今こそ見たい リーマンショックをもとにした映画「ザ・ビッグショート」

「ザ・ビッグショート」という映画をご存じでしょうか。邦題は「マネー・ショート 華麗なる大逆転」といい、2015年に公開されました。


この映画はいわゆる「リーマンショック(サブプライムローン問題)」の裏側を描いた作品です。2008年当時、住宅バブルの崩壊をいち早く予測し、誰もが「アメリカの住宅市場は絶対に崩れない」と信じきっていた中で、市場の崩壊に「空売り(ショート)」を仕掛けて巨万の富を得た投資家たちの物語であり、著名投資家であるマイケルバーリも登場します。


映画というフィクションではありますが、現実で起きた出来事をもとに構成されており、あのときアメリカで、そして世界で何が起きていたのかを理解するのに非常に役に立つとともに、堅苦しいだけではないエンターテイメントに仕上がっています。


なぜ突然、映画の話をしだしたのかというと、2026年現在、市場で話題になっている「プライベートクレジット問題」と、「サブプライムローン問題」に共通点があると感じるためです。


サブプライムローン問題の時は、住宅価格が下がらないという前提から、信用力が低い人たちにも次々と銀行が貸し出しを行い、そのローンをまとめた金融商品を格付け会社が厳格に審査することなく高い評価を付けるような事態も起きました。さらにその金融商品をもとにした派生金融商品などにより、1つの債権に対し、その何倍もの額の商品を市場に流通させることで、被害を広げる結果になりました。


「プライベートクレジット問題」にも類似点がたくさんあります。銀行がお金を貸す場合は、金融庁などの厳しい監視があり、不良債権の額などもオープンになります。しかし、プライベートクレジットはあくまで「当事者間のプライベートな契約」なので、情報が開示されません。銀行の融資を受けられない中小企業などを対象にした利率の高いローンが含まれている点が魅力でもあるのですが、それだけ回収不能になる可能性も高いわけです。


また、融資の担保としているものが実際には架空のものであったり、一つの担保に対し複数の融資が実行されるような二重担保が一部で確認されています。こうした事象はまさにサブプライムに重なる面があります。実際の中身がどうなっているのか見えないブラックボックスだけに、何がどのくらい危険なのか本当のところは誰もわかりません。


さらに流動性のリスクもあります。上場株や国債などの債券であれば市場ですぐに現金化することができますが、プライベートクレジットの債権は簡単に売買できないものも含まれています。にもかかわらず四半期に一度現金化できますよ、という触れ込みで投資家の人気を集めていたのですが、ここにきてプライベートクレジットのリスクに気付き始めた投資家からの解約要請が集中しており、ファンド側は対応できなくなっています。


そのため、解約を停止するファンドも出てきており、それがさらにプライベートクレジットへの懸念を高め、次の解約要請につながるという悪循環が起きています。いわゆる銀行でいうところの取り付け騒ぎのような状況に陥っているわけです。これらがドミノ倒しのように広がっていった場合、本来ならば避けられるはずだったクラッシュも発生してしまいかねないのです。


そうはいっても投資しているお金持ちが損するだけでしょう、と考える人もいるかもしれませんが、実際にはそれだけにとどまりません。プライベートクレジットに資金を出している大元は、世界の大手銀行や保険会社などの機関投資家です。先日、英住宅ローン専門会社マーケット・フィナンシャル・ソリューションズ(MFS)が経営破綻しましたが、その企業にはジェフリーズやバークレイズといった名だたる銀行が融資していたと言われています。


複数の金融機関がそれぞれこうした融資を行っており、それがまたさらに別の資産運用会社に投資されてといったかたちで複雑に絡み合っていることから、ある箇所で爆発した爆弾が巡り巡って自分にも影響してくるといったことが起こりうるのです。


何も脅かしたいからこのようなことを言っているわけではなく、金融当局も問題を解決させるために、手を尽くしているところではあります。米国でさかんに利下げしようという動きがあるのも、利払いの負担を下げて融資が焦げ付くケースを減らそうという面もあるかと思います。


問題をきちんと認識できなければ対応することもできません。「ザ・ビッグショート」を見て、サブプライムローン問題を振り返ることで、いま再び起きるかもしれない危険の兆候を察知できるかもしれません。

日本株情報部 アナリスト

斎藤 裕昭

経済誌、株式情報誌の記者を経て2019年に入社。 幅広い企業への取材経験をもとに、個別株を中心としたニュース配信を担当。

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