%です。


一方、安全性を重視する人は、「元本が保証されているから」が20.8%、「取扱金融機関が信用できて安心だから」が5.8%で、合計26.6%でした。


なお、グラフ中の注釈で触れている「2019年から2021年にかけての調査方法の変更」とは、調査の依頼・回収方法を、「訪問留置式」から「訪問と郵送の複合・選択式」に変えたことや、名称を「家計の金融資産に関する世論調査」から「家計の金融行動に関する世論調査」へと変更したことなどを指しています。そのため、2019年~2021年のデータは連続した比較が難しいとされていますが、中期的なトレンドとしては、2020年代以降に選択基準に変化があったと読み取れます。


新型コロナウイルス禍で外出が制限された中、個人投資家が株式や投資信託に関心を寄せていたことはご承知の通りです。この頃を境に、人々は安全性重視から収益性重視へと意識を向けるようになってきました。


同様に、流動性を重視する人も低下傾向です。「現金に換えやすいから」と回答した人は、2025年は6.8%で2007年からほぼ横ばいですが、「少額でも預け入れや引き出しが自由にできるから」という人は10.5%とほぼ半減しています。


また、「商品内容が理解しやすいから」という選択基準はとても大切です。2025年は4.3%と少数派ではありますが、収益性志向の高まりと歩調を合わせるようにして、徐々に増えていることがわかります。


「元本割れを起こす可能性がある金融商品」の保有意向が5割を超えた


次は、元本割れを起こす可能性がある金融商品の保有について尋ねた結果です。こうした商品についても、「積極的に保有しようと思っている」「一部は保有しようと思っている」と答えた人が上昇傾向で、「保有しようとは全く思わない」という人が減少傾向となっています【グラフ2】。



こちらでも、新型コロナ禍がひとつの転機となっています。2025年時点では「保有しようとは全く思わない」という人が最も多い回答ではあるものの、一部でも保有意向のある人は2024年に過半数を超え、2025年は53.9%に達しました。


これらの傾向は、NISAの保有額の増加傾向とも一致します。旧NISA(ジュニアNISAを含む)と新NISAを合計した保有額の平均は、2020年に290万円でしたが、2021年は397万円、2022年が415万円、2023年467万円、2024年622万円と順調に増加し、2025年は729万円になっています。


このように、個人の意識は少しずつ変化しています。「元本が割れる」という表現は、投資した金額より評価額が低くなることを指しますが、インフレ下では投資元本を維持すること自体に意味がありません。「保有する資産が物価と同じ方向に価値変動する」という保管を心がける意識が大切です。「物価が下がれば、保有する金融資産が投資元本を割り込むことがあるのが自然」と考え、金融の正しい知識と感覚を持つようにしましょう。


【出典】「家計の金融行動に関する世論調査」(金融経済教育推進機構)


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ファイナンシャル・プランナー

石原 敬子

ライフプラン→マネープラン研究所 代表 ファイナンシャル・プランナー/CFP®認定者。1級ファイナンシャル・プランニング技能士。終活アドバイザー® 大学卒業後、証券会社に約13年勤務後、2003年にファイナンシャル・プランナーの個人事務所を開業。大学で専攻した心理学と開業後に学んだコーチングを駆使した対話が強み。個人相談、マネー座談会のコーディネイター、行動を起こさせるセミナーの講師、金融関連の執筆を行う。近著は「世界一わかりやすい 図解 金融用語」(秀和システム)。

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