2026年春の投資相場は「原油先物」が主役です。アメリカによるイラン侵攻により、世界有数の原油の生産国として名高い中東地域に混乱が生じると懸念され、原油価格が乱高下しています。
特にイランが数多くの石油タンカーが通行する「ホルムズ海峡」を封鎖していることによって、見通しの不透明な状況が続いています。このような有事といえば「有事の金」ですが、今般における動きは印象と大きく異なるようです。
急騰する原油価格に金がついてこない
筆者は2025年春より、プラチナ(白金)を中心とした貴金属の価格推移を分析しています。そのなかでも金は「有事の金」と呼ばれ、世界的に報じられる戦争・紛争があると大きく値を上げる特徴があります。近年の金の高騰は2025年春の、イスラエルとイランの空爆を契機とするものでした。

引用:買取のなんぼや 今日の金1gあたりの買取相場価格と専門家コメント
ところが2026年3月に激化したアメリカとイランの戦争状態ですが、上記のチャートのように金は「横ばいトレンド」を継続しています。上記チャートは左側が3月上旬、右側が3月下旬の1カ月のチャートです。傾向としては3月23日に大きく下落したものの、紛争は一時的ではなく長期的なもの。いわゆる「有事の金」にしては緩やかな動きで、本来は「乱高下」が想定されるものです。
金の代わりに乱高下しているものがあります。原油先物です。
原油先物が落ち着くと金は下がる
2026年3月において、原油先物チャートは乱高下しました。代表的なチャートであるWTI先物価格は、1バレル80ドルから数日で100ドルまで上昇するなど、変動幅も大きなものでした。金が「有事の資産」ならば同様に変動するはずですが、意外にも横ばい傾向が強いものでした。ただ日々の分析をしていると、双方に一定の関係性があることがわかります。
情勢の緊迫化がアメリカとイランの交渉開始やイランによる原油輸出監視の緩和などが伝わると、原油先物チャートは下がります。このときに「金も連動して下がる」傾向です。ただ、これは双方が有事の資産、であれば当然のはず。興味深いのは、原油先物チャートが高まったときの動きです。
原油上昇に連動しない金
原油先物チャートが1バレル90ドル、95ドルと上がっても、金など貴金属が上昇の兆しを見せない局面も目立ちました。「原油先物が上がったら世界中の不安感をあおり、有事の金も上がるはず」という思惑が肩すかしを受けることも数多くありました。これはなぜなのでしょうか。筆者は、2つの可能性があると考えています。
「過熱感」を感じる金
1つ目は金そのものの過熱感です。2024年から上昇する金も、状況によって上昇幅が緩やかになり、「このニュース(ファンダメンタル)にこれくらいしか反応しない?」という局面も多くなりました。投資の世界は「織り込み済み」という考え方が重要です。世界中の投資家がその事態が発生すると想定していたら、既に売買注文や空売りの意思決定を済ませているという状況が考えられます。
原油が動いていれば金までは必要ない
もう1つの考え方は「有事の資産」は1つでいいという考え方です。貴金属と同様に、世界情勢の荒れ具合を示すVIX指数があります。30を超えたら危険、40以上は「歴史的な危機」といわれるなかで、今回の最高値は2026年3月6日の「29.49」でした。なお過去30年を振り返ってみると、ロシアのウクライナ侵攻(2022年)で30-40ポイント、アメリカ同時多発テロ(2001年)で最大44ポイントまで上昇しました。G7主要国とは距離のある中東地域での紛争ですが、世界中のインフラの基盤を担う原油が直接的に影響を受ける事態です。
新傾向の日足
このような分析を用意していたところ、最新3月25日の日足は「原油先物が上がって金が上がる」という日でした。ホルムズ海峡を通過する石油タンカーに対し、イラン側が「非敵対船舶は通過可能」と表明しました。あくまでアメリカ・イスラエル両国と協力国のみを対象としていると言及した形です。

もちろん金が「自分たちと原油先物の関係性は〇〇だ」と説明するものではないので、今回の日足が偶然のものなのか、関連性のあるものなのか現段階ではわかりません。ただ、まだまだ続く原油先物を中心とした世界の荒れ相場に、「有事の資産」である金との関連性を追求することで、的確な資産管理につながることは間違いないといえるでしょう。
なお2026年の貴金属は素材によって別々の動きをすることも多くなっているのですが、今回の原油との関係性においては、金も銀もプラチナも概ね同じような動きをする印象があります。「金=貴金属」と言い換えても問題ないでしょう。



