米国株 6月月間回顧

6月はダウ平均、S&P500、ナスダック総合がそろって大幅安


6月の米国市場では、ダウ平均が6.7%安、S&P500が8.4%安とともに大幅反落し、ナスダック総合は8.7%安と大幅に3カ月続落となりました。


インフレ高進懸念が強まり長期金利が上昇する中、主要国の中央銀行が金融引き締め策を強化したことに加え、経済指標の悪化や利上げによる世界的景気後退懸念も株価の押し下げ要因となりました。


月初は比較的堅調に推移しましたが、10日発表の米5月消費者物価指数(CPI)の上振れへの警戒感から9日に大きく下落すると、5月CPIが40年ぶりの高い伸びとなったことでインフレ高進懸念が高まり10日に大幅続落となりました。


中旬は14-15日の米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果に注目が集まる中、米紙ウォールストリート・ジャーナルが13日、FOMCで通常の3倍の幅の0.75%の利上げの可能性があると報じたことで、長期金利が急上昇し、株価は大きく下落。14日も大幅利上げを警戒した売りが続きました。


15日に結果が公表されたFOMCでは政策金利が0.75%引き上げられたものの、利上げがすでに株価に織り込まれていたことや、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が「0.75%の利上げが一般的になるとは予想しない」などとしたことで3指数がそろって大幅に上昇しました。


しかし、16日にスイス中銀が15年ぶりに利上げを決定し、英中銀も5会合連続で利上げを決定したことに加え、発表された米国の経済指標が軒並み悪化したことで景気後退懸念が一段と強まり、株価は下落幅を拡大しました。


ダウ平均は16日に2021年1月29日以来、約1年5カ月ぶりに30000ドルの大台を割り込み、17日には一時、29653.29ドルと、5月末水準から10.1%安となりました。


S&P500は13日に1月4日に付けた史上最高値から20%超下落して終了し、「弱気相場」入りすると、16日に終値で3666.77ポイントの月間安値を付け、最高値からの下落率を23.9%に拡大しました。


4月下旬にいち早く「弱気相場」入りしたナスダック総合は、16日に最高値から34.3%安となり、「弱気相場」の中での下落幅を大きく拡大しました。



セクター別ではエネルギーを筆頭にS&P500の全11セクターが下落


6月はS&P500の全11セクターが下落しました。

エネルギー、素材、金融、一般消費財の景気敏感セクターが軒並み2桁安となったほか、長期金利が上昇したことでグロース株が多いITも9.4%下落し、S&P500(-8.4%)をアンダーパフォーム。このほか、コミュニケーション、資本財、不動産も7%超下落しました。一方、景気減速局面でも業績の安定が見込まれるディフェンシブ・セクターは、ヘルスケアが2.8%安、生活必需品が2.9%安、公益が5.1%安と比較的小幅な下落にとどまりました。


下落率トップのエネルギーは、原油高を追い風に年初から圧倒的に高いパフォーマンスを誇ってきましたが、NY原油が7.8%安と7カ月ぶりの大幅反落となったことで、利益確定売りが強まりました。年初来では29.2%高と、11セクター中、唯一上昇となりましたが、上昇率は5月末の55.7%高から大幅に縮小しました。


ダウ平均採用銘柄はボーイングが上昇率トップ 下落率トップはダウ・インク


ダウ平均採用銘柄は6月月間で4銘柄が上昇し、26銘柄が下落しました。

2度の墜落事故を起こした737Max機の運航再開見通しを好感したボーイングが4.0%高、ディフェンシブ株物色の流れが追い風となったユナイテッドヘルスが3.4%高、好決算や利益見通しの引き上げが好感されたセールスフォースが3.0%高となった一方、 アナリストの投資判断引き下げが嫌気されたダウ・インクが24.1%安と急落し、アメリカン・エキスプレス、キャタピラー、シェブロンなど10銘柄が軒並み2桁安となりました。


年初来ではシェブロンが23.4%高、メルクが19.0%高となったほか、アムジェン、トラベラーズ、コカ・コーラ、IBM、ジョンソン&ジョンソン、ユナイテッドヘルスも昨年末水準を上回りましたが、ウォルト・ディズニー、ナイキ、セールスフォース、ホーム・デポなど6銘柄が30%超大幅安となり、JPモルガン・チェース、インテル、アップル、マイクロソフトなど7銘柄も20%超の下落となりました。


国際金融情報部 アナリスト

羽土 美幸

富山県出身。国内証券で株式等の営業、仏系証券でポートフォリオ分析、転換社債、エクイティ・デリバティブの分析・開発・営業などを担当。 2014年からDZHフィナンシャルリサーチにおいて米国株式、金融市場レポート編集、海外ETF業務を担当。

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